無料で使えるフル機能のDAWとして知られるWaveform Freeについて、先日上位版のProもろとも大型アップデートが行われたため、以前のバージョンとの変更点を整理する記事を書こうと思います。なお私の制作スタイルに合致するものを中心に取り上げるため、内容に若干偏りはあると思われますのでお気をつけを。

 なおこの記事は、公式より発表されているリリースノート(Waveform Freeのダウンロード権を取得してないと見れないはずです)のうち、主に11.1.0から11.5.0にかけての内容を要約したものとなります。正確な情報は一次ソースから取得してください。


(参考: 以前の11.1.0の時点で、11.0から改善されていた主な部分)
  • かつてグルーブテンプレートは微妙に強度が異なる大量の選択肢から選ぶ方式でしたが、現在は強度をスライダーから調整して適用するようになりました。
  • GUIの描画にOpenGLを使った方式を選択できるように(軽快に動作するがレイアウトは崩れやすい)
  • VST3がときどきMIDIを受け取らなくなる問題が解消しました
  • クラッシュする系のバグが減らされました


11.5の主なアップデート内容
新機能(全般)
  • Welcomeスクリーンが追加
   内容は最近開いたプロジェクトや、テンプレートから新規プロジェクト作成など。良いと言えるかは微妙だが悪くはない
  • 1. MIDI Typingという、要するにPCキーボードからMIDIを吐かせる機能が追加
   MIDI Typingウィンドウがアクティブなときのみ有効。無効時にキーボードを乱打して誤爆しないように
    • 2. 今までPro版のみの機能だったアクションパネルがFree版でも使えるように
       Pro版をデモったときに「正直魅力が分からん」と思っていた機能の一つ。だからFree版でも使えるようになったんだと思う
    • 3. マウスでのドラッグ・スクロール時の挙動が多少カスタマイズ可能に
       これは素直に嬉しい。これまでのWaveformはあまりにもカスタマイズ可能項目が少なかった
    • 4. MIDIクリップとステップクリップは相互に変換可能になった
       32分音符を多用する私にはあんまり縁がなさそうだが、ステップクリップ自体は割と使いやすいと思う
    • 5. 選択したMIDIノートを3連符に分割できるように
       Waveformで3連符を打ち込むときに""覚悟""を強いられることがなくなった。それより拍子記号のプロパティを開かないと「3連符モード」にできない仕様をどうにかしてほしい。
    • 6. お気に入りプラグイン機能が追加
    •    私はプラグインをタグメニューで分類しているが、お気に入りに登録したプラグインは優先してリストの上のほうに表示されるようになる気がする

     
    新機能(伝統の破壊など)
    • 1. Tracktion伝統のズームとスナップ解像度が完全同期する仕様ではあるが、正直不便なことも多いので別々に設定することも可能になった
       しかしスナップ解像度を3連符に設定することはできない! どうして
       追記: のちのバージョンで3連符に設定可能になりました!!!!!!素晴らしい!ようやく音楽が作れるDAWになりました。
    • 2. Tracktion伝統のインラインMIDIエディターではあるが、正直邪魔なことも多いので無効にできるようになった
       正直、インラインじゃない普通のMIDIエディターのほうが数倍便利
    • 3. Tracktion伝統のクリップのスリップハンドル(クリップ上の赤い棒に書いてある矢印とか)ではあるが、デフォルトで一部の矢印が隠されるようになった(設定から変更すること)

    仕様変更
    • 1. オーディオエンジンを変更し、CPU効率の向上が図られた
       Tracktion特有の急なCPU使用率の上昇が幾分抑えられているような気がする。もともと軽めのエンジンではあった。
    • 2. 特定の配線をしたラック内でプラグインの遅延補正がなされないのは仕様だったが、この度解消された
       一部の界隈では切望されていたであろう修正。見た目は地味だが実装にはかなり手間がかかったようだ。使ってあげよう。
    • 3. クリップをまったく置いていないトラックからでも音声が出力されるように(シンセの内蔵シーケンサを使うとき、ダミーのトラックを置く必要がなくなった)
    • 4. オーディオエンジンが実行されているとき、CPUメーターの下に小さな豆腐が表示されるようになった
    • 5. 新しいクリップの長さはデフォルトで1小節になった(元の仕様に戻すには設定-一般-EditのMake new clips the length~をONにする)
    • 6. 複数MIDIクリップを重ねてエディターで開いているときでも、ミュートされたMIDIノートは灰色で表示されるようになった
    • 7. MIDIノートの色がオレンジっぽくなった(なお後の更新で黄緑っぽくなった。好みの問題)
    • 8. MIDIエディターにスクロールバーが付いた
    • 9. 最後のトラックの下に新しいトラックボタン(+の形)が追加
    • 10. トラックの名前変更が複数トラックに対し同時に行えるように
    • 11. 設定画面のページ配置の変更(細かい設定は「Advanced」タブに集約された)

    新ショートカットキー・マクロなど
    • 1. リップル削除(選択された領域を削除して空いた部分を詰める)がCtrl+Delで可能に
    • 2. 今開いているプラグインウィンドウをいったん隠すことができるように(デフォルトではショートカットキー未定義)
       複数ウィンドウを保持可能。場所や位置関係も保持される。一部環境でプラグインリストを表示させていると描画が低速になるため、その対処法としても有効。なおプラグイン画面を開く処理は逐一行われるため、GUIロードが遅いプラグインのロード時間短縮は望めない。
    • 3. 同じノート番号のMIDIノートを選択する機能がショートカットキーに対応(デフォルトではショートカットキー未定義)
    • 4. 選択範囲をレンダリングする機能がショートカットキーに対応(デフォルトではショートカットキー未定義)

    バグフィックス
    • 1. インプットよりアウトプットの数が多く、かつレイテンシーを発生するプラグインがクラッシュを誘発しないように
    • 2. プラグインが報告するレイテンシーが起動中に変更された場合にも、Waveform側が正常に追従できるように
       これにより、一部のプラグインのレイテンシーがまったく補正されない・一部リミッターのルックアヘッドを変更するとクラッシュする問題も解決しました)


     全体を通して、Tracktion Waveform特有の変な癖や、手の届かないところがまんべんなく改善されている印象です。相変わらず小規模デベロッパー開発のDAWなので、品質・完成度という点ではどうしても他社の有力製品に及ばない面はありますが、無料で使えるDAWとしてはある程度お勧めできるような代物になりつつあると思います。
     Pro版は……まあ付属品に魅力を感じるか、デモってFreeにはない良さを感じられたらいいんじゃないでしょうか。現場からは以上です