作曲にも疲れたのでたまにはフリーシンセ巡りもいいかなと巡っていたところ、思わぬ名作(?)を見つけてしまったので記事にします。今回は程よく短めの記事にまとめようと思います。

Little Spiral Generator (Soundemote
)
配布元: https://www.soundemote.com/plugins/little-spiral-generator
syn_littlespiral

 Little Spiral Generatorはどうやらオシロスコープ・ミュージックという(特殊な)音楽ジャンルをフィーチャーしたらしいシンセサイザーで、オシロスコープ(ゴニオメーター)上にきれいな螺旋形を描くことができるのが最大の特徴です。どんな音がするかって? ……まあ……実用性はともあれ……他のまともなシンセサイザーでは絶対に出せない音が出せることだけは確実です。あと素のままだとステレオ感がめちゃくちゃな音しか出ません。

 全体的に音響レーダーを思わせるような奇妙な音が守備範囲のようですが、比較的機能が多く、また音がときどき303っぽかったりワブルベースっぽかったりするため、表情豊かなベースやリードを作ることもできる……かもしれません。


1.概略
  • オシロスコープ上に螺旋が描けます
  • 独特すぎる発音機構
  • モノフォニック(単音発音)限定
  • 地味に豊富なLFOとエンベロープ
  • めちゃくちゃになるステレオ音像
  • 用途は各自考えてください


2.何ができるの?
 Little Spiral Generatorは1オシレーター、6LFO(8000Hzまで対応)、6エンベロープ(ADSR)に加え軽くフィルターが付いたモノフォニックなシンセです。ヴェロシティやキートラックにも対応しています。

 オシレーターは1つのみですが、コントロール項目は多く、かつそのほとんどがLittle Spiral Generator独自のものです。ぱっと見何を言っているのか分かりませんが、別にどこを触っても壊れる訳ではないので、完全にフィーリングで操作すればいいと思います。画面左側に並ぶ"Density"から"Offset Y"までのパラメータはすべてオシレーターの音色変化用のものです。音色を大きく変化させられるのは"Density", "Bright", "Z Depth", "Z Amount"あたりで、"Rotate X", "Rotate Y"はステレオ感の調整のようです。

 フィルターはローパス・ハイパス直列のもので、レゾナンスはありません。敢えて付けてないんだと思います。とはいえ、音が平板的になりがちなLittle Spiral Generatorにおいてローパスフィルターは貴重な表情付け要素ですし、ハイパスフィルターのほうはDCオフセットを切るために役立ちます。

 Little Spiral GeneratorのLFOは結構多機能で、6つ装備されているだけでなく、ほとんどのパラメーターを変調可能で、8000Hzまで対応し、しかもキートラッキングができます(実質的に変調専用オシレーターを持ってるのと変わらない)。そのため、例えば"Z Amount"とかいうよく分からないパラメーターを、1オクターブ上でFM変調することさえできます。どんな音になるか想像もつきませんね。また、このLFOのピッチトラッキングはHz単位でズラせるため、単なるFMにとどまらない微妙な揺らぎをも作り出すことができます。唯一惜しいのが他のLFOのパラメーターを変調できない事。これが出来たら色々悪いことができたんですけどね……。

 エンベロープもLFOと似たような仕様になっていて、6つあり、ほとんどのパラメーターを変調できます。しかもどうやらベロシティ対応らしい。これも他のLFO/エンベロープのパラメーターが変調できたらもっと良かったと思います。

 ベロシティやキートラッキングなど、MIDI情報からも任意のパラメーターを変調することができます。これも他のLFO/エンベロープのパラメーターが変調できたら(以下略

 総じて、変調を変調できないという縛りが気になるものの、非常に多様な音作りが可能になるよう配慮されていることには間違いありません。特にLFOのキートラッキングによる高速変調は、出せる音の幅を相当広げてくれているように思います。

 全体的に倍音が複雑化しやすい構造ですが、オーバーサンプリングが8倍まで対応しているためクリアな音質で楽しむことができます。


3.音
 音は変です。エョ゙イとかビェイ゙とかエ゙ア゙みたいな音が得意です。全体的にハイ落ちでノイジーですが、オーバーサンプリングのおかげか濁った感じはしません。敢えて似たものを挙げるとすれば、この前当ブログでも紹介したPendulateあたりが近い性格だといえます。Pendulateほど音楽性を感じる音ではない気がしますが、出せる音の幅はPendulateより広いです。ディストーションが合います。Pendulateにはマッチした深めのリバーブは、Little Spiral Generatorには案外似合いません。

 ベースミュージック、の中でも特に前衛的な音使いをする曲であれば、割と使えるのかもしれません。あるいは歪ませてアシッドっぽくするのもアリです。LFOによるFMなどを駆使することで普通のシンセっぽい音を出すこともできますし、せっかく変調が充実してるのですから、「普通の音と変態音とを行ったり来たり」のような表現に関しては結構得意なのかもしれません。

 なお、これは本シンセのアイデンティティにかかわる問題になりますが、オシロスコープ(ゴニオメーター)に螺旋を描く、という行為は、この世のものとは思えない奇妙なステレオ音像を生み出します。右チャンネルと左チャンネルとでまったく違う音が鳴っている状態が普通。……それが使える場面では積極的に活かすべきだとは思いますが、そうでない場面においては……まあ……気を付けて使ってください。かといって強制モノラル化してしまうとなんか物足りなくはある。

 動いているところを動画に撮りましたので一応参考までに


4.使い勝手など
 UIは細かいですが、余計なものがなく合理的ともいえます。パラメーターは直接数値入力にも対応しているため、狙った通りに操作しやすいと思います。

 CPU負荷は高めです。オーバーサンプリングなしでSynth1の6倍はいきます。音質のことを考えるとオーバーサンプリングを掛けたくなるので、実質的にはさらに2~3倍のCPUリソースが必要になると思われます。そう頻繁に起動するタイプの音源でない事が救いでしょうが。

 プラグインの安定性については特に気が付いたことはありません。開発元が(少し)有名なFlower Child Filter(フリー)と同じところで、それとは別に商用プラグインも作っているデベロッパーですので、割と安定性に関しても期待できるのでは、と勝手に推測しています。


5.わたし的な評価
 おすすめ度: ★★★★★★★☆☆☆(7/10)

 はっきり言って評価に困るタイプのシンセです。主にステレオ音像の癖が強すぎることが原因で、まっとうな音楽のなかに入れ込むことは困難です。かといって強制モノラル化して出てくるような音は、Vitalとかで作れる音と大差なかったりします。ひとつ、Little Spiral Generatorにしか出来ない事は何かと言えば、おそらく大量の高速LFOによる摩訶不思議な変調、になるんだと思います。

 おそらくは、既存のジャンルの音楽のために使うのではなく、新しい音楽ジャンルを生み出すためのシンセサイザーです(そういう意味で、Alter/Egoと近い性格の代物かも)。シンセサイザーと戯れる時間が何よりも好きな人、そして固定観念にとらわれずまったく新しい音楽を作ってやろうという気概のある人を前にしたとき、このLittle Spiral Generatorは一瞬だけ、稀代の輝きを見せるのかもしれません。くれぐれも用法・容量を守って正しくご利用ください……。