普段ネタで買い物はしない人なのですが、今回ばかりはと思い新年お年玉ネタで買ったプラグインです pic.twitter.com/Z4D64FMjlr
— RykSeb@硫化西部 (@RykSeb) January 2, 2021
変則サンプラーPolygonが
まあ端的に言ってPlugin Boutique利用者へのおまけ目当てで買ったプラグインなのですが、こういうの好きな方は好きだと思う+Glitchmachinesのプラグインにはデモ版が一切ない、ので参考にしていただければと思い記事にすることにしました。ほんとデモ版作ってほしい。購入するまでは動作するかどうかすら分からんのはキツいよ……。
レビューの体裁をとっていますが買って5時間しか触ってないので実情を踏まえられてはいません。この辺は私も今後使い込んでみてから判断しようと思います。案外使えそうならばもう一本記事を書くつもりです。
1. Polygon 2って?
公式による謳い文句は"Hybrid Sampler"であり、何がどうハイブリッドなんだ?という感じですが、実際にはサンプラー+グラニュラーサンプラー+FMシンセ、です。最大8音ポリフォニックで動作させられることもあり、Glitchmachinesにしては珍しく普通のシンセサウンドもカヴァーできる多芸な製品です。
具体的に何ができるかということに関しては、公式のマニュアルや動画を読み込めばほとんど理解できると思われます。結構分量がありますが、それだけ機能が豊富なソフトでもあるのでそんなもんだと思います。逆に、UIにはやや不親切な面があるため、マニュアルを読まずに使いこなすのは難しいと思われます。読みましょう。
4つあるサンプラーは任意にループポイントが設定可能な点が特徴的ですが、それ以外はごく普通なため特記するようなことはありません。サンプラーはグラニュラーモードに切り替えることができますが、Polygon 2のグラニュラーは粒度が荒いタイプのものになりますので分厚いパッドを作る用途には向きません。普通の音も出せますが、あくまでメインフィールドは効果音的用途だと思います。
Polygon 2に似た傾向のソフト音源として個人的に思い浮かぶのがBiotek 2とIris 2、あるいはPigments 2あたり。奇しくもナンバリングが2でそろいましたけれども、これらは音声サンプルをシンセサイザー的なアプローチで扱うことができます。文章で比較を書くと長くなるので表にしました。

相当雑な比較ですが、もともとPolygon 2の設計思想がかなり独特なので、そういう意味での競合は同じGlitchmachinesのPalindromeあたりになっちゃうのかなと。Palindromeの方が汎用性は低そうですが、グラニュラーを駆使したサウンドデザインに一層特化しているように見えます。
2. 気に入ったところ
2-1. 豊富なモジュレーション
ほとんどのパラメーターが変調可能。4つのステップシーケンサー、8つのLFOが使えるほか、モジュレーションソースをミックスしたり+-反転する機能も備えられています。
2-2. サンプルをFMできる
地味に貴重。使いどころは後から探せばよい。
2-3. 唯一無二?のグラニュラーサンプラー
多くの人が想像するグラニュラーとは少し異なる味わいですが、サンプルのいろんな部分がいっぺんに鳴らせるためカオスな音作りができます。
2-4. 普通に和音が出せる
公式のデモサウンドを聴くと本当に和音が弾けるのか不安になりますが、ちゃんと8音ポリです。しかもステップシーケンサーもLFOもポリフォニックです。シンセとしても普通に使える内容。
2-5. 最低限MIDIと同期がとれる
これは私が個人的にBMSを作るという事情によるものなのですが、ヴェロシティ対応かつLFOリトリガー可能なので、音を鳴らした時の不確定性を大きく減らしてくれます。
2-6. 各サンプラーやオシレーターにミュート・ソロボタンが付いている
むしろなぜ他のシンセには付いていないのかというほど便利です。
2-7. みんな大好きランダマイザー付き
ワンクリックでプラグイン中の任意の領域だけをランダマイズ可能。制作に行き詰ったときだったり、今日の運勢を試したくなった時に有効です。もちろんオールランダムも可能ですが、10回に9回はハズレを引きます。でも50回に1回くらい大当たりが出るからやめられないんだこれが。
2-8. 同梱プリセットも秀逸
この辺は好みがわかれるところですが、一音鳴らしただけで曲作りのアイデアが湧いてくるようなパッチが多く、音を鳴らしているだけで楽しめます。私は100個あるプリセットを2周することで購入日の夜を明かしてしまいました。もう100個あったら翌日の夜も明けてたので危ないところでした。
3. 個人的に惜しいところ
3-1. モジュレーションのソースは原則同時に1つまで
これ一番惜しい。FM合成というものはモジュレーションに敏感なので、ここはもっとこだわりたいところ。一応複数のソースをミックスする機能があるにはあるので、これでもなんとかやっていくことは可能。使いやすくはない。
3-2. エンベロープが無い
意外や意外。Polygon 2には一切エンベロープの類がございません。シーケンサーで代用するか、低速LFOでごまかすか……。これも縛りプレイの一環として受け入れてこそ、真のPolygonユーザーなのでしょうね。
3-3. FMルーティングは固定
Polygon 2のFMはMOD OSCという1つのオシレーター出力からその他すべてのサンプル&オシレーターを変調する仕組み。DX7でいうと24番アルゴリズム的なやつです。これだけでも悪くありませんが、折角なのでもっとバリエーションがほしかったですね。
3-4. フィルターのバリエーションがあればさらに良い
Polygon 2にはLP, HP, BPというベーシックなフィルターが搭載されていますが、アナログモデルの自己発振するフィルターがあれば音作りの幅が広がったようにも思います。
3-5. ややCPUハングリー
まあやってること的には仕方ないんですが、プリセットによっては重いです。特にグラニュラーを多用したパッチは、8音ポリで弾くにはいろいろ厳しいです。往々にしてそういうパッチって8音弾くと超うるさいですけどね。グワシャガシャガシャガシャガシャ……
3-6. やや不安定
小規模デベロッパーの製品なんで仕方ないんですが、大手製品と比べると少し挙動が怪しいかな? と思うことがあります。特にGlitchmachinesはデモ版を用意していないため、この辺の要求ハードルは自然と上がってきてしまうのかなと。まあ当方の環境はWaveform 11とかいうドマイナーDAWなので、FLとか使ってる人は気にならないのかもしれません。
3-7. VST2非対応
64bit VST3とAUのみでの提供となります。今時32bitのDAWを使ってる人は多くないと思いますが、VST3非対応のDAWを使ってる人はまだいらっしゃると思うので要注意です。また、環境によってVST3が安定動作しないこともあるようなので、デモ版が提供されないこともあり購入には多少のリスクが伴います。
4. サウンド面
基本的にサンプラーなので出る音はサンプル任せ、ということになりますが、付属する1GBちょっとのサンプルはSF系を中心に割と色々入っています。さっき数えたら672個ありました。もちろんファクトリー以外のサンプルでも読み込み可能です。
前述のとおり、Polygon 2のグラニュラーは粒度が荒く、かつ比較的広範囲から読み取ることができるという特殊な代物です。「あいうえお」と言ってるサンプルを読ませると、「あいあいあいあいあいあい」あるいは「あえういあおえいあおうおえい」などと聴こえてくると思います。そのためか、全体的に不協和音+情報量の多い音が作りやすい傾向になります。
オシレーターの出音はごく普通です。サンプラーから変な音が出てきているので、普通に混ぜるだけだと逆に浮いてしまうかもしれません。フィルターは自己発振しませんが、品のあるスレンダーな出音で悪くないと思います。内蔵リバーブも際立って良いわけではありませんが、それなりに雰囲気はあります。
5. UI, 安定性, 負荷など
UIは黒ベースのもので、多くの機能を詰め込んだ関係で細かいです。拡大すればなんとか見えますが、特にミュート・ソロボタンは非常に小さいため間違えやすいです。
操作系統はドラッグアンドドロップを多用する直感的なもので、サンプルのインポートもドラッグアンドドロップで行えます。これは商用プラグインなら対応していて当然だと思うのですが、それでも対応していないところは対応していないので、Glitchmachinesがその辺しっかりしているのは好印象です。ただ、シーケンサーの形状切り替えをAlt+クリックにしたのは個人的には好きじゃないです。
前述したとおり負荷はサンプラーとしては高め。シンセとしてはもっと重いシンセが多少あるかなという程度。とはいえ複雑な処理をしていることは明らか+バウンスして使う機会も多いため、不当に高負荷な印象はないです。まあはっきり言ってIris 2よりはマシ。GUIのロード時間も十分許容範囲内です。それに比べてIris 2はロードが遅くて遅くて……
安定性に関してはまだ検証しきれていないものの、VST3というフォーマットの関係上うまく動かないDAWが出てくる可能性も否めません。Glitchmachines自体は(屋号に反して)比較的安定した製品をリリースすることに定評があるらしいので、多くのVST3が安定動作する環境であればPolygon 2もたぶんまともに動きます。やはりデモが無いのが痛いところですね。
そのほか、短所とは言い切れないものの人によっては気になりそうな点を4つほど。検証はWindows 10環境下のWaveform 11およびReaper6(試用中)にて行いました。
- ランダマイズの結果「オシレーターのFM量がシーケンサーによって変調させられる」状態になった際、音量の急な増大を含む異常な挙動を示すことがある。MAIN OSC波形が三角波の場合でしか発生しない? ランダマイザー経由以外での発生は確認していない。
- 再生中プリセットを切り替えた際(かどうかは不明だが)、出力がハングアップしてプチノイズ以外の音が出なくなる場合がある。最大ポリフォニー数切り替えで戻るので実用上困ることはない。
- 付属サンプルはピッチがバラバラのため、音程のある音を作る際にはサンプルを変えるごとにピッチを変えて合わせてやる必要がある。しかし元々音程とかどうでもいい用途にフォーカスしたソフトのため、文句を言う筋合いはないのかも。
- ランダマイザーは便利だが、モジュレーションが必ず+方向に効くという仕様のせいで出力音量が大きくなる場合がある。
6. 総評
上にはさらっとしか書きませんでしたが、とにかくランダマイズが楽しいプラグインです。ボタンを押すことさえできれば+ランダマイズ時の三角波爆音バグに慣れてしまえば、誰にでも本格的なサウンドデザインができます。出鱈目なノイズやテンプレのような機械音ならば10秒で作れますし、100回くらいランダマイズしていると本当に面白いサウンドに巡り合えたりします。どんなに眠くても遊べるので睡眠時間が溶けます。
GlitchmachinesよりPolygon2.0 ランダムボタンをたくさん押した後軽く調整をかけたパッチです シンセのランダマイズは快感しか生まないので法で規制されるべきではない pic.twitter.com/HZni5TBPxd
— RykSeb@硫化西部 (@RykSeb) January 4, 2021
で、実際音楽に使えるかというと正直わからないところで、単体で聴くと素晴らしい音でも、半端な曲に無加工で放り込むには音の癖が強すぎたりします。でももしかしたら、ElectronicaとかAmbient, Cinematic寄りの人であればうまい使い方を見つけられるのでは……と。あるいはバウンスしてサンプラーに放りこめばもっと用途が広がってくるのかもしれません。比較的誰でも楽しめるプラグインだと思いますが、真にこれを必要としてる人は多くないかな?と思います。
どちらにせよ、既成の素材に頼らずにたった一音で曲の世界観を定義でき、あるいは既成のサンプル素材の世界観を定義しなおせる、くらいのポテンシャルを持つプラグインだと思います。モジュレーションの制約など、一線級ソフト音源と比べてしまうとボリューム不足に見える面もありますが、「シンセに近いサンプラー」というニッチ分野においては一つの位置を獲得できているのではと感じました。
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