毎度恒例、なんか面白げなフリーシンセを紹介&解説する記事です。今回も記事のダウンサイジングを心がけていきたいところ。あと、一時乱用していた色つき文字ですが、最近は強調箇所を少数精鋭化させる方向でいきたいと思います。
相変わらずめったに曲を作らない素人の記事なので、信頼度は地の底です。
Tunefish v4 (Brain Control)
配布元: https://www.tunefish-synth.com/

フリーでは比較的珍しい加算合成式シンセサイザーです。フリーシンセ界では有名どころですね。個人的には「有名だけど1OSCだしなぁ……」と思いなんとなく放置していたのですが、改めて眺めてみるとフリーシンセとして大変よくできていることに気が付いたのでここで紹介しようと考えた次第です。
元々容量制限の厳しいシステムに組み込む目的で開発されたものである故か、普通のシンセとか一線を画するシステムを持っているのが特徴。
1.概略
2.できることとできないこと
Tunefish4は、1つのオシレーター、同時に使えるLP・HPフィルター、2エンベロープ、2LFOと、内蔵エフェクトが7つという構成です。まあ構成は普通ですね。
Tunefish4最大の特徴はオシレーターの仕組みにあります。サイン波に倍音を重ねていく加算合成式なのですが、波形操作パラメータがBandwidth, Damp, Harmonics, Drive, Scale, Modulationという6つのつまみに集約されているのですね。ScaleとModulationが肝ですが、それ以外の4つだけでも十分ニュアンスをつけられます。なお、Modulationが「具体的に何をモジュレートするのか」は地味に謎ですが、まあ良い感じの効果は出せるかと。まあこの程度のつまみの数で作れる音の種類というのは限られてくるのですが、別に一個のフリーシンセがすべての音を出せる必要はどこにもないわけで。
オシレーターは10重にまでユニゾンできます。7過ぎたあたりから違いが判らなくなってきますが、うまく調整すれば割ときれいなユニゾンサウンドが出ます。
内蔵エフェクトは7種類ですが、インサート欄は10段あります。Tunefish4はエフェクトを重ね掛けできるのですね。珍しい仕様だと思います。若干裏技めいた挙動ですが、Reverbを重ね掛けするとフィードバックによる金属音が得られます(音量注意!)。
画面最上部にあるDetuneつまみは、おそらく加算合成する際の倍音を多少ずらすためのものかと思われます。この機能は、加算合成シンセ特有の音の薄さをごまかすのに地味に大きな役割を果たします。また、その隣のSlopつまみは音色に多少の揺らぎを加えるためのもので、Detuneと共にTunefish4の音に生々しい活気を与えてくれます。なお、仕様上たとえSlopつまみを0にしたとしても、Tunefish4の音色合成からはランダム要素が排除されないとのこと。この辺は人によっては要注意ポイントでしょう。(ソース: https://github.com/paynebc/tunefish/issues/19)
3.音
音については詳しくありませんが、割とすっきりした現代的な音だと感じます。高音域もクリアで、折り返しノイズ(エイリアシング)はほとんど聞こえません。音声合成の仕組み上、あるいは内部ランダマイズのおかげか、フリーのウェーブテーブル式シンセにありがちな「いかにも波形を鳴らしている感」が薄いです。
自然な音が出る反面、音圧感や存在感には乏しいのですが、リミッターとディストーションがきっとすべてを解決してくれます。あとは混雑したミックスに放り込んでしまえば、もう誰もフリーソフトから出ている音だとは思わなくなるでしょう。
ちなみにTunefish v4の「本来の目的」である64kbでムービーを作るコンテストに出品された作品がこちら。正直ここで鳴ってる音を自分の曲でそのまま使いたいと思えるほどではないのですが、割と打楽器系の合成にも強いことくらいは伝わってきます:
4.使い勝手など
やってることの割に、CPU負荷は非常に軽いです。Synth1と同程度。動作も安定している部類かと思われます。
プリセットもフリーシンセとして十分な量と質。多少手を入れる前提ですが、普通に制作に取り入れることも可能でしょう。
文句をつけるとすればエンベロープが最遅にセットしてもなお早すぎることと、オクターブ以外のチューニングが一切できないこと。MIDI側でピッチベンドを打つしかありません。
5.わたしの評価
おすすめ度: ★★★★★★★★★☆(9/10)
Tunefish4は音作りが簡単そうに見えて難しく、出せる音の幅も大して広くないので、初心者向けと呼べるかは若干怪しいと思うのですが、繊細なリードから歪んだワブルベースまで、色々即戦力になる音が出せるというのは大きいと思います。
考えてみれば、Tunefish4というシンセは小さいながらも非常に独特の、しかし洗練されたシステムを持っていて、それが数ある商用シンセサイザーの中でも輝く理由なのでしょうね。
Strings Dream Synthesizer (NUSofting)
配布元: https://www.kvraudio.com/product/strings-dream-synthesizer-by-nusofting

Solinaに代表されるような、いわゆるストリング・アンサンブルの再現。古そうな見た目と古めかしい音が出ますが、2020年4月にメジャーアップデートされたばかりの新しいプラグインです。
ドネーションウェアですので気に入った方はぜひ寄付を。
1.概略
2.できることとできないこと
Strings Dream Synthesizerは「ヴァイオリン」「ホルン」などの音をミックスして音を作ります。それぞれの「ヴァイオリン」みたいな項目のことをオルガンに倣ってストップと呼びます。どのストップから出る音ももともと一つのオシレーターの音ですので、ピッチ・位相ともに完全に同期しています。このプラグインにおいては、ヴァイオリンのみ位相の調整が可能なようで、調整の仕方によってそれなりに音が変わります。なおチェロ・コントラバスのストップは和音中最も低い一音のみ、かつその音が設定したスプリットポイント以下の音域の場合のみ発声されます。
オシレーター波形は、三角-鋸モーフ、鋸、矩形の中から選べます。もちろんすべてのストップで同時適用。三角-鋸モーフ波形であってもウェーブテーブルは使われず、アルゴリズム合成による滑らかな音が保たれます。
パラフォニックモードは、エンベロープの挙動が通常のADSRと異なる実機風になり、スプリットポイントがC2で固定され、さらに若干音質が変化するとのこと。ストリング・アンサンブルって普通のADSRエンベロープで弾くとあんまり弦楽器に聞こえないんですよね。良い機能だと思います。
ストリング・マシン特有のアンサンブルエフェクトのほか、フェイザーと、リバーブ・ディレイ・ビブラート(排他適用)もついています。こういう音にはフェイザーが結構似合うんですよね。
加えて……なぜかこのプラグインには簡易ドラムマシンが内蔵されています。曰く70'sのアナログドラムマシンの再現だとかなんとか。上の方の鍵盤から鳴らせますよ。
3.音
この分野には本当に詳しくないのでなんともいえないのですが、全体的にスムースで使いやすい音が出ている気がします。ストリング・アンサンブルシンセの音ってなんとなくガサついたイメージがあって敬遠していたのですが、Strings Dream Synthesizerを鳴らしてみると普通に結構しなやかでハイファイな音で、エフェクト次第では現代でも活躍できそうな感じがしました。
「ソリーナの音なんて任意の減算式シンセにアンサンブルエフェクトをかければ作れるんだよ」と言っている人に叩きつけるには十分かと思われます。
4.使い勝手など
CPU負荷はSynth1の4倍程度。パラフォニックモードではもう少し重くなります。
起動中にスキンが切り替え可能で、大きなもの、白っぽいもの、黒っぽいものと必要十分なバリエーションはそろっています。
プリセットも意外と充実しています。たかがストリングス、されどストリングス。
5.わたしの評価
おすすめ度: ★★★★★★★☆☆☆(7/10)
この記事をお読みいただいている皆様にソリーナ需要がどの程度あるのか測りかねたので、とりあえずニュートラルな7を付けておくことにしました。ありがちなSynthEdit製エミュよりは色々と優れた部分が多いかと思われます(SynthEdit製エミュにも良いものは沢山ありますが)。また、個人的にはFull Bucket Music製のストリング・アンサンブルよりも自分好みの音です。
余談
今回でフリーシンセレビュー記事も第8回という節目を迎えるということで(意味不明)、細部の表記のリニューアルを行いました。冒頭の定型文を変える、コロンを半角に変える、箇条書きをHTML記法に即した形式に変えるなど。
相変わらずめったに曲を作らない素人の記事なので、信頼度は地の底です。
Tunefish v4 (Brain Control)
配布元: https://www.tunefish-synth.com/

フリーでは比較的珍しい加算合成式シンセサイザーです。フリーシンセ界では有名どころですね。個人的には「有名だけど1OSCだしなぁ……」と思いなんとなく放置していたのですが、改めて眺めてみるとフリーシンセとして大変よくできていることに気が付いたのでここで紹介しようと考えた次第です。
元々容量制限の厳しいシステムに組み込む目的で開発されたものである故か、普通のシンセとか一線を画するシステムを持っているのが特徴。
1.概略
- シンプル、軽量、高音質、それでいて個性派
- 加算合成式ならではの波形操作の自由度
- フリーシンセだけで現代クラブ風サウンドを作るなら第5候補くらいに入ると思う。作ったことないけど。
2.できることとできないこと
Tunefish4は、1つのオシレーター、同時に使えるLP・HPフィルター、2エンベロープ、2LFOと、内蔵エフェクトが7つという構成です。まあ構成は普通ですね。
Tunefish4最大の特徴はオシレーターの仕組みにあります。サイン波に倍音を重ねていく加算合成式なのですが、波形操作パラメータがBandwidth, Damp, Harmonics, Drive, Scale, Modulationという6つのつまみに集約されているのですね。ScaleとModulationが肝ですが、それ以外の4つだけでも十分ニュアンスをつけられます。なお、Modulationが「具体的に何をモジュレートするのか」は地味に謎ですが、まあ良い感じの効果は出せるかと。まあこの程度のつまみの数で作れる音の種類というのは限られてくるのですが、別に一個のフリーシンセがすべての音を出せる必要はどこにもないわけで。
オシレーターは10重にまでユニゾンできます。7過ぎたあたりから違いが判らなくなってきますが、うまく調整すれば割ときれいなユニゾンサウンドが出ます。
内蔵エフェクトは7種類ですが、インサート欄は10段あります。Tunefish4はエフェクトを重ね掛けできるのですね。珍しい仕様だと思います。若干裏技めいた挙動ですが、Reverbを重ね掛けするとフィードバックによる金属音が得られます(音量注意!)。
画面最上部にあるDetuneつまみは、おそらく加算合成する際の倍音を多少ずらすためのものかと思われます。この機能は、加算合成シンセ特有の音の薄さをごまかすのに地味に大きな役割を果たします。また、その隣のSlopつまみは音色に多少の揺らぎを加えるためのもので、Detuneと共にTunefish4の音に生々しい活気を与えてくれます。なお、仕様上たとえSlopつまみを0にしたとしても、Tunefish4の音色合成からはランダム要素が排除されないとのこと。この辺は人によっては要注意ポイントでしょう。(ソース: https://github.com/paynebc/tunefish/issues/19)
3.音
音については詳しくありませんが、割とすっきりした現代的な音だと感じます。高音域もクリアで、折り返しノイズ(エイリアシング)はほとんど聞こえません。音声合成の仕組み上、あるいは内部ランダマイズのおかげか、フリーのウェーブテーブル式シンセにありがちな「いかにも波形を鳴らしている感」が薄いです。
自然な音が出る反面、音圧感や存在感には乏しいのですが、リミッターとディストーションがきっとすべてを解決してくれます。あとは混雑したミックスに放り込んでしまえば、もう誰もフリーソフトから出ている音だとは思わなくなるでしょう。
ちなみにTunefish v4の「本来の目的」である64kbでムービーを作るコンテストに出品された作品がこちら。正直ここで鳴ってる音を自分の曲でそのまま使いたいと思えるほどではないのですが、割と打楽器系の合成にも強いことくらいは伝わってきます:
4.使い勝手など
やってることの割に、CPU負荷は非常に軽いです。Synth1と同程度。動作も安定している部類かと思われます。
プリセットもフリーシンセとして十分な量と質。多少手を入れる前提ですが、普通に制作に取り入れることも可能でしょう。
文句をつけるとすればエンベロープが最遅にセットしてもなお早すぎることと、オクターブ以外のチューニングが一切できないこと。MIDI側でピッチベンドを打つしかありません。
5.わたしの評価
おすすめ度: ★★★★★★★★★☆(9/10)
Tunefish4は音作りが簡単そうに見えて難しく、出せる音の幅も大して広くないので、初心者向けと呼べるかは若干怪しいと思うのですが、繊細なリードから歪んだワブルベースまで、色々即戦力になる音が出せるというのは大きいと思います。
考えてみれば、Tunefish4というシンセは小さいながらも非常に独特の、しかし洗練されたシステムを持っていて、それが数ある商用シンセサイザーの中でも輝く理由なのでしょうね。
Strings Dream Synthesizer (NUSofting)
配布元: https://www.kvraudio.com/product/strings-dream-synthesizer-by-nusofting

Solinaに代表されるような、いわゆるストリング・アンサンブルの再現。古そうな見た目と古めかしい音が出ますが、2020年4月にメジャーアップデートされたばかりの新しいプラグインです。
ドネーションウェアですので気に入った方はぜひ寄付を。
1.概略
- 「70年代の音」が出るパッド専用シンセ
- 往年の挙動を再現するパラフォニック・モード付き
- なぜかドラムマシン内蔵
2.できることとできないこと
Strings Dream Synthesizerは「ヴァイオリン」「ホルン」などの音をミックスして音を作ります。それぞれの「ヴァイオリン」みたいな項目のことをオルガンに倣ってストップと呼びます。どのストップから出る音ももともと一つのオシレーターの音ですので、ピッチ・位相ともに完全に同期しています。このプラグインにおいては、ヴァイオリンのみ位相の調整が可能なようで、調整の仕方によってそれなりに音が変わります。なおチェロ・コントラバスのストップは和音中最も低い一音のみ、かつその音が設定したスプリットポイント以下の音域の場合のみ発声されます。
オシレーター波形は、三角-鋸モーフ、鋸、矩形の中から選べます。もちろんすべてのストップで同時適用。三角-鋸モーフ波形であってもウェーブテーブルは使われず、アルゴリズム合成による滑らかな音が保たれます。
パラフォニックモードは、エンベロープの挙動が通常のADSRと異なる実機風になり、スプリットポイントがC2で固定され、さらに若干音質が変化するとのこと。ストリング・アンサンブルって普通のADSRエンベロープで弾くとあんまり弦楽器に聞こえないんですよね。良い機能だと思います。
ストリング・マシン特有のアンサンブルエフェクトのほか、フェイザーと、リバーブ・ディレイ・ビブラート(排他適用)もついています。こういう音にはフェイザーが結構似合うんですよね。
加えて……なぜかこのプラグインには簡易ドラムマシンが内蔵されています。曰く70'sのアナログドラムマシンの再現だとかなんとか。上の方の鍵盤から鳴らせますよ。
3.音
この分野には本当に詳しくないのでなんともいえないのですが、全体的にスムースで使いやすい音が出ている気がします。ストリング・アンサンブルシンセの音ってなんとなくガサついたイメージがあって敬遠していたのですが、Strings Dream Synthesizerを鳴らしてみると普通に結構しなやかでハイファイな音で、エフェクト次第では現代でも活躍できそうな感じがしました。
「ソリーナの音なんて任意の減算式シンセにアンサンブルエフェクトをかければ作れるんだよ」と言っている人に叩きつけるには十分かと思われます。
4.使い勝手など
CPU負荷はSynth1の4倍程度。パラフォニックモードではもう少し重くなります。
起動中にスキンが切り替え可能で、大きなもの、白っぽいもの、黒っぽいものと必要十分なバリエーションはそろっています。
プリセットも意外と充実しています。たかがストリングス、されどストリングス。
5.わたしの評価
おすすめ度: ★★★★★★★☆☆☆(7/10)
この記事をお読みいただいている皆様にソリーナ需要がどの程度あるのか測りかねたので、とりあえずニュートラルな7を付けておくことにしました。ありがちなSynthEdit製エミュよりは色々と優れた部分が多いかと思われます(SynthEdit製エミュにも良いものは沢山ありますが)。また、個人的にはFull Bucket Music製のストリング・アンサンブルよりも自分好みの音です。
余談
今回でフリーシンセレビュー記事も第8回という節目を迎えるということで(意味不明)、細部の表記のリニューアルを行いました。冒頭の定型文を変える、コロンを半角に変える、箇条書きをHTML記法に即した形式に変えるなど。
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