星の数ほどあるといわれるフリーシンセのうち、触ったことのあるものに長々と感想文を書いていきます。今回はその第七弾です。
この企画、少しずつ「質より量」でやってかないといつまで経っても面白いソフトを紹介しきれない気がしたので、詳細な解説とかは減らそうと思います(心構え)。
今回取り上げるのはバーチャルアナログど真ん中のVK-1 Viking Synthesizer(名前が長い)、そしてバーチャルアナログと呼べるか超ギリギリのSyncSawSynthの2本です。SyncSawSynthなんかある意味フリーシンセの極北なんじゃないかと思いますね。
VK-1 Viking Synthesizer(Blamsoft)
配布元:https://blamsoft.com/vst/vk-1-viking-synthesizer/

銀色のGUIは視認性的に賛否両論だったりしますが格好よくはあります。Blamsoftのサーバーは遅いのでダウンロードには余裕をもって。
どうやらMinimoog Voyagerのエミュレーションらしいです。Voyagerにも色々なエディションがありますが、そのうちどれの再現なのかは知りません。ちなみにドネーションウェア。メアド登録も何もなしにダウンロードできますが、もし気に入った場合には寄付も検討しましょう。
1.概略
・フリー(ドネーションウェア)史上最高のMoog感(当社調べ)
・無印Minimoogよりも多機能でいろいろ使える
・当然のごとくモノフォニック
・CPU負荷は高め
2.できることとできないこと
元ネタに大体準じた(どのくらい準じているかは知りませんが)Minimoog Voyagerです。昔ながらの無印Minimoogは知名度こそ高けれ、今となっては出せる音の幅の狭さがネックになってきます(その一番ベーシックな音が他のどのシンセよりも得意という理由で評価されてるわけですが)。一方、復刻版兼拡張版として21世紀に発売されたVoyagerは、LFOの追加、ノイズオシレーターの追加、フィルターのツイン化、オシレーターシンクやFMの追加などで色々と柔軟になったわけですね。これで大分可能性が広がり、「ミニモーグ・サウンド」以外も出せるようになりました。
VK-1のフィルターはハイパス・ローパスを同時に動かすモードまたは、左右で異なる周波数のローパスフィルターを持つモードに切り替えられます。Cutoffで1個目のローパスを動かし、Spacingでもう一つのフィルターを動かす形です。
ソフトウェアならではの機能として、フィルターのスロープを切り替えることもできます。幻の2ポールフィルターのMoogも作れますよ。同じラダーフィルターでも2ポールになるだけでかなり荒々しいサウンドになります。また、フィルターのアルゴリズムは5種類から選べ、歪みの効いたDrive IIIや、より高品質なHQなど用途に応じて切り替えられます。
3.音
まあMoog系のエミュレーションを名乗るくらいですので、Moog的な音がします。KVRでは酷評する人もいましたが、酷評されてたのはかつて59ドルあたりで販売されていた頃なので、フリーとしてみれば何の文句もないでしょう。正直好みの問題です。一部のプリセットにはハイパスフィルタが強めにかかっているので、単体で聴いたときに迫力不足に聞こえるのかもしれません。そもそもMinimoogやその類似製品に関しては、「ソロ楽器として熟練のキーボードプレイヤーがライブ演奏していることが多い」せいで、実機のサウンドが過大評価され、打ち込みサウンド(特にベタ打ち)が過小評価されがちなところがあると思います。
アナログオシレーターのゆらぎも再現しているらしく、オシレーターをデチューンしたときの効き方が非常にそれらしいです。フィルターはHQアルゴリズムを選択すると生々しさが増しますが、引き換えにCPU負荷が非常に大きくなります(3倍くらいになる)。
まあ実機と聴き比べながら作ったとのことなので、似てないということはないでしょう。
4.使い勝手など
CPU負荷は高めです。特にフィルターアルゴリズムがHQのときはどうしようもなく重く、私の環境ではSynth1の100倍近いCPUリソースを使います(どちらもモノフォニックのとき)。bx_oberhausenもCPU負荷が重いことで有名ですが、このVK-1のHQモードはその3倍重いです。HQモード時のVK-1が、アナログエミュレーションとして商用シンセに肩を並べられるレベルなのはほぼ間違いないのですが、ここまでリソースキラーだと流石に色々厳しいものがあります。
もともと販売されていたシンセであるため、詳細なマニュアルがあります。VK-1自体複雑なシンセではありませんが、元ネタ的にやや変則的な部分がなくはないですのでマニュアルがあると助かります。
プリセットはそれなりに多数あります。ポリフォニーには非対応ですが、うまいこと使っていきたいですね。
5.わたしの評価
おすすめ度:★★★★★★★★★☆(9/10)
8か9かで迷いましたが、元ネタの知名度や、かつて商用だったことも考慮し、高い方を取ることにしました。
無料で使え、ちゃんとした音が出るプラグインで、しかもエミュレーション元がMoogというならば、割と誰にでもおすすめするほかありません。そういうもんです。
UIなど少々ややこしいところはあり、モノフォニックで、CPUハングリーでもありますが、それでも敢えて使う価値があるといえます。ただジャンルは少々選びますね。モノフォニックMoogの使いどころを適切に選べる人向けかもしれません。(私には難しいってことです)
SyncSawSynth(Uhhyou)
配布元:https://ryukau.github.io/VSTPlugins/index.html

前回に引き続きUhhyouによるシンセサイザーを取り上げます。作者の方は日本語話者(昨今の政治的マイブームにより、公の場でナショナル・アイデンティティを断定することは控えるようにしてみています。別に日常会話では「日本人」を日本語話者という意味で使ってもいいと思いますけどね)。
基本的には鋸波しか選べないVAシンセですが、なんか特殊な波形を使うことでハードシンクと組み合わせたときに独特の効果が出せるようになっているらしいです。こういう、簡単に扱えて、簡単に変な音が出せるシンセは地味に貴重だと思います。
1.概略
・Hardsync on steroids
・シンプル簡単な操作でひたすらオシレーターシンクを楽しめる
・周波数変調つまみを回した瞬間とんでもない変調がかかる
・それ以外は割と普通(ゆえに使いやすい)
2.できることとできないこと
詳細については、公式サイトの日本語マニュアルが丁寧に書かれているのでそちらをご覧いただければ。
オーソドックスな2オシレーター構造ですが、SyncSawSynthのオシレーターは単体でハードシンクできます。普通にハードシンクするにはSyncつまみの下にあるボックスを"Ratio"に設定してください。オシレーターを2つユニゾンすることもできるので厚い音も出ます。
オシレーター波形の選択肢は少々常軌を逸しており、16種の鋸波と1種のサイン波で構成されています。どうやらオシレーター波形の補完方法の差異による分類だそうで、それぞれサウンドキャラクターやハードシンク・周波数変調をかけた際の挙動が若干異なります。とりあえずOrder 5かOrder 6 doubleあたりを選んでおけば普通の音になるんじゃないでしょうか。Order数が上がると音は丸っこくなる一方で、変調をかけた時のノイズが過激な出方をするようになります。
オシレーターセクションの下にあるModulation欄の3つのつまみは、このプラグインの一番面白い部分であることは間違いないでしょう。各オシレーター出力で他のパラメータにオーディオレートの周波数変調をかけるのですが、通常のFMともPMとも、その他いかなる変調とも異なる、非常に劇的かつユニークな音色変化が発生します。ノイズまみれになることも多いですが、内蔵エンベロープやLFOと組み合わせたりすることで、他のプラグインでは非常に出しにくい音を簡単に出すことができます。パーカッション合成機としての用途も考えられ、楽曲のフックとして使うことも可能そうです。
3.音
音自体は普通のデジタルシンセの音です。過激に変調させなければエイリアシングアーティファクトはさほど気になりません。オシレーター波形によってノイズの出方が少々異なるため、ノイズを取り入れた音作りの際には波形選びも重要になります(最初は最も過激なOrder 10から始めるとノイズの出方がわかりやすいです)。エンベロープはそこそこ素早くすることができるため、引き締まったPluckを作るにも使えます。
フィルターはResとFeedをともに上げることで曲者感あるアシッドサウンドになります。あまりハイファイな音ではありませんが、これはこれで味があってまあ。
ついでにですが、打楽器系の音を作ることを考えるとフィルターのスロープは切り替えたかった気がします。
4.使い勝手など
CPU負荷は高くもなく低くもなくです。
私の環境(Waveform10ないし11) だけかもしれませんが、プリセットを適用した後GUIが更新されない仕様or不具合があり、インスタンスを開きなおす必要があります。また、これもおそらく環境依存のバグなのですが、私の環境ではなぜか強制的にモノフォニックとして動作します。
UIは飾り気こそありませんが、シンプルかつ明快で使いやすいです。最近色変えに対応しました。
プリセットは数こそ控えめですが、このシンセの奇妙な個性をアピールするには十分といえます。が、せっかく明快な構造になっている以上、やはり自分で音作りをするのが一番楽しめると思いますね。
5.わたしの評価
おすすめ度:★★★★★★★☆☆☆(7/10)
いわゆる一芸特化型プラグインのため、☆8以上つけるのも……な感じですが、このユニークな出音とシンプルな操作性は、ほかで代替できるものではないと思います。TechnoやElectronicaをはじめ、幅広い分野での活躍が期待できる……かもしれません。複雑なパッチングなしで妙な音が出せますよ。
私の制作の中でも、どこかで一回使ってみたいものです。
この企画、少しずつ「質より量」でやってかないといつまで経っても面白いソフトを紹介しきれない気がしたので、詳細な解説とかは減らそうと思います(心構え)。
今回取り上げるのはバーチャルアナログど真ん中のVK-1 Viking Synthesizer(名前が長い)、そしてバーチャルアナログと呼べるか超ギリギリのSyncSawSynthの2本です。SyncSawSynthなんかある意味フリーシンセの極北なんじゃないかと思いますね。
VK-1 Viking Synthesizer(Blamsoft)
配布元:https://blamsoft.com/vst/vk-1-viking-synthesizer/

銀色のGUIは視認性的に賛否両論だったりしますが格好よくはあります。Blamsoftのサーバーは遅いのでダウンロードには余裕をもって。
どうやらMinimoog Voyagerのエミュレーションらしいです。Voyagerにも色々なエディションがありますが、そのうちどれの再現なのかは知りません。ちなみにドネーションウェア。メアド登録も何もなしにダウンロードできますが、もし気に入った場合には寄付も検討しましょう。
1.概略
・フリー(ドネーションウェア)史上最高のMoog感(当社調べ)
・無印Minimoogよりも多機能でいろいろ使える
・当然のごとくモノフォニック
・CPU負荷は高め
2.できることとできないこと
元ネタに大体準じた(どのくらい準じているかは知りませんが)Minimoog Voyagerです。昔ながらの無印Minimoogは知名度こそ高けれ、今となっては出せる音の幅の狭さがネックになってきます(その一番ベーシックな音が他のどのシンセよりも得意という理由で評価されてるわけですが)。一方、復刻版兼拡張版として21世紀に発売されたVoyagerは、LFOの追加、ノイズオシレーターの追加、フィルターのツイン化、オシレーターシンクやFMの追加などで色々と柔軟になったわけですね。これで大分可能性が広がり、「ミニモーグ・サウンド」以外も出せるようになりました。
VK-1のフィルターはハイパス・ローパスを同時に動かすモードまたは、左右で異なる周波数のローパスフィルターを持つモードに切り替えられます。Cutoffで1個目のローパスを動かし、Spacingでもう一つのフィルターを動かす形です。
ソフトウェアならではの機能として、フィルターのスロープを切り替えることもできます。幻の2ポールフィルターのMoogも作れますよ。同じラダーフィルターでも2ポールになるだけでかなり荒々しいサウンドになります。また、フィルターのアルゴリズムは5種類から選べ、歪みの効いたDrive IIIや、より高品質なHQなど用途に応じて切り替えられます。
3.音
まあMoog系のエミュレーションを名乗るくらいですので、Moog的な音がします。KVRでは酷評する人もいましたが、酷評されてたのはかつて59ドルあたりで販売されていた頃なので、フリーとしてみれば何の文句もないでしょう。正直好みの問題です。一部のプリセットにはハイパスフィルタが強めにかかっているので、単体で聴いたときに迫力不足に聞こえるのかもしれません。そもそもMinimoogやその類似製品に関しては、「ソロ楽器として熟練のキーボードプレイヤーがライブ演奏していることが多い」せいで、実機のサウンドが過大評価され、打ち込みサウンド(特にベタ打ち)が過小評価されがちなところがあると思います。
アナログオシレーターのゆらぎも再現しているらしく、オシレーターをデチューンしたときの効き方が非常にそれらしいです。フィルターはHQアルゴリズムを選択すると生々しさが増しますが、引き換えにCPU負荷が非常に大きくなります(3倍くらいになる)。
まあ実機と聴き比べながら作ったとのことなので、似てないということはないでしょう。
4.使い勝手など
CPU負荷は高めです。特にフィルターアルゴリズムがHQのときはどうしようもなく重く、私の環境ではSynth1の100倍近いCPUリソースを使います(どちらもモノフォニックのとき)。bx_oberhausenもCPU負荷が重いことで有名ですが、このVK-1のHQモードはその3倍重いです。HQモード時のVK-1が、アナログエミュレーションとして商用シンセに肩を並べられるレベルなのはほぼ間違いないのですが、ここまでリソースキラーだと流石に色々厳しいものがあります。
もともと販売されていたシンセであるため、詳細なマニュアルがあります。VK-1自体複雑なシンセではありませんが、元ネタ的にやや変則的な部分がなくはないですのでマニュアルがあると助かります。
プリセットはそれなりに多数あります。ポリフォニーには非対応ですが、うまいこと使っていきたいですね。
5.わたしの評価
おすすめ度:★★★★★★★★★☆(9/10)
8か9かで迷いましたが、元ネタの知名度や、かつて商用だったことも考慮し、高い方を取ることにしました。
無料で使え、ちゃんとした音が出るプラグインで、しかもエミュレーション元がMoogというならば、割と誰にでもおすすめするほかありません。そういうもんです。
UIなど少々ややこしいところはあり、モノフォニックで、CPUハングリーでもありますが、それでも敢えて使う価値があるといえます。ただジャンルは少々選びますね。モノフォニックMoogの使いどころを適切に選べる人向けかもしれません。(私には難しいってことです)
SyncSawSynth(Uhhyou)
配布元:https://ryukau.github.io/VSTPlugins/index.html

前回に引き続きUhhyouによるシンセサイザーを取り上げます。作者の方は日本語話者(昨今の政治的マイブームにより、公の場でナショナル・アイデンティティを断定することは控えるようにしてみています。別に日常会話では「日本人」を日本語話者という意味で使ってもいいと思いますけどね)。
基本的には鋸波しか選べないVAシンセですが、なんか特殊な波形を使うことでハードシンクと組み合わせたときに独特の効果が出せるようになっているらしいです。こういう、簡単に扱えて、簡単に変な音が出せるシンセは地味に貴重だと思います。
1.概略
・Hardsync on steroids
・シンプル簡単な操作でひたすらオシレーターシンクを楽しめる
・周波数変調つまみを回した瞬間とんでもない変調がかかる
・それ以外は割と普通(ゆえに使いやすい)
2.できることとできないこと
詳細については、公式サイトの日本語マニュアルが丁寧に書かれているのでそちらをご覧いただければ。
オーソドックスな2オシレーター構造ですが、SyncSawSynthのオシレーターは単体でハードシンクできます。普通にハードシンクするにはSyncつまみの下にあるボックスを"Ratio"に設定してください。オシレーターを2つユニゾンすることもできるので厚い音も出ます。
オシレーター波形の選択肢は少々常軌を逸しており、16種の鋸波と1種のサイン波で構成されています。どうやらオシレーター波形の補完方法の差異による分類だそうで、それぞれサウンドキャラクターやハードシンク・周波数変調をかけた際の挙動が若干異なります。とりあえずOrder 5かOrder 6 doubleあたりを選んでおけば普通の音になるんじゃないでしょうか。Order数が上がると音は丸っこくなる一方で、変調をかけた時のノイズが過激な出方をするようになります。
オシレーターセクションの下にあるModulation欄の3つのつまみは、このプラグインの一番面白い部分であることは間違いないでしょう。各オシレーター出力で他のパラメータにオーディオレートの周波数変調をかけるのですが、通常のFMともPMとも、その他いかなる変調とも異なる、非常に劇的かつユニークな音色変化が発生します。ノイズまみれになることも多いですが、内蔵エンベロープやLFOと組み合わせたりすることで、他のプラグインでは非常に出しにくい音を簡単に出すことができます。パーカッション合成機としての用途も考えられ、楽曲のフックとして使うことも可能そうです。
3.音
音自体は普通のデジタルシンセの音です。過激に変調させなければエイリアシングアーティファクトはさほど気になりません。オシレーター波形によってノイズの出方が少々異なるため、ノイズを取り入れた音作りの際には波形選びも重要になります(最初は最も過激なOrder 10から始めるとノイズの出方がわかりやすいです)。エンベロープはそこそこ素早くすることができるため、引き締まったPluckを作るにも使えます。
フィルターはResとFeedをともに上げることで曲者感あるアシッドサウンドになります。あまりハイファイな音ではありませんが、これはこれで味があってまあ。
ついでにですが、打楽器系の音を作ることを考えるとフィルターのスロープは切り替えたかった気がします。
4.使い勝手など
CPU負荷は高くもなく低くもなくです。
私の環境(Waveform10ないし11) だけかもしれませんが、プリセットを適用した後GUIが更新されない仕様or不具合があり、インスタンスを開きなおす必要があります。また、これもおそらく環境依存のバグなのですが、私の環境ではなぜか強制的にモノフォニックとして動作します。
UIは飾り気こそありませんが、シンプルかつ明快で使いやすいです。最近色変えに対応しました。
プリセットは数こそ控えめですが、このシンセの奇妙な個性をアピールするには十分といえます。が、せっかく明快な構造になっている以上、やはり自分で音作りをするのが一番楽しめると思いますね。
5.わたしの評価
おすすめ度:★★★★★★★☆☆☆(7/10)
いわゆる一芸特化型プラグインのため、☆8以上つけるのも……な感じですが、このユニークな出音とシンプルな操作性は、ほかで代替できるものではないと思います。TechnoやElectronicaをはじめ、幅広い分野での活躍が期待できる……かもしれません。複雑なパッチングなしで妙な音が出せますよ。
私の制作の中でも、どこかで一回使ってみたいものです。
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