2021-01-16追記: Odin 2正式公開を機に追記修正しました、が、本体についての情報は古いものと新しいものとが混在しています。一応誤解を与えかねない箇所には取り消し線を引いたりしましたが、一部不正確な部分が残っていることをご承知おきください。
本当はいろいろマイナーどころを攻めていきたいところなのですが、ちょうどこの企画を書いている途中、"Odin 2" なる新作フリーシンセのベータ版が公開されたとの情報を得ました。なのでさっそく入手しまして。
なにせ、自称 "kickass" なハイブリッド・シンセサイザーで、Win, Mac, LinuxのVSTばかりかAudioUnit規格にも対応、もちろん未来永劫無料で使用可能との触れ込み。意欲作であることには間違いありません。Bedroom Producers Blogの記事でも割と期待が寄せられている様子が見て取れます。
https://bedroomproducersblog.com/2020/04/16/thewavewarden-odin-2/
見てみると、割と出来ることが多そうな見た目をしており、なおかつSynthEdit製とかではなくネイティブコードで書かれている(プラットフォームにJUCEが使用されている)とのことで質にも多少期待ができる。ということで、ベータテストに付き合いがてら、ここで軽く情報を共有しておこうと思いこの記事を書いています。
(今更ながらですが、私は音楽業界のプロフェッショナルから最も遠い位置にいる無知なお子様であり、このブログの全てコンテンツの信ぴょう性に関して何も責任を負わないし、負う能力もないことをここに記しておきます。要するに「あまり真に受けないでください」ってことです……。)
Odin 2(TheWaveWarden)
入手元:https://www.thewavewarden.com/odin2

公式サイト曰く "A Synth to Please the Gods." 神々を喜ばせるシンセ。マジかよ。これで満足しなかったら神々に「贅沢すぎだ!」と怒られてしまいますね。
ウェーブテーブルからFM合成まで色々なシンセシス方式を備え、アナログモデリングのフィルターも多数用意。おまけに商用シンセ並みの本格モジュレーションマトリックスも装備するなど至れり尽くせり。
どうやら神々は様々なOSを使っているようで、様々な規格に対応していることも特長です。
2020年4月16日現在、Odin 2はまだベータ版でして(すなわち未完成)、バグの報告を集めたり、付属プリセットの公募を行ったりしているようです。ご関心のある方はKVRなどで開発に協力してみるのも一興でしょう。
1.概略
・期待の新人
・フリーでは数少ないハイブリッド・シンセサイザー
・突出して多機能ではないが、8割のタスクはこなせる程度の機能
・明快で楽しいGUI
・内蔵エフェクターもある
・今のところ同梱プリセットは募集中のためゼロ
2.できることとできないこと
Odin 2は、3オシレーター・3フィルター構造をしたポリフォニック・シンセサイザーです。フィルターが3つもあるのは珍しいですね。
信号の流れは、オシレーター×3 → (フィルターA+フィルターB) → ミキサー → フィルターC、と、フィルターCの位置がユニークなのが特徴です。
この位置に置かれるフィルターは往々にしてポリフォニック対応していなかったりしますが、Odin 2ではしっかりボイスごとに動きます(多分)。もちろんボイスごとに動かさないこともできる(鍵盤が押されるとすべてのボイスに対しエンベロープが走る)ので安心できます。なお、フィルターAとBは直列、並列などと自由度の高いルーティングが可能です。
オシレーターは全部でなんと11種類。全く毛色が異なるというよりも、アプローチの違いで種類が増えている印象ですが、多いことには変わりありません。とりあえず一覧にするとこんな感じ。
・Analog:普通のアナログタイプ。ピッチドリフトとハードシンク(オシレーター1に同期)が付いている。VCOというよりDCOといった感じのクールな音。パルス波が個性的な形をしている。
・Wavetable:モーフィング可能なウェーブテーブル。フリーでは貴重。現状(2.0.15beta)では外部波形の読み込みはできない。これもハードシンクができる。
・Multi:Wavetableからハードシンクを取った代わりにユニゾンできるようになったもの。いわゆるスーパーソー。ボイスごとにウェーブテーブルの波形をバラつかせる機能もあるので結構使える。
・Vector:KORGが採用しているようなベクターシンセシスができる。XYパッドで音を動かせ!
・Chiptune:その名の通り、チップチューン用の音が出る。チップチューン風の高速アルペジオを作る機能があり、何故かハードシンクもできる(併用すると少し面白い)。
・FM:波形が選べる2オペレーターの(狭義の)周波数変調。アナログシンセのFMはこちら。
・PhaseMod:FMオシレーターがFMの代わりに位相変調を行うもの。DX7のFMはこちら。
・Noise:その名の通り、ノイズを出力するだけのオシレータ。帯域を調整するLP/HPフィルター付き。
・Wavedraw:手書きの波形。ここで書いておいた波形はWavedrawオシレーターを閉じても内部に保持されていて、上記のVectorやFMなどの波形として選択することができる。
・Chipdraw:チップチューン風のWavedraw。波形メモリ音源あたりがイメージされているんだと思われる。
・Specdraw:加算合成式。オルガンのように倍音を足していく。Thornを思い出す……。
また、Odin 2にはフィルターが13種類も用意されています。主にアナログモデリング系。一個フィルターとは言い難いものも混ざっていますが……。これも同様に一覧にすると以下のようになります。ちなみに自己発振するものは一つもありません(故意に発振しないようにしている?)(確認したのはベータ版時代なので今は違うかもしれない)。
・Lowpass/Highpass/Bandpass 24:4ポールのフィルター。どうやらMoogのエミュレーションらしい。音を歪ませるSaturationつまみ付き。回すとMoogに近づくかも。
・Lowpass/Highpass/Bandpass 12:2ポールのフィルター。上の4ポールフィルターと印象を変えずに2ポールにした感じ、だがSaturationの効き方はずっと野性的・ワイルドになる(Lowpassにおいて)。
・SEM 12:その名の通り、OberheimのSEMに搭載されているステート・バリアブル・フィルターを模倣したもの。結構似ている。Saturationが無い代わりに、ローパスからノッチフィルターを経てハイパスまで変化させるOberheimお馴染みのつまみが付いている。
・Diode Ladder:おそらくRolandのTB-303のフィルターを模倣したもの。ディストーションと相性抜群だが……TB-303、カットオフが低い値の時のレゾナンスってこんなに大きかったっけ? Saturationも付いている(上げすぎない方が303っぽいと思う)。
・KRG 35 LP/HP:どうやらKorg MS-20の初期ロットで採用されていたフィルターの模倣らしい。でも自己発振はしない。しろよ。実機にどの程度似ているかはわからないが、おそらくヴィンテージの有名なフィルターの中でこのMS-20初期のフィルターは圧倒的に入手が容易かと思われるので、だれかmonotronでも買って試してみてください。もちろんSaturation付き。12時くらいまで上げてもいいんじゃないかな。
・Comb Filter:普通のコムフィルター。表側(スペクトラムに櫛型を足す)と裏側(櫛型を引く)が選べる。
・Formant Filter:フォルマントフィルター。8つの母音のなかから2つを選びモーフィングできる。結構癖が強い効き方なのでDry/Wetが欲しくなる。
・Ring Modulator:フィルターと呼べるのか非常に怪しいが、Dry/Wet付きのリングモジュレーター。
そして、Odin 2にはエンベロープが4つ、それぞれ"Amp", "Mod", "Filter", "Global"と名乗っており、ルーティング不要で使えるようになっています(楽でいいよ~)。Globalはおそらくボイス毎ではなくシンセサイザー全体で同時に動くエンベロープのことだと思うのですが、現状Globalエンベロープはモジュレーションのソースに選択できないようなので何とも(バグです)。
LFOも4つあり、そのうち一つがGlobal。これも現在バグにより動作していませんが、近いうちに使えるようになるでしょう。LFOはごくシンプルなものですが、一応Wavedrawオシレーターで書いておいた波形を読み込めるので、少し凝ることもできるかもしれません。
あまり目立っていませんがXYパッドもあります(現在バグにより動作不能)。これがマクロコントロールを兼ねているようですね。
さて、画面下部にはモジュレーション・マトリックスが並びます。
これが結構本格的で、ソース一つにつき宛先が2つ、さらにモジュレーションのスケーリングもできます。
スロット数は9個と普通。並び替え機能が無いのはまあフリーだから仕方ないでしょう。ちなみにSynthMasterには65スロットありますが、そんなに使う人がいるのでしょうか(SynthMasterのプリセット"SQ Brain Stormer KS"では49個も使っていますが……)?
内蔵エフェクターは4種類(同時に使用可能)。それに加え、3個目のフィルターの手前にあるミキサーセクションでディストーションを追加できます。
エフェクターにはDelay, Phaser, Chorus, Flangerとシンセサイザーの定番がそろいます。リバーブに関しては外部でかけろということでしょうね。どれもデフォルトでのパラメーターがやたら極端で(100%ミックスされるコーラス、1秒前後のディレイタイムetc.)疑問なのですが、普通に操作すれば普通に使えると思います。出音は若干薄すぎるきらいがあり、好みが分かれると思いますが、フェイザーの回転が止められるのと、ディレイにダッキングがかけられる所は好印象。普通に使おうと思えば使える部類だと思われます。
ミキサー内蔵のディストーションは3タイプから選べ、BoostとDry/Wetで音を調整します。が、ディストーションは三種類どれも癖が強く(特に"Zero"の使いどころが不明)、Dry/Wetで混ぜるのが前提になっている印象があります。
機能面を総合してみると、必要度の高い項目を優先して実装する反面、細かくこだわった作りこみ要素はオミットされているようですが、そのおかげで素早いワークフローが実現されています。エフェクターに関しては外部からかければ問題なし。自前のウェーブテーブルを読み込めたら完璧でしょう。
近年のBass Musicにみられるようなエグい変調は難しいですが(フリーではVital, Surge以外不可能と思ったほうが良い)、それ以外の傾向の音なら大体イケます。
2021-01-16追記: これに加えて、2021年1月16日までに追加・変更された主な機能は以下
3.音
何分新しいシンセのため、Odin 2のサウンドの個性をうかがえる資料というのがあまり出回っていません。したがって、この項目は私のバカ耳だけを頼りに書くことになります……。
まず、全体的には良い意味でフリーシンセらしいというか、それほど主張の強くない音といえます。
私の手持ちの中で、最もサウンドキャラクターが似ているといえるのは、おそらくPG-8Xでしょうか。悪い癖がなくスッキリした音。どんな場面にもなじむでしょうが、あまりタイトな音色には向かない印象。Multiオシレーターのデチューンは割といい線で、余韻の消えゆく感じがフリー指折りの美しさ、な気がします。Hi-Fi感はないですが。
総じて個人的には好き。ただ、楽曲の主役を張るには迫力が足りない気もしますね。ポリフォニックで鳴らす向きかな? 他との比較では、Vitalより自然で柔らかく(寝ぼけた音とも言う)、Surgeより抜けが良い(存在感が薄いとも言う)感触があります。
(細かい文句を言うと、ハードシンクにエイリアシングノイズが乗っているような気がするので、実装の仕方がまずいのかもしれない(正式版で試したことはないので今はどうかわからない))
4.使い勝手など
フリープラグインには珍しく、GUIは相当優秀な部類だと思われます。
マスターボリュームつまみが左下にあるのはちょっと戸惑いますが、カラースキームは概ね適切だと思いますし、信号の流れがわかりやすいようラインが施してあるなどの工夫もあり、非常に分かりやすい。アニメーションが欲しいとか、出力音量メーターが欲しいとか、ぜいたくを言えばきりがないですが、それらは他の大概のフリーシンセにも付いていませんから文句はありません。
オシレーター・モジュールやフィルター・モジュールのデザインも秀逸で、ガジェット感があり楽しめます。また、途中でオシレーターの種類を変えたとしても、以前のオシレーターでのセッティングはすべて内部に保持されているので元に戻すことが可能です。地味に助かる。
また、地味ではありますが、フィルターの種類を色々変えても全体の音量はほとんど変わらない点も好印象です。フィルターのタイプを変えるたびに音量を微調整するのってなかなか煩わしいです。これはSynthMasterにも見習ってほしいですね。ひどいよあれ。
プリセット管理に関しては、現状エクスプローラー経由で単一プリセットファイルを保存したりロードしたりする、というかな~り原始的な方法がとられています。まあ、別に……使えなくはないのですが、多くのプリセットをとっかえひっかえ試すという使い方は厳しくなってしまいますので、今後の改善を期待したいところです。かつてはプリセットブラウザが存在しませんでしたが、2.2.0Beta以降は内蔵ブラウザが追加されたようです。
バグ・安定性に関しては現状ノーコメントです。なにせベータ版であるため、モジュレーションマトリックスで特定の動作をすると必ずクラッシュするなど(環境によります)、実用に耐えられるか怪しい状態です。物好きでもなければ安定板を待つのが丸いでしょうね。安定性に関してですが、私の使用しているDAW(Waveform Free)はVST3インストゥルメントの挙動が不安定なので、VST2非対応のOdin 2の挙動も不安定です。VST3が安定して動く環境ならばOdin 2も動くと思います。
負荷はほどほどです。基本的にはSynth1の4~8倍程度に見えますが、凝ったパッド系の音色は相当後負荷になることがあります。
5.わたしの評価
おすすめ度:★★★★★★★★★☆(9/10)
色々総合してみても、今後定番or準定番フリーシンセの一つになる可能性が高いと思います(2020年11月以降はVitalの登場で精々『準定番』どまりになってしまいそうな気がしますが)。マニアックさよりも汎用性・実用性を重視した設計のOdin 2は、フリーシンセフリーク以外の人々にもきっと受け入れられるはずでしょう。多分。流行らなかったらごめん。つか日本のDTM界隈はフリーシンセへの感度が弱い印象があるんで分からないです。金出して買ったシンセは良いに決まってるもんね。
音の傾向的に趣味に合わない人もいるように思うので、まずは動画などで動いているところを見るのがよいと思います。
本当はいろいろマイナーどころを攻めていきたいところなのですが、ちょうどこの企画を書いている途中、"Odin 2" なる新作フリーシンセのベータ版が公開されたとの情報を得ました。なのでさっそく入手しまして。
なにせ、自称 "kickass" なハイブリッド・シンセサイザーで、Win, Mac, LinuxのVSTばかりかAudioUnit規格にも対応、もちろん未来永劫無料で使用可能との触れ込み。意欲作であることには間違いありません。Bedroom Producers Blogの記事でも割と期待が寄せられている様子が見て取れます。
https://bedroomproducersblog.com/2020/04/16/thewavewarden-odin-2/
見てみると、割と出来ることが多そうな見た目をしており、なおかつSynthEdit製とかではなくネイティブコードで書かれている(プラットフォームにJUCEが使用されている)とのことで質にも多少期待ができる。ということで、ベータテストに付き合いがてら、ここで軽く情報を共有しておこうと思いこの記事を書いています。
(今更ながらですが、私は音楽業界のプロフェッショナルから最も遠い位置にいる無知なお子様であり、このブログの全てコンテンツの信ぴょう性に関して何も責任を負わないし、負う能力もないことをここに記しておきます。要するに「あまり真に受けないでください」ってことです……。)
Odin 2(TheWaveWarden)
入手元:https://www.thewavewarden.com/odin2

公式サイト曰く "A Synth to Please the Gods." 神々を喜ばせるシンセ。マジかよ。これで満足しなかったら神々に「贅沢すぎだ!」と怒られてしまいますね。
ウェーブテーブルからFM合成まで色々なシンセシス方式を備え、アナログモデリングのフィルターも多数用意。おまけに商用シンセ並みの本格モジュレーションマトリックスも装備するなど至れり尽くせり。
どうやら神々は様々なOSを使っているようで、様々な規格に対応していることも特長です。
1.概略
・期待の新人
・フリーでは数少ないハイブリッド・シンセサイザー
・突出して多機能ではないが、8割のタスクはこなせる程度の機能
・明快で楽しいGUI
・内蔵エフェクターもある
2.できることとできないこと
Odin 2は、3オシレーター・3フィルター構造をしたポリフォニック・シンセサイザーです。フィルターが3つもあるのは珍しいですね。
信号の流れは、オシレーター×3 → (フィルターA+フィルターB) → ミキサー → フィルターC、と、フィルターCの位置がユニークなのが特徴です。
この位置に置かれるフィルターは往々にしてポリフォニック対応していなかったりしますが、Odin 2ではしっかりボイスごとに動きます(多分)。もちろんボイスごとに動かさないこともできる(鍵盤が押されるとすべてのボイスに対しエンベロープが走る)ので安心できます。なお、フィルターAとBは直列、並列などと自由度の高いルーティングが可能です。
オシレーターは全部でなんと11種類。全く毛色が異なるというよりも、アプローチの違いで種類が増えている印象ですが、多いことには変わりありません。とりあえず一覧にするとこんな感じ。
・Analog:普通のアナログタイプ。ピッチドリフトとハードシンク(オシレーター1に同期)が付いている。VCOというよりDCOといった感じのクールな音。パルス波が個性的な形をしている。
・Wavetable:モーフィング可能なウェーブテーブル。フリーでは貴重。現状(2.0.15beta)では外部波形の読み込みはできない。これもハードシンクができる。
・Multi:Wavetableからハードシンクを取った代わりにユニゾンできるようになったもの。いわゆるスーパーソー。ボイスごとにウェーブテーブルの波形をバラつかせる機能もあるので結構使える。
・Vector:KORGが採用しているようなベクターシンセシスができる。XYパッドで音を動かせ!
・Chiptune:その名の通り、チップチューン用の音が出る。チップチューン風の高速アルペジオを作る機能があり、何故かハードシンクもできる(併用すると少し面白い)。
・FM:波形が選べる2オペレーターの(狭義の)周波数変調。アナログシンセのFMはこちら。
・PhaseMod:FMオシレーターがFMの代わりに位相変調を行うもの。DX7のFMはこちら。
・Noise:その名の通り、ノイズを出力するだけのオシレータ。帯域を調整するLP/HPフィルター付き。
・Wavedraw:手書きの波形。ここで書いておいた波形はWavedrawオシレーターを閉じても内部に保持されていて、上記のVectorやFMなどの波形として選択することができる。
・Chipdraw:チップチューン風のWavedraw。波形メモリ音源あたりがイメージされているんだと思われる。
・Specdraw:加算合成式。オルガンのように倍音を足していく。Thornを思い出す……。
また、Odin 2にはフィルターが13種類も用意されています。主にアナログモデリング系。一個フィルターとは言い難いものも混ざっていますが……。これも同様に一覧にすると以下のようになります。ちなみに自己発振するものは一つもありません(故意に発振しないようにしている?)(確認したのはベータ版時代なので今は違うかもしれない)。
・Lowpass/Highpass/Bandpass 24:4ポールのフィルター。どうやらMoogのエミュレーションらしい。音を歪ませるSaturationつまみ付き。回すとMoogに近づくかも。
・Lowpass/Highpass/Bandpass 12:2ポールのフィルター。上の4ポールフィルターと印象を変えずに2ポールにした感じ、だがSaturationの効き方はずっと野性的・ワイルドになる(Lowpassにおいて)。
・SEM 12:その名の通り、OberheimのSEMに搭載されているステート・バリアブル・フィルターを模倣したもの。結構似ている。Saturationが無い代わりに、ローパスからノッチフィルターを経てハイパスまで変化させるOberheimお馴染みのつまみが付いている。
・Diode Ladder:おそらくRolandのTB-303のフィルターを模倣したもの。ディストーションと相性抜群だが……TB-303、カットオフが低い値の時のレゾナンスってこんなに大きかったっけ? Saturationも付いている(上げすぎない方が303っぽいと思う)。
・KRG 35 LP/HP:どうやらKorg MS-20の初期ロットで採用されていたフィルターの模倣らしい。でも自己発振はしない。しろよ。実機にどの程度似ているかはわからないが、おそらくヴィンテージの有名なフィルターの中でこのMS-20初期のフィルターは圧倒的に入手が容易かと思われるので、だれかmonotronでも買って試してみてください。もちろんSaturation付き。12時くらいまで上げてもいいんじゃないかな。
・Comb Filter:普通のコムフィルター。表側(スペクトラムに櫛型を足す)と裏側(櫛型を引く)が選べる。
・Formant Filter:フォルマントフィルター。8つの母音のなかから2つを選びモーフィングできる。結構癖が強い効き方なのでDry/Wetが欲しくなる。
・Ring Modulator:フィルターと呼べるのか非常に怪しいが、Dry/Wet付きのリングモジュレーター。
そして、Odin 2にはエンベロープが4つ、それぞれ"Amp", "Mod", "Filter", "Global"と名乗っており、ルーティング不要で使えるようになっています(楽でいいよ~)。Globalはおそらくボイス毎ではなくシンセサイザー全体で同時に動くエンベロープのことだと思うのです
LFOも4つあり、そのうち一つがGlobal。
あまり目立っていませんがXYパッドもあります
さて、画面下部にはモジュレーション・マトリックスが並びます。
これが結構本格的で、ソース一つにつき宛先が2つ、さらにモジュレーションのスケーリングもできます。
スロット数は9個と普通。並び替え機能が無いのはまあフリーだから仕方ないでしょう。ちなみにSynthMasterには65スロットありますが、そんなに使う人がいるのでしょうか(SynthMasterのプリセット"SQ Brain Stormer KS"では49個も使っていますが……)?
内蔵エフェクターは4種類(同時に使用可能)。それに加え、3個目のフィルターの手前にあるミキサーセクションでディストーションを追加できます。
エフェクターにはDelay, Phaser, Chorus, Flangerとシンセサイザーの定番がそろいます。リバーブに関しては外部でかけろということでしょうね。
ミキサー内蔵のディストーションは3タイプから選べ、BoostとDry/Wetで音を調整します。が、ディストーションは三種類どれも癖が強く(特に"Zero"の使いどころが不明)、Dry/Wetで混ぜるのが前提になっている印象があります。
機能面を総合してみると、必要度の高い項目を優先して実装する反面、細かくこだわった作りこみ要素はオミットされているようですが、そのおかげで素早いワークフローが実現されています。エフェクターに関しては外部からかければ問題なし。自前のウェーブテーブルを読み込めたら完璧でしょう。
近年のBass Musicにみられるようなエグい変調は難しいですが(フリーではVital, Surge以外不可能と思ったほうが良い)、それ以外の傾向の音なら大体イケます。
2021-01-16追記: これに加えて、2021年1月16日までに追加・変更された主な機能は以下
- ステップシーケンサー
- アルペジエイター
- ミキサー内ディストーションのポリフォニック化
- GUIリサイズ
- 一部のフィルターの名称変更
3.音
何分新しいシンセのため、Odin 2のサウンドの個性をうかがえる資料というのがあまり出回っていません。したがって、この項目は私のバカ耳だけを頼りに書くことになります……。
まず、全体的には良い意味でフリーシンセらしいというか、それほど主張の強くない音といえます。
私の手持ちの中で、最もサウンドキャラクターが似ているといえるのは、おそらくPG-8Xでしょうか。悪い癖がなくスッキリした音。どんな場面にもなじむでしょうが、あまりタイトな音色には向かない印象。Multiオシレーターのデチューンは割といい線で、余韻の消えゆく感じがフリー指折りの美しさ、な気がします。Hi-Fi感はないですが。
総じて個人的には好き。ただ、楽曲の主役を張るには迫力が足りない気もしますね。ポリフォニックで鳴らす向きかな? 他との比較では、Vitalより自然で柔らかく(寝ぼけた音とも言う)、Surgeより抜けが良い(存在感が薄いとも言う)感触があります。
(細かい文句を言うと、ハードシンクにエイリアシングノイズが乗っているような気がするので、実装の仕方がまずいのかもしれない(正式版で試したことはないので今はどうかわからない))
4.使い勝手など
フリープラグインには珍しく、GUIは相当優秀な部類だと思われます。
マスターボリュームつまみが左下にあるのはちょっと戸惑いますが、カラースキームは概ね適切だと思いますし、信号の流れがわかりやすいようラインが施してあるなどの工夫もあり、非常に分かりやすい。アニメーションが欲しいとか、出力音量メーターが欲しいとか、ぜいたくを言えばきりがないですが、それらは他の大概のフリーシンセにも付いていませんから文句はありません。
オシレーター・モジュールやフィルター・モジュールのデザインも秀逸で、ガジェット感があり楽しめます。また、途中でオシレーターの種類を変えたとしても、以前のオシレーターでのセッティングはすべて内部に保持されているので元に戻すことが可能です。地味に助かる。
また、地味ではありますが、フィルターの種類を色々変えても全体の音量はほとんど変わらない点も好印象です。フィルターのタイプを変えるたびに音量を微調整するのってなかなか煩わしいです。
プリセット管理に関しては、
バグ・安定性に関しては現状ノーコメントです。なにせベータ版であるため、モジュレーションマトリックスで特定の動作をすると必ずクラッシュするなど(環境によります)、実用に耐えられるか怪しい状態です。物好きでもなければ安定板を待つのが丸いでしょうね。安定性に関してですが、私の使用しているDAW(Waveform Free)はVST3インストゥルメントの挙動が不安定なので、VST2非対応のOdin 2の挙動も不安定です。VST3が安定して動く環境ならばOdin 2も動くと思います。
負荷はほどほどです。基本的にはSynth1の4~8倍程度に見えますが、凝ったパッド系の音色は相当後負荷になることがあります。
5.わたしの評価
おすすめ度:★★★★★★★★★☆(9/10)
色々総合してみても、今後定番or準定番フリーシンセの一つになる可能性が高いと思います(2020年11月以降はVitalの登場で精々『準定番』どまりになってしまいそうな気がしますが)。マニアックさよりも汎用性・実用性を重視した設計のOdin 2は、フリーシンセフリーク以外の人々にもきっと受け入れられるはずでしょう。多分。流行らなかったらごめん。つか日本のDTM界隈はフリーシンセへの感度が弱い印象があるんで分からないです。金出して買ったシンセは良いに決まってるもんね。
音の傾向的に趣味に合わない人もいるように思うので、まずは動画などで動いているところを見るのがよいと思います。
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