曲を作るのはだるいがシンセの音を作るのは楽しいので、そのことをアピールするためにこの記事を書いています。
星の数ほどあるといわれるフリーシンセのうち、触ったことのあるものに長々と感想文を書いていきます。今回はその第三弾です。
正直、シンセサイザーにこだわらずフリープラグイン全般に対象広げてもいいと思ってますが、もともとそんなに気力の続く方ではないので精々適当にやってこうと思いますね。
ということで今回はニッチだけど楽しいシンセサイザー二種をご紹介いたそうと思います。二者、だいぶ毛色が違いますがね。
Bazz::Murda FREE(DistoCore)
配布元:http://distocore.net/bazz_murda.html

今更ながら、この企画ではプラグインのGUIをある程度レタッチして掲載しているのですが、これって法的及び規約的にセーフなのでしょうか? 確かMusicRadarがプラグインのGUIにボカシ加工してた覚えがあるので大丈夫だと判断しているのですが……。
さて、このBazz::Murdaには他の多くのシンセサイザーにはあるコントロールがしばしば省略されています。一方、Bazz::Murdaならではの機能も数多く搭載されています。すなわち、Bazz::Murdaは、ガバキックとワブルベース専門のシンセサイザーなのです。ハードコア感満載の見た目からなんとなく察せますね。
……この手の目的特化系フリーシンセサイザーって、出音が細かったりして結局その専門分野でさえも実力を発揮できなかったりすることがままあります。ですが、Bazz::Murdaはそんな中では割と健闘している方かと思います。オシレーター部分は個人的に取り立てるようなこともない感じなんですが、全体的にはコンパクトな操作でそこそこの結果が得られるよう巧妙に設計されていると思います。
Bazz::MurdaにはFree版のほか、Proと銘打った有料版もあり、40ユーロの寄付のお礼として入手することができます。Free版でもなかなか使えますが、Pro版ではFree版の長所を伸ばすような秀逸な強化がなされるようですね。
1.概略
・ガバキック馬鹿一代
・歪み系キック・ワブルベースに特化したシンセサイザー(見た目に違わず!)
・まあまあそれっぽいハードコア・キックが簡単に作れる
・一応普通の音も出せる
・エフェクター部分だけ独立したDisto::FXもある
2.できることとできないこと
性質上、機能面はやや独特です。
オシレーターは3個。広義のウェーブテーブル系で、36種類の波形から選べます。波形のモーフィングや、手持ちの波形を読み込ませることはできません(有料版にアップグレードすると波形読み込みはできるようになります)。
また、オシレーター毎に個別のレゾナント・マルチモードフィルターとLFOが備えられ、LFOはオシレーターの音量・ピッチ・フィルターを変調できます。LFOの形状はサイン波、反転サイン波、サイン波の上半分、サイン波の下半分の4つから選択します。これもユニークですね。しかしせっかくキック用シンセサイザーなので、LFO位相の調整ができないのは惜しい気がします。なお、Bazz::MurdaのLFOはここ以外にはありません。
ほか、ADSRエンベロープで音量と(各オシレーターの)フィルターの時間変化を制御します。Durationつまみを使うと、エンベロープの全体的な長さを一括で変更できて便利です。しかし謎なのが、フィルターのエンベロープ適用量を変えるつまみが見当たらないことです。最初っからいい塩梅の適用量になっているのですが、これはこれ、で固定されているのでしょうか?
また独特のコントロールとして、ピッチエンベロープがあります。4つのつまみだけのシンプルなコントロールですが、様々な表情のキックを作るのには十分です。
一応FMもできて、私が読み取った限りでは、全体の出力でサイン波をFM変調するつまみが一個備えられています。大して目立ちませんが、役に立つときはあると思います(有料版ではFM機能が大幅に強化されるらしい)。
サイン波のサブベースと、キックのアタック音を追加する機能もあります。アタック音はワンノブですが、ノブの回し具合によって鳴らされるサンプルが異なるように聞こえます。……が、ここは正直中途半端というか、この程度の機能であれば、外部から普通にレイヤーしたほうが良い結果が得られる気がします。
Bazz::Murdaのエフェクトセクションは充実しています。全体にかかるレゾナント・マルチモードフィルター、リングモジュレーターとフェイザー、そしてパワフルなディストーションが備えられています。
フィルター、リングモジュレーター、フェイザーは割とミニマムな感じですが、必要なところを抑えているので使いやすいです。むしろ気が散らないという面では、小さいことはメリットかもしれません。
対照的に、ディストーションは結構多機能です。ガバキックの要の部分になると思うので、ここでのこだわりは嬉しいですね。ディストーションユニットには、ビットクラッシャー・ディストーション(狭義)・ダイナミックシェーパーが搭載されており、ディストーション(狭義)のカーブはマウスで描くこともできます。右クリックメニューからもいろいろ操作できる模様。プリセットも多数あり。どれも過激です。
省スペースの観点からか、ディストーション(狭義)とダイナミックシェーパーのカーブの表示領域が一体化されているため、やや初見殺し気味なのが注意点でしょうか。慣れれば普通に使えます。
3.音
先述のように、オシレーター出力を聞く限り割と普通というか、地味目な感じです。割と低音域から高音域までしっかり出てはいますが、太い音ではないです。しかし太くはないのですが、この出音に内蔵ディストーションを噛ませた時の歪み具合が割と心地よい。フィルターの効き方も過激すぎない分ディストーションの乗りが良いです。全体的にはまあまあ聞ける音になる気がしますね。『聞ける音』とか書いてますが、自分はハードコア門外漢の素人なので、その辺何の根拠もないです。
一回これを使って本気でガバキックを作ろうとしたことがあるのですが、その際にはアタックは外部で作り、Mazz::Murdaにはディケイ音に専念させました。あとは後段にEQなりサチュレーションなり噛ませればなんかなるんじゃないでしょうか? 知らんけど。
あとプリセットは128種類くらいありますが、キック以外はどこで使うのか謎です。私の耳にはどことなく浮足立ってるように聞こえるので。ワブルベース作るにももっと向いてるシンセがあると思う。
とりあえずいつものKVR One Synth Challengeのリンクを貼って責任逃れしておきます。
4.使い勝手など
GUIにはやや難解な部分や表記の省略があり、予め説明書を読み、暗黙の了解みたいなのを理解していないと使いにくく感じます。プリセットの切り替えが面倒に見えますが、実は右クリックで10個まとめて移動できることをさっき知ったので共有しておきます。
機能的には程よくまとめた感じ。マルチなシンセサイザーとして使うにはあまりに制約が多いのですが、いろいろなガバキックを素早く形にするという観点ではよく出来ている気がします。
バグは私の環境では現状見つかっていないです。とはいえ私のDAWはWaveform FreeというマイナーDAWなので、読者の皆さんの環境ではどうなのかわかりません。
なお動作は比較的軽快な部類だと思います。ガバキックを作るならば、後段に挿すエフェクト群の方が数倍重いでしょうね。
5.わたしの評価
おすすめ度:★★★★★★★☆☆☆(7/10)
一芸すらできないフリーシンセも多い中、こいつはしっかり一芸できるんですね。だって歪みキック系ジャンルに詳しい人(誰かは忘れた)が使ってるのを見たことがあるからです。でも一芸しかできない。それをどうとらえるかですね。
歪んだキックの音を聞くと幸せになれる方にはおすすめできると思います。低予算でガバキックを作るには最有力候補の一つといえるのでは?
SequencAir(Full bucket music)
配布元:https://www.fullbucket.de/music/vst.html

……さて。これはシンセサイザーといえるか怪しい代物です。というのも、その名が示す通り、SequencAirは『シンセサイザー付きステップシーケンサー』だからですね。
シンセサイザー部分は画面上の一列だけ。1VCO、1エンベロープ、LFOなしの超シンプルな構成。これをシンセサイザーと呼ぶのは、玩具菓子をラムネと呼ぶようなものではないでしょうか。
とはいえ、シンプルだけど奥が深いとはまさにこのこと。どちらかというとライブパフォーマンスや即興性の高い制作において、SequencAirはその真価を発揮します。多分。
1.概略
・どちらかというとシーケンサー
・おまけとして"crappy"な(作者談)シンセサイザー付き
・アナログシーケンサー特有の即興性をDAW上でも楽しめるのが最大の魅力
・シーケンサーなので外部音源にMIDIを出力できる(もちろんCCも!)
2.できることとできないこと
前述の通りシンセサイザー部はいたってシンプルです。VCOはもちろん一つですし、一つだけのエンベロープに存在するコントロールは"Decay"のみです。LFOなんてある訳ありません。
しかし、Velocityに反応してカットオフ周波数と音量を変えるコントロールが個別に用意されていることなど、シーケンサーから出力される信号を抑揚豊かに演奏できるよう工夫が随所に見られます。オシレーターにはノイズ波形も搭載されているのでパーカッション的なサウンドにも使えますし、フィルターは自己発振するのでタムタム風のシーケンスも鳴らせるかもしれません。この辺、作者の方の愛が伝わってきます。
さて本体のシーケンサー部ですが、まさに往年のアナログシーケンサー風のインターフェースが実装されており、ステップごとに摘みを回して音程からベロシティからゲートからMIDI CCから何から何まで調整していくわけです。
ピアノロールに慣れ親しんだDAWユーザーからすれば紛らわしいのですが、調性感のないランダムなシーケンスを作るにあたってこれほど手早いアプローチもなかなかありません。SequencAirでは、音の高さも、大きさも、長さも、あたかもシンセサイザーの摘みのように一つのパラメータとして扱われます。普段ピアノロールで曲を作る身として、この感覚は一回味わってみる価値があると思います。
また、ステップを『一個飛ばす』ことができたり、(必然的にポリリズムが生まれます)各ステップをランダムな順番で再生させられたりするのも独特です。KorgのSQ-1みたいなのが好きな人にはたまらないでしょう。ハードシンセにつなぐ使い方も面白いと思いますね。
なお、シーケンサーはMIDI入力で再生・停止・トランスポーズさせることも可能です。現代的なシーケンサーとしても活用できますね。ビルトインシーケンサーが貧弱なシンセであっても、SequencAirを使えばやりたい放題できます。
3.音
おまけ程度のシンセサイザーではありますが、その音質に妥協はありません。
1VCOかつモノフォニックでも音が際立つよう、オシレーターもフィルターも結構音が太く、粘りがあります。オシレーターはわかりませんが、フィルター特性のアグレッシブさはFull bucket music随一ではないかと。本物のMS-20には遠く及びませんがね。
本物のアナログと見まがうような音、というほどではありませんが、しかし……シンセサイザー単品でも欲しくなってしまうのは私だけでしょうか……?
4.使い勝手など
操作性は概ね良いと思います。アナログ風シーケンサーというものに慣れていないと戸惑ったりしますが、ソフトウェアの趣旨的には大きな問題ではないと思います。ただ、パターンをつなげたりして一つの長いパターンを本格的に作り始めるとなると、視認性の微妙さが気になるかもしれません。
Full bucket musicのプラグインは往々にして、こうした昔ながらの不便さを敢えて残す傾向にあります。扱いにくくはないのですが、総じて慣れは必要になってきます。ノブは丸形より矢羽根型の方が見やすかったなあ……見た目ダサくなるけど。
動作は私の環境では安定しています。また、Full bucket musicは個人による非商用ソフトベンダーとしてはバグ修正が非常に素早い部類であるため、その点も安心できます。
動作も非常に軽快です(Synth1より軽い)。というかこれより軽いシンセサイザーを探す方が大変です(私が軽~く調査した中では唯一JuceOPLVSTi(往年のFM音源チップを再現)だけがSequencAirよりCPU使用率が低いようでした)。
5.わたしの評価
おすすめ度:★★★★★★☆☆☆☆(6/10)
概ね良いプラグインじゃないかと思います。シーケンサーも独特の楽しさがありますしね。
ただどうしても用途は限られてくるでしょうね。制作にシーケンサーを取り入れるかどうかはかなり人による部分が大きいと思い、おすすめ度はそれほど高くしませんでした。
ただ、シーケンサーについてちっとも興味なかった私でも割と楽しめたので、やっぱりポテンシャルはあるのかもしれませんね。
(2020-06-03: おすすめ度を7から6に修正。さすがにこれはシーケンサーが本体なので。シーケンサーとしては良いプラグインだと思う)
星の数ほどあるといわれるフリーシンセのうち、触ったことのあるものに長々と感想文を書いていきます。今回はその第三弾です。
正直、シンセサイザーにこだわらずフリープラグイン全般に対象広げてもいいと思ってますが、もともとそんなに気力の続く方ではないので精々適当にやってこうと思いますね。
ということで今回はニッチだけど楽しいシンセサイザー二種をご紹介いたそうと思います。二者、だいぶ毛色が違いますがね。
Bazz::Murda FREE(DistoCore)
配布元:http://distocore.net/bazz_murda.html

今更ながら、この企画ではプラグインのGUIをある程度レタッチして掲載しているのですが、これって法的及び規約的にセーフなのでしょうか? 確かMusicRadarがプラグインのGUIにボカシ加工してた覚えがあるので大丈夫だと判断しているのですが……。
さて、このBazz::Murdaには他の多くのシンセサイザーにはあるコントロールがしばしば省略されています。一方、Bazz::Murdaならではの機能も数多く搭載されています。すなわち、Bazz::Murdaは、ガバキックとワブルベース専門のシンセサイザーなのです。ハードコア感満載の見た目からなんとなく察せますね。
……この手の目的特化系フリーシンセサイザーって、出音が細かったりして結局その専門分野でさえも実力を発揮できなかったりすることがままあります。ですが、Bazz::Murdaはそんな中では割と健闘している方かと思います。オシレーター部分は個人的に取り立てるようなこともない感じなんですが、全体的にはコンパクトな操作でそこそこの結果が得られるよう巧妙に設計されていると思います。
Bazz::MurdaにはFree版のほか、Proと銘打った有料版もあり、40ユーロの寄付のお礼として入手することができます。Free版でもなかなか使えますが、Pro版ではFree版の長所を伸ばすような秀逸な強化がなされるようですね。
1.概略
・ガバキック馬鹿一代
・歪み系キック・ワブルベースに特化したシンセサイザー(見た目に違わず!)
・まあまあそれっぽいハードコア・キックが簡単に作れる
・一応普通の音も出せる
・エフェクター部分だけ独立したDisto::FXもある
2.できることとできないこと
性質上、機能面はやや独特です。
オシレーターは3個。広義のウェーブテーブル系で、36種類の波形から選べます。波形のモーフィングや、手持ちの波形を読み込ませることはできません(有料版にアップグレードすると波形読み込みはできるようになります)。
また、オシレーター毎に個別のレゾナント・マルチモードフィルターとLFOが備えられ、LFOはオシレーターの音量・ピッチ・フィルターを変調できます。LFOの形状はサイン波、反転サイン波、サイン波の上半分、サイン波の下半分の4つから選択します。これもユニークですね。しかしせっかくキック用シンセサイザーなので、LFO位相の調整ができないのは惜しい気がします。なお、Bazz::MurdaのLFOはここ以外にはありません。
ほか、ADSRエンベロープで音量と(各オシレーターの)フィルターの時間変化を制御します。Durationつまみを使うと、エンベロープの全体的な長さを一括で変更できて便利です。しかし謎なのが、フィルターのエンベロープ適用量を変えるつまみが見当たらないことです。最初っからいい塩梅の適用量になっているのですが、これはこれ、で固定されているのでしょうか?
また独特のコントロールとして、ピッチエンベロープがあります。4つのつまみだけのシンプルなコントロールですが、様々な表情のキックを作るのには十分です。
一応FMもできて、私が読み取った限りでは、全体の出力でサイン波をFM変調するつまみが一個備えられています。大して目立ちませんが、役に立つときはあると思います(有料版ではFM機能が大幅に強化されるらしい)。
サイン波のサブベースと、キックのアタック音を追加する機能もあります。アタック音はワンノブですが、ノブの回し具合によって鳴らされるサンプルが異なるように聞こえます。……が、ここは正直中途半端というか、この程度の機能であれば、外部から普通にレイヤーしたほうが良い結果が得られる気がします。
Bazz::Murdaのエフェクトセクションは充実しています。全体にかかるレゾナント・マルチモードフィルター、リングモジュレーターとフェイザー、そしてパワフルなディストーションが備えられています。
フィルター、リングモジュレーター、フェイザーは割とミニマムな感じですが、必要なところを抑えているので使いやすいです。むしろ気が散らないという面では、小さいことはメリットかもしれません。
対照的に、ディストーションは結構多機能です。ガバキックの要の部分になると思うので、ここでのこだわりは嬉しいですね。ディストーションユニットには、ビットクラッシャー・ディストーション(狭義)・ダイナミックシェーパーが搭載されており、ディストーション(狭義)のカーブはマウスで描くこともできます。右クリックメニューからもいろいろ操作できる模様。プリセットも多数あり。どれも過激です。
省スペースの観点からか、ディストーション(狭義)とダイナミックシェーパーのカーブの表示領域が一体化されているため、やや初見殺し気味なのが注意点でしょうか。慣れれば普通に使えます。
3.音
先述のように、オシレーター出力を聞く限り割と普通というか、地味目な感じです。割と低音域から高音域までしっかり出てはいますが、太い音ではないです。しかし太くはないのですが、この出音に内蔵ディストーションを噛ませた時の歪み具合が割と心地よい。フィルターの効き方も過激すぎない分ディストーションの乗りが良いです。全体的にはまあまあ聞ける音になる気がしますね。『聞ける音』とか書いてますが、自分はハードコア門外漢の素人なので、その辺何の根拠もないです。
一回これを使って本気でガバキックを作ろうとしたことがあるのですが、その際にはアタックは外部で作り、Mazz::Murdaにはディケイ音に専念させました。あとは後段にEQなりサチュレーションなり噛ませればなんかなるんじゃないでしょうか? 知らんけど。
あとプリセットは128種類くらいありますが、キック以外はどこで使うのか謎です。私の耳にはどことなく浮足立ってるように聞こえるので。ワブルベース作るにももっと向いてるシンセがあると思う。
とりあえずいつものKVR One Synth Challengeのリンクを貼って責任逃れしておきます。
4.使い勝手など
GUIにはやや難解な部分や表記の省略があり、予め説明書を読み、暗黙の了解みたいなのを理解していないと使いにくく感じます。プリセットの切り替えが面倒に見えますが、実は右クリックで10個まとめて移動できることをさっき知ったので共有しておきます。
機能的には程よくまとめた感じ。マルチなシンセサイザーとして使うにはあまりに制約が多いのですが、いろいろなガバキックを素早く形にするという観点ではよく出来ている気がします。
バグは私の環境では現状見つかっていないです。とはいえ私のDAWはWaveform FreeというマイナーDAWなので、読者の皆さんの環境ではどうなのかわかりません。
なお動作は比較的軽快な部類だと思います。ガバキックを作るならば、後段に挿すエフェクト群の方が数倍重いでしょうね。
5.わたしの評価
おすすめ度:★★★★★★★☆☆☆(7/10)
一芸すらできないフリーシンセも多い中、こいつはしっかり一芸できるんですね。だって歪みキック系ジャンルに詳しい人(誰かは忘れた)が使ってるのを見たことがあるからです。でも一芸しかできない。それをどうとらえるかですね。
歪んだキックの音を聞くと幸せになれる方にはおすすめできると思います。低予算でガバキックを作るには最有力候補の一つといえるのでは?
SequencAir(Full bucket music)
配布元:https://www.fullbucket.de/music/vst.html

……さて。これはシンセサイザーといえるか怪しい代物です。というのも、その名が示す通り、SequencAirは『シンセサイザー付きステップシーケンサー』だからですね。
シンセサイザー部分は画面上の一列だけ。1VCO、1エンベロープ、LFOなしの超シンプルな構成。これをシンセサイザーと呼ぶのは、玩具菓子をラムネと呼ぶようなものではないでしょうか。
とはいえ、シンプルだけど奥が深いとはまさにこのこと。どちらかというとライブパフォーマンスや即興性の高い制作において、SequencAirはその真価を発揮します。多分。
1.概略
・どちらかというとシーケンサー
・おまけとして"crappy"な(作者談)シンセサイザー付き
・アナログシーケンサー特有の即興性をDAW上でも楽しめるのが最大の魅力
・シーケンサーなので外部音源にMIDIを出力できる(もちろんCCも!)
2.できることとできないこと
前述の通りシンセサイザー部はいたってシンプルです。VCOはもちろん一つですし、一つだけのエンベロープに存在するコントロールは"Decay"のみです。LFOなんてある訳ありません。
しかし、Velocityに反応してカットオフ周波数と音量を変えるコントロールが個別に用意されていることなど、シーケンサーから出力される信号を抑揚豊かに演奏できるよう工夫が随所に見られます。オシレーターにはノイズ波形も搭載されているのでパーカッション的なサウンドにも使えますし、フィルターは自己発振するのでタムタム風のシーケンスも鳴らせるかもしれません。この辺、作者の方の愛が伝わってきます。
さて本体のシーケンサー部ですが、まさに往年のアナログシーケンサー風のインターフェースが実装されており、ステップごとに摘みを回して音程からベロシティからゲートからMIDI CCから何から何まで調整していくわけです。
ピアノロールに慣れ親しんだDAWユーザーからすれば紛らわしいのですが、調性感のないランダムなシーケンスを作るにあたってこれほど手早いアプローチもなかなかありません。SequencAirでは、音の高さも、大きさも、長さも、あたかもシンセサイザーの摘みのように一つのパラメータとして扱われます。普段ピアノロールで曲を作る身として、この感覚は一回味わってみる価値があると思います。
また、ステップを『一個飛ばす』ことができたり、(必然的にポリリズムが生まれます)各ステップをランダムな順番で再生させられたりするのも独特です。KorgのSQ-1みたいなのが好きな人にはたまらないでしょう。ハードシンセにつなぐ使い方も面白いと思いますね。
なお、シーケンサーはMIDI入力で再生・停止・トランスポーズさせることも可能です。現代的なシーケンサーとしても活用できますね。ビルトインシーケンサーが貧弱なシンセであっても、SequencAirを使えばやりたい放題できます。
3.音
おまけ程度のシンセサイザーではありますが、その音質に妥協はありません。
1VCOかつモノフォニックでも音が際立つよう、オシレーターもフィルターも結構音が太く、粘りがあります。オシレーターはわかりませんが、フィルター特性のアグレッシブさはFull bucket music随一ではないかと。本物のMS-20には遠く及びませんがね。
本物のアナログと見まがうような音、というほどではありませんが、しかし……シンセサイザー単品でも欲しくなってしまうのは私だけでしょうか……?
4.使い勝手など
操作性は概ね良いと思います。アナログ風シーケンサーというものに慣れていないと戸惑ったりしますが、ソフトウェアの趣旨的には大きな問題ではないと思います。ただ、パターンをつなげたりして一つの長いパターンを本格的に作り始めるとなると、視認性の微妙さが気になるかもしれません。
Full bucket musicのプラグインは往々にして、こうした昔ながらの不便さを敢えて残す傾向にあります。扱いにくくはないのですが、総じて慣れは必要になってきます。ノブは丸形より矢羽根型の方が見やすかったなあ……見た目ダサくなるけど。
動作は私の環境では安定しています。また、Full bucket musicは個人による非商用ソフトベンダーとしてはバグ修正が非常に素早い部類であるため、その点も安心できます。
動作も非常に軽快です(Synth1より軽い)。というかこれより軽いシンセサイザーを探す方が大変です(私が軽~く調査した中では唯一JuceOPLVSTi(往年のFM音源チップを再現)だけがSequencAirよりCPU使用率が低いようでした)。
5.わたしの評価
おすすめ度:★★★★★★☆☆☆☆(6/10)
概ね良いプラグインじゃないかと思います。シーケンサーも独特の楽しさがありますしね。
ただどうしても用途は限られてくるでしょうね。制作にシーケンサーを取り入れるかどうかはかなり人による部分が大きいと思い、おすすめ度はそれほど高くしませんでした。
ただ、シーケンサーについてちっとも興味なかった私でも割と楽しめたので、やっぱりポテンシャルはあるのかもしれませんね。
(2020-06-03: おすすめ度を7から6に修正。さすがにこれはシーケンサーが本体なので。シーケンサーとしては良いプラグインだと思う)
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