さっき(2020-07-30)気が付いたのですが、この記事Googleで『bx_oberhausen』と検索するとかなり上位に出てきてますね……。素人の感想記事がここまで上位に来られると流石に申し訳なさの方が勝るんで、とりあえずタイトルを少し「素人っぽい」文体に変えさせていただきました。
bx_oberhausen

 つまみの数はこんなもんです。まースッキリしてますね。
 
 安くなってたので買ってしまいました。バウチャー切ってbx_DynEQ v2とのセットで$51でした。1個あたり$29切ってるのはやっぱり安いのでは? (202006-19追記:バウチャー切って$20のセールが出たようです。Plugin Allianceだもんね。仕方ないね。)
 てことで久々の(そうでもない)商用シンセなのでおじさん張り切っちゃうぞー。

0. もくじ
 1. おーばーびゅー
 2. どういうシンセか
 3. 好きなところ
 4. 気になるところ
 5. 総評


1. おーばーびゅー
 ・シンプルなヴァーチャルアナログシンセ
 ・よい音
 ・実機再現に特化しつつ汎用性も考慮
 ・負荷は高い



2  どういうシンセか
 bx_oberhausenは見てのごとく、実機再現系のシンセサイザーです。
 一部界隈でネーミングがダサいと叩かれていますが、まあかの有名なOberheimのSEMの再現ですね(SEMはモノフォニックですがこのbx_oberhausenはちゃんとポリです)。ちなみにオーバーハウゼンはドイツの工業都市で人口は20万ほど。ドイツ指折りの巨額の負債を抱える都市として有名です。

 Oberheim SEMは1974年生まれのシンセサイザーで、12db/octのマルチモードフィルター(ローパスフィルター・ノッチフィルター・ハイパスフィルターをシームレスに統合したもの)という特徴的な装備を抱えていました。これは当時メジャーだったMoog族やARP族のシンセに付随して使うことを意識したものだとか。有名な青と黒のOB-Xaとはフィルターが異なるため音の印象は幾分異なります(私はSEMの方が好きです)。

 ほかのヴィンテージ再現系プラグインの例にもれず、機能は極めてシンプルです。もともとの実機SEM自体あくまで『付随品』として設計されたものでもありますしね。とはいえOSC Syncや実機に存在しないFMや2つ目のLFOなどもあり、音作りの幅が狭いことはありません。全体的には有名なフリーシンセSynth1と近しいイメージです。要するに高そうな音が出るSynth1ですね(いい加減すぎるたとえ)。


3. 好きなところ

 ズバリ出音です。

 というかこのシンセ自体、「音が気に入ったら買い、気に入らなかったら買わない」というコンセプトが明確な感じがします。ということで公式のデモへのリンクを。たぶんこの製品の魅力を一番雄弁に語るのはサウンドデモです。

 やっぱり本物のアナログとは多少違うところもある(低音の暴れ感、芯の柔らかさなど)のは認めざるを得ませんが、それでもアナログシンセサイザー特有の良い点が出てる感があります。微妙な揺らぎや倍音成分のふくよかさとか、ほかのソフトシンセにはなかなか出せないのでは? 個人的にはDivaと並べてよいくらいの再現度だと思います。まあ文句なし。持ってると自慢できるレベルの出音の良さですよ。個人の感想ですが。
 (20200326追記:あれからSEMの実機を扱った動画をいくつか視聴したのですが、フィルターのレゾナンスを12時くらいまで上げた時の、陶磁器が触れ合うような『カラン』とした涼やかな音が見事に再現されているようでした。ほんとだよ。他と比べてみるとほんとにいいんだよ)

 また、群雄割拠するアナログ再現系ソフトシンセの中、bx_oberhausenならではの長所として考えられるのが、それほど音が暑苦しくないという点です。
 The LegendもReproも非常に良い音がしますが、サチュレーションがガッツリ掛かったような味の濃さみたいなのがあるため場所を選びます(実機がそうだからですね)。一方bx_oberhausenは太くても透明感がありシルキーな音で、とりあえずbx_oberhausenを起動してしまえばまあまあまとまる感があるんですね。
 この辺は元になったハードウェアの特性に依存するところなのでしょうが、現代っぽい需要にも根差した設計になっているのは強みだと思います。結局は「ジャンルによって使い分けようね」って話なんですが。

 そのほか、FMの追加も楽しいですね。Synth1で微かにFMをかけた時の「シワシワ」した感じが好きだったので、これにも付いているのは単純にうれしいです。
 モジュレーションマトリクスがしっかり付いている辺りも好印象。アナログ再現系のシンセはモジュレーション回りが貧弱なことが多く勿体ないです。MIDI Velocityをソースに指定できるのでBMS制作にも役立ちます。

 謎の「TMT」なる機能も悪くないです。もともとオリジナルのSEMは、単一モジュールを複数(4音ポリなら4台)組み合わせてポリフォニックを実現していたのですが、その際に発生する微妙なパラメーターのずれを再現するための機能ですね。ボイスごとにチューニング、フィルター、LFO1の速度がバラバラになります。LFOにPWMをアサインして和音を弾くと「なるほど」という感じ。逆にTMTをオンにするとまとまりが悪くなることもあり、要は使いどころによる感じですね。けっして万能ではないです。
 内蔵エフェクトにはPlugin Allianceお得意の『AIR BAND』がついています。高域を自然にブーストすることに特化したEQですね。もともとbx_oberhausen自体綺麗な高域が特徴のシンセですのでよくマッチしていると思います。とはいえKVRなどでは「耳に刺さる」「アナログの良さを消す」と批判的な意見もみられるのでこれも使いどころでしょうね。


4. 気になるところ
 負荷は高いです(お約束)。CPU単独に5万以上かけてる人以外は一回デモを導入したほうがいいと思います。
 bx_oberhausenはマルチスレッドに対応していないので、当方の環境(Core i7 3630QM)では16音同時に出すのはかなり厳しいです。一応32音ポリまで対応はしていますが、32音同時にリアルタイム出力できるCPUは一般向けには存在しないのでは? 確かにCPUの性能は右肩上がりではありますが、昨今の性能向上はその大部分をコア数の拡大に依っている部分が多く……。(2024年追記: Core i5 13500にて32音同時発音できました。半導体技術が追い付いてきたようです)
 特にエントリークラスのCPUでDTMをしている方は毎回のようにバウンスが必要になってくるかもしれません。ちなみにこれでもマルチスレッド機能を切ったRepro-5よりは軽いです(デモを落として調べた)。
 
 あと機能的にも特有の制約はあります。
 マイクロチューニング非対応なのは置いておくとして、エンベロープが独特なADS式(ディケイとリリースが共用)なので若干作れる音の幅が狭まります。良くも悪くも、全体的におおらかな雰囲気になりますね。
 最近のアナログ再現系シンセでは珍しいことに、オシレーターのいわゆる『Pitch Drift』機能もありません。ピッチは常に一定です。最初は大きな欠点のように思いましたが、別にピッチが揺らがなくてもしっかりアナログサウンドだったので気にならなくなりました。小細工は不要ということでしょうか。
 フィルターのキートラッキングも搭載されていません。モジュレーションマトリックスにそれっぽい項目はありますが、変化の仕方が音程に沿っていないので『キートラッキングとしては』使えません。もともとSEMのフィルターが自己発振しないため省かれたのだと思われますが、エレピ系の音を作るのに欲しかったなあ。まあなくてもなんとかなるレベルなので大きな問題ではないです。
 ほか、内蔵エフェクターのうちディストーション『Metal 666』はオーバーサンプリングに対応しておらず、エイリアシングでアナログサウンドが台無しになります。個人的にはAIR BANDよりもこっちが批判されるべきな気がしますが……。リバーブも合うんだか合わないんだかよくわからん感じです。
 ベンダーの方針的に、これから新機能が追加されるかはまあまあ怪しいので機能的には現状で完成ということでしょう。


5. 総評
 ま、人を選ぶシンセというのに尽きると思います。
 ・アナログシンセの音が好き
 ・Oberheim特有の2ポール・マルチモードフィルターの音が好き
 ・自宅のPCが高スペック

 の3点中2点当てはまるならば自信をもってお勧めできます。1台目に買うようなシンセではありませんが、3台目くらいに買う分には理想的でしょうかね。
 品質は間違いないですので(なぜなら馬鹿耳の私以外も高く評価してそうに見受けられるので)、大規模セール時を狙って買えばお得感があるでしょう。高品質なアナログ再現系製品の中では最も安く手に入る可能性があります。普段の定価($249)は盛りすぎな気もしますが。
 気になる点として、アマチュアが質を絶賛する割に、プロがbx_oberhausenを使っている様子が見られないんですよね。しょせん素人の好みなのか、あるいは高すぎる定価が原因なのか……。

 いずれにせよ、私の好みや制作スタイルにはバッチリ合っているようなのでこれからも使い倒していこうと思います。やっぱり買い物は楽しいですね。次こそ最安値で買ってやる