曲を作るのはだるいがシンセの音を作るのは楽しいので、そのことをアピールするためにこの記事を書いています。
星の数ほどあるといわれるフリーシンセのうち、触ったことのあるものに長々と感想文を書いていきます。
その実態は http://ry.ldblog.jp/archives/2821647.html の大幅加筆修正版。それなりに分量を多くしたいので、一度に扱うプラグインの数を減らし、2~3個につき一記事としようと思います。
てことで初回は2020年最もアツい(個人の感想です)こいつから……。
Surge (Vember Audio + オープンソース)

いきなり大本命ですね。スルゲ。
2005年に商用ソフトウェアとして販売されていましたがディスコン。ところがそこで闇に葬られることなく、オープンソースのフリーソフトとして復活。今なお熱心に開発が続けられています。SynthMasterもこれくらい頻繁に更新してくれたら……。
さて、こいつはデジタル・ビューティーを自ら称する多機能シンセサイザー。ビューティーですってよ奥さん。あらやだわ。なんとなくヨーロッパっぽい(偏見)ポップなUIが印象的です。
2021-01-26追記: この記事のほとんどはv1.6.6時点の情報に基づいて書かれています。現在のv1.8ではアナログモデルのフィルターとMSEGなど多くの機能が追加されています。
1.概略
・フリー唯一の『万能シンセサイザー』か?
・フリーシンセサイザーの中では突出して多機能
・ウェーブテーブル、FM、ヴァーチャルアナログという三つの顔
・LFOが12個ある
・エフェクト部分が独立したプラグインとして使用可能
・よくわからんがとりあえずデジタル・ビューティー!
2.できることとできないこと
フリーでは珍しく、できることの方が多いと思われます。
先述した通り、完全にウェーブテーブル対応なのがすごい。当然、ウェーブテーブル対応ということなので出せる音の幅はかなり広いです。
Wavファイルから直接取り込めるし、専用形式に変換することもできる。そうして用意されたウェーブテーブルは(多くの人が期待するように)きちんと滑らかに補完されます。これができるフリーシンセはほかにVitalとWhispAirとFathom Monoくらい?
まあフリーシンセで本格的にウェーブテーブルやるとすれば、私の知る限りこれかVitalなのかなあと。あとはWindowオシレーターなる新タイプのウェーブテーブルも装備しています。正直よくわからんが、選択肢が多いことは良いことでしょう。
ほか、FMまわりもしっかりしています。
オシレーターのモードをFMに切り替えるだけで独立したFMジェネレーターが使えますし(しかも楽音向けの『FM2』、FX向けの『FM3』と二種類が用意されている)、それとは別にオシレーター間のFMも使えるのでモダンなFMニーズにも応えることができるでしょう。LFOも512Hzまで出力できるので、場合によってはこちらもFMソースになるかもしれません。
フィルターはしっかり2基ついてます。しかも選べるタイプが多い。
一見9種類しかないように見えますが、それぞれのタイプには音のキャラクター(またはポール数)ごとにサブタイプが選択できるため、合計27種類から選ぶことになります。(2021年1月公開のv1.8以降、アナログ系のフィルターが大量に追加されています。OB-XdおよびOdin2のフィルターや、重いけど音がよいラダーフィルターも装備。種類ごとにサブタイプの数字の示す意味が異なるのでマニュアル要確認)Combフィルターやサンプル&ホールドなどユニークなものもあります。サンプル&ホールドフィルターなどはSurgeの個性にもなり得ますね。ファミコンっぽい質感。
SurgeのLFOは(ある意味)非常に強力です。
なにより12基もあります。使い切れる人いるのか? ボイス毎に適用される通常のLFOが6基、全体に適用されるSLFOが6基。SLFOのほうはエフェクトセクションやマスターボリュームさえも変調することができます。ちなみに、LFOからほかのLFOの速度を変調することもできます。GUIの構造上一見不可能なように見えますが、押すべきボタンを押せばちゃんとできるのでご安心を。下の画像のオレンジ色の下矢印がそれです。

LFOにはエンベロープも備え付けられていて、しかもDAHDSR方式のため始動タイミングが自由自在。また、LFOそのものを追加のエンベロープにしてしまうモードも用意されています。これ以上何を望むんだ?
……ただ、最近のシンセで流行ってる『すごい柔軟なステップシーケンサー』はさすがに無いです。まあ私は使わないんですが。(2021年1月公開のv1.8以降ならLFOをMSEGモードに切り替えるという手もあります)その代わり、シーケンサーをテンポ同期させないこともできるので音をメチャクチャにはできます。オシレーターピッチを変調すれば昔のポケモンの鳴き声みたいな音も出ます。
地味ですが、しっかりマクロコントロールも付いています。割と何でもできますね。後はヴェロシティカーブが設定できれば完璧です。
3.音
全体的に破綻の無い音だと思います。オシレーターまわりの音の変化が機敏で、楽しく音作りできました。デジタル・ビューティーの名に恥じず、エイリアシングノイズの発生は少なく、それでいて負荷も軽めです。
一方、流行のEDMサウンドを追いかける感じのシンセではないと思われます。
この辺疎いのでなんとも言えないのですが、少なくともプリセットには今風のサウンドは無く、ちょっとレトロだったり、良くも悪くも地味だったりするものが多いです。TechnoやRaveなど何か特定のジャンルにフィーチャーした感じでもなく、単体で聞くと「で?」となるサウンドも多い気もします。
また、ウェーブテーブルシンセといってもMassiveやSerumのようなイメージではないようで、収録されているウェーブテーブルもレトロ系(PPGなど)や生音系などに寄っています。――――とはいえ、世に出回っている大体のウェーブテーブルを追加できるのでこの辺は『育成』次第で化けるかもしれません。
ウェーブシェーパーしかり内部フィードバックしかり、全体的にハイ落ちになりやすい要素が多く、その辺を避けないとモゴモゴ言い出すのでちょっとコツがいるようです。内蔵エフェクターもなんとなく平凡な感じに聞こえます。
総じて、今風のサウンドも作れるハズですが、早さを求めるならEDM系シンセを使うことにはなりそう。自分で音作りをする前提ならば割とポテンシャルはあります。ローファイサウンドの方が似合う気はするけれど……。
どんな感じの出音なのかというのはこの辺でうかがい知ることができます。良くも悪くも、全体的に地味で、サウンドが洗練され切っていないところがあります。ドラムやサブベースに使うと圧のある音が出てくれたりはしますが。
2021-01-26追記: v1.8以降、アナログモデルのフィルターや、Cutoff Warpのような変態挙動をするフィルターが追加された関係で、Surge特有の暗めの出音を活かせる機会が増えた気がします。PPG Wave的なデジアナ混ぜた音がなんだかんだ一番得意そう。
最近登場したVitalは機能的にはSurge並みに高機能で、よりモダンなEDM系制作にフィーチャーされています(ただし無料で使うとプリセットが少ないです)。キャラ的にVitalとSurgeは割とすみわけが効きそうなので、興味があれば両方導入してみると良いと思います(ダークで芯が太いSurge、ソリッドで抜けが良いVital)。
4.使い勝手など
高機能なシンセな分最初はとっつきにくく感じますが、GUIの設計自体は割と素直です(個人の感想です)。複雑なパッチを作る際にクリック回数が増えすぎることもありません。贅沢を言えば、モジュレーションを一覧・微調整できるマトリックス画面が欲しかった気もします。ちゃんと使うならマニュアルには一度目を通しておくのが良いでしょう。
……ところで、オシレーターの波形によっては音の出だしに大きめのポップノイズが乗るのですが、これってどうやって対処すればいいんでしょう? エンベロープ側で対処しようとするとアタック真ん丸になっちゃいますよ。ウェーブテーブルのデータがおかしいんじゃないかと思うんですが……。
一応エフェクターのみ独立したプラグイン『Surge Effects Bank』も同梱されているのですが、正直秒速300回転するロータリースピーカーが欲しいとき以外に使うかというと微妙なような。リバーブもイマイチ決まらない感じなんですよね。Decayを60秒くらいまで取れるので超ロングリバーブというネタには使えそうだけど。
また、負荷が比較的軽量なのも特長で、「音はそこそこで軽い設定」と「音は良いけど重い設定」の使い分けを意識できるようになると、かなり使い勝手がよくなります。
5.わたしの評価
おすすめ度:★★★★★★★★★★(10/10)
なんかおすすめ度でも書いてレーティングした方がレビュー記事っぽくなると思ったので書きました。根拠はないです。
下手な商用シンセより全然使えるとは思いますし、実際制作でも使ってみていますが、手元に何でもできるシンセが何台もある状況ではわざわざ習得することは無かった気がします。音が地味ですしね。ただSurgeは独特のローファイ感が出せたり、マイクロチューニング対応だったりするのでそれなりに価値をみて構わないとは思います。何より触っていて楽しいというか、いくらでも触っていられますから。
先述したように、プラグインとしては更新ペースが相当早い部類なので、今後に期待できるかも。オープンソースゆえ、船頭多くして船山に上る状態になりそうな気もしますが、まあたまには山に登った船も悪くないってもんです。
Surge編、以上! フリーシンセ界指折りの大物だったので疲れた。
追記:2020/06/10 Surgeのおすすめ度が9となるとおすすめ度10に該当するプラグインがSynth1くらいになってしまうので、評価を9から10に上方修正しました
KS7000 (Krakli)
http://www.krakliplugins.co.uk/Plugins.aspx

まあ……いきなりマイナーにはなりましたね。はい。マイナーです。おそらく日本語でKS7000について記述したブログはここが最初でしょう。
SynthEdit製のヴァーチャルアナログです。本当は有名どころよりもこういうヤツの感想文を書いていた方が楽しいくらいなんです。
1.概略
・YAMAHA CS-80の再現らしきもの
・おそらくKrakli氏によるプラグインの中で64bit対応なのはこれとYAVA4のみ
・滑らかなサウンドが特徴
もう少し有名な同作者のArminator2の『いとこ』だそうです。Arminator2は一部界隈でそこそこの評価を得ているフリーVSTですが、Windows 32bitにしか対応していない点が最大の欠点です。このKS7000は64bit対応という点で、その『いとこ』に対するアドバンテージを提供します。が、Arminator2と比べるとだいぶ機能面などが削減されてはいます。
2.できることとできないこと
要するに、YAMAHA CS-80のようなことができます。
独立したVCO-VCF-VCAのパスを二系統と、エンベロープ付きのリングモジュレーターを組み合わせて音作りをしていく感じ。二系統あることを除けば基本シンプルな構造ですが、VCAセクションでサイン波を追加出来たりとちょっと芸があります。無論これはオリジナルCS-80譲りの機能なのですが。
VCFにはローパスフィルターとハイパスフィルターの二系統を装備し、同時に使うことができます。ただこれが曲者で、エンベロープでフィルターを動かすと、必ずローパスとハイパスが同時に動いてしまいます(この辺もCS-80譲りです)。この辺り、どうやら下のBRILLIANCEつまみで調整することになるようです。ちょっと独特のコントロールが多めですね。
モジュレーションは割とシンプルです。あまり凝ったことはできず、まさに昔ながらのアナログシンセサイザーといった趣。
3.音
CS-80と同じように、総じてふくよかで表現力豊かなキャラクターを継承しています。アナログの質感そのものというよりもアナログの雰囲気を楽しむ、といった趣の古き良きヴァーチャルアナログといえますね。この手のフリーシンセの有名どころであるFull Bucket Music製のプラグインと比較すると結構繊細な印象で、明確な個性があるので使いどころによっては輝きそう。サウンドキャラクターのおとなしさを活かしてレイヤーするのも面白そうです。
しかし内蔵エフェクターのリバーブとコーラスが地味にいい味出してますね。SynthEdit製フリーVSTの内蔵エフェクターとか正直あまり期待していなかっただけに、嬉しい誤算でした。無論こだわるなら外部エフェクターが必要になってきますが。
4.使い勝手など
操作性・視認性はフリーシンセとしては平均的です。
特別操作しにくいコントロールがあるわけではありません。ただ、見た目からなんとなく想像がつくように、このシンセの摘みの操作はややシビアです。特にADSR。一応Ctrl押しながらで微調整が可能なのは手心あるかな。あと……エフェクターの配置がバラバラなのは……作者の意図がよくわかりません。実機再現というわけでもないしなあ。とはいえ、操作性悪いシンセはもっと悪いので、KS7000程度なら不満なしか。
SynthEdit製の宿命として、軽さや安定性はやや劣ります。このKS7000はSynthEdit製の割には軽快に動作しますが、私の環境ではたまに音が出なくなる不具合があります。この辺『ご愛敬』で済むかどうかは微妙。
5.わたしの評価
おすすめ度:★★★★★★☆☆☆☆(6/10)
一言、「人による」といった感じでしょうかね。万人に勧めるものではないと思いますし、実際万人が使っているわけでもありません。
かといって、このKS7000独特の出音を他のメジャーなシンセサイザーでカヴァーできるかというと微妙なわけで、その辺に価値を見出す人が使うのでしょう。あとCS-80好きな人とか。
追記:2020/04/14 いろいろ鑑みた結果、おすすめ度を7から6に引き下げました。SurgeとKS7000の間に2段階の差しかないのも歪な気がしたので。
KS7000編、以上!
フリーシンセとはいえネタを探せば出てくるもんで。
追記:2020/06/10 おすすめ度の尺度にかんして、以下のようなニュアンスで考えています。
10: プラグイン集めに興味のない人にも面と向かって推奨できるレベル
9: フリーシンセを導入する際にまず候補にできるレベル
8: フリーシンセのバリエーションを増やす際にまず候補にできるレベル
7: 持ってると時々使ってみたくなるレベル
6: 持ってるといつか役に立ちそうなレベル
5: どちらかというとネタ要員として
4: 使おうと思えば使えるが……
3: ほとんどコレクター向き
2: やめとけ
1: 沼
現実問題、一部のジョークソフトを除いてほとんどのフリーシンセがおすすめ度4以上に属するとは思います。
星の数ほどあるといわれるフリーシンセのうち、触ったことのあるものに長々と感想文を書いていきます。
その実態は http://ry.ldblog.jp/archives/2821647.html の大幅加筆修正版。それなりに分量を多くしたいので、一度に扱うプラグインの数を減らし、2~3個につき一記事としようと思います。
てことで初回は2020年最もアツい(個人の感想です)こいつから……。
Surge (Vember Audio + オープンソース)

いきなり大本命ですね。スルゲ。
2005年に商用ソフトウェアとして販売されていましたがディスコン。ところがそこで闇に葬られることなく、オープンソースのフリーソフトとして復活。今なお熱心に開発が続けられています。
さて、こいつはデジタル・ビューティーを自ら称する多機能シンセサイザー。ビューティーですってよ奥さん。あらやだわ。なんとなくヨーロッパっぽい(偏見)ポップなUIが印象的です。
2021-01-26追記: この記事のほとんどはv1.6.6時点の情報に基づいて書かれています。現在のv1.8ではアナログモデルのフィルターとMSEGなど多くの機能が追加されています。
1.概略
・フリー唯一の『万能シンセサイザー』か?
・フリーシンセサイザーの中では突出して多機能
・ウェーブテーブル、FM、ヴァーチャルアナログという三つの顔
・LFOが12個ある
・エフェクト部分が独立したプラグインとして使用可能
・よくわからんがとりあえずデジタル・ビューティー!
2.できることとできないこと
フリーでは珍しく、できることの方が多いと思われます。
先述した通り、完全にウェーブテーブル対応なのがすごい。当然、ウェーブテーブル対応ということなので出せる音の幅はかなり広いです。
Wavファイルから直接取り込めるし、専用形式に変換することもできる。そうして用意されたウェーブテーブルは(多くの人が期待するように)きちんと滑らかに補完されます。これができるフリーシンセはほかにVitalとWhispAirとFathom Monoくらい?
まあフリーシンセで本格的にウェーブテーブルやるとすれば、私の知る限りこれかVitalなのかなあと。あとはWindowオシレーターなる新タイプのウェーブテーブルも装備しています。正直よくわからんが、選択肢が多いことは良いことでしょう。
ほか、FMまわりもしっかりしています。
オシレーターのモードをFMに切り替えるだけで独立したFMジェネレーターが使えますし(しかも楽音向けの『FM2』、FX向けの『FM3』と二種類が用意されている)、それとは別にオシレーター間のFMも使えるのでモダンなFMニーズにも応えることができるでしょう。LFOも512Hzまで出力できるので、場合によってはこちらもFMソースになるかもしれません。
フィルターはしっかり2基ついてます。しかも選べるタイプが多い。
SurgeのLFOは(ある意味)非常に強力です。
なにより12基もあります。使い切れる人いるのか? ボイス毎に適用される通常のLFOが6基、全体に適用されるSLFOが6基。SLFOのほうはエフェクトセクションやマスターボリュームさえも変調することができます。ちなみに、LFOからほかのLFOの速度を変調することもできます。GUIの構造上一見不可能なように見えますが、押すべきボタンを押せばちゃんとできるのでご安心を。下の画像のオレンジ色の下矢印がそれです。
LFOにはエンベロープも備え付けられていて、しかもDAHDSR方式のため始動タイミングが自由自在。また、LFOそのものを追加のエンベロープにしてしまうモードも用意されています。これ以上何を望むんだ?
……ただ、最近のシンセで流行ってる『すごい柔軟なステップシーケンサー』はさすがに無いです。まあ私は使わないんですが。(2021年1月公開のv1.8以降ならLFOをMSEGモードに切り替えるという手もあります)その代わり、シーケンサーをテンポ同期させないこともできるので音をメチャクチャにはできます。オシレーターピッチを変調すれば昔のポケモンの鳴き声みたいな音も出ます。
地味ですが、しっかりマクロコントロールも付いています。割と何でもできますね。後はヴェロシティカーブが設定できれば完璧です。
3.音
全体的に破綻の無い音だと思います。オシレーターまわりの音の変化が機敏で、楽しく音作りできました。デジタル・ビューティーの名に恥じず、エイリアシングノイズの発生は少なく、それでいて負荷も軽めです。
一方、流行のEDMサウンドを追いかける感じのシンセではないと思われます。
この辺疎いのでなんとも言えないのですが、少なくともプリセットには今風のサウンドは無く、ちょっとレトロだったり、良くも悪くも地味だったりするものが多いです。TechnoやRaveなど何か特定のジャンルにフィーチャーした感じでもなく、単体で聞くと「で?」となるサウンドも多い気もします。
また、ウェーブテーブルシンセといってもMassiveやSerumのようなイメージではないようで、収録されているウェーブテーブルもレトロ系(PPGなど)や生音系などに寄っています。――――とはいえ、世に出回っている大体のウェーブテーブルを追加できるのでこの辺は『育成』次第で化けるかもしれません。
ウェーブシェーパーしかり内部フィードバックしかり、全体的にハイ落ちになりやすい要素が多く、その辺を避けないとモゴモゴ言い出すのでちょっとコツがいるようです。内蔵エフェクターもなんとなく平凡な感じに聞こえます。
総じて、今風のサウンドも作れるハズですが、早さを求めるならEDM系シンセを使うことにはなりそう。自分で音作りをする前提ならば割とポテンシャルはあります。ローファイサウンドの方が似合う気はするけれど……。
どんな感じの出音なのかというのはこの辺でうかがい知ることができます。良くも悪くも、全体的に地味で、サウンドが洗練され切っていないところがあります。ドラムやサブベースに使うと圧のある音が出てくれたりはしますが。
2021-01-26追記: v1.8以降、アナログモデルのフィルターや、Cutoff Warpのような変態挙動をするフィルターが追加された関係で、Surge特有の暗めの出音を活かせる機会が増えた気がします。PPG Wave的なデジアナ混ぜた音がなんだかんだ一番得意そう。
最近登場したVitalは機能的にはSurge並みに高機能で、よりモダンなEDM系制作にフィーチャーされています(ただし無料で使うとプリセットが少ないです)。キャラ的にVitalとSurgeは割とすみわけが効きそうなので、興味があれば両方導入してみると良いと思います(ダークで芯が太いSurge、ソリッドで抜けが良いVital)。
4.使い勝手など
高機能なシンセな分最初はとっつきにくく感じますが、GUIの設計自体は割と素直です(個人の感想です)。複雑なパッチを作る際にクリック回数が増えすぎることもありません。贅沢を言えば、モジュレーションを一覧・微調整できるマトリックス画面が欲しかった気もします。ちゃんと使うならマニュアルには一度目を通しておくのが良いでしょう。
……ところで、オシレーターの波形によっては音の出だしに大きめのポップノイズが乗るのですが、これってどうやって対処すればいいんでしょう? エンベロープ側で対処しようとするとアタック真ん丸になっちゃいますよ。ウェーブテーブルのデータがおかしいんじゃないかと思うんですが……。
一応エフェクターのみ独立したプラグイン『Surge Effects Bank』も同梱されているのですが、正直秒速300回転するロータリースピーカーが欲しいとき以外に使うかというと微妙なような。リバーブもイマイチ決まらない感じなんですよね。Decayを60秒くらいまで取れるので超ロングリバーブというネタには使えそうだけど。
また、負荷が比較的軽量なのも特長で、「音はそこそこで軽い設定」と「音は良いけど重い設定」の使い分けを意識できるようになると、かなり使い勝手がよくなります。
5.わたしの評価
おすすめ度:★★★★★★★★★★(10/10)
なんかおすすめ度でも書いてレーティングした方がレビュー記事っぽくなると思ったので書きました。根拠はないです。
下手な商用シンセより全然使えるとは思いますし、実際制作でも使ってみていますが、手元に何でもできるシンセが何台もある状況ではわざわざ習得することは無かった気がします。音が地味ですしね。ただSurgeは独特のローファイ感が出せたり、マイクロチューニング対応だったりするのでそれなりに価値をみて構わないとは思います。何より触っていて楽しいというか、いくらでも触っていられますから。
先述したように、プラグインとしては更新ペースが相当早い部類なので、今後に期待できるかも。オープンソースゆえ、船頭多くして船山に上る状態になりそうな気もしますが、まあたまには山に登った船も悪くないってもんです。
Surge編、以上! フリーシンセ界指折りの大物だったので疲れた。
追記:2020/06/10 Surgeのおすすめ度が9となるとおすすめ度10に該当するプラグインがSynth1くらいになってしまうので、評価を9から10に上方修正しました
KS7000 (Krakli)
http://www.krakliplugins.co.uk/Plugins.aspx

まあ……いきなりマイナーにはなりましたね。はい。マイナーです。おそらく日本語でKS7000について記述したブログはここが最初でしょう。
SynthEdit製のヴァーチャルアナログです。本当は有名どころよりもこういうヤツの感想文を書いていた方が楽しいくらいなんです。
1.概略
・YAMAHA CS-80の再現らしきもの
・おそらくKrakli氏によるプラグインの中で64bit対応なのはこれとYAVA4のみ
・滑らかなサウンドが特徴
もう少し有名な同作者のArminator2の『いとこ』だそうです。Arminator2は一部界隈でそこそこの評価を得ているフリーVSTですが、Windows 32bitにしか対応していない点が最大の欠点です。このKS7000は64bit対応という点で、その『いとこ』に対するアドバンテージを提供します。が、Arminator2と比べるとだいぶ機能面などが削減されてはいます。
2.できることとできないこと
要するに、YAMAHA CS-80のようなことができます。
独立したVCO-VCF-VCAのパスを二系統と、エンベロープ付きのリングモジュレーターを組み合わせて音作りをしていく感じ。二系統あることを除けば基本シンプルな構造ですが、VCAセクションでサイン波を追加出来たりとちょっと芸があります。無論これはオリジナルCS-80譲りの機能なのですが。
VCFにはローパスフィルターとハイパスフィルターの二系統を装備し、同時に使うことができます。ただこれが曲者で、エンベロープでフィルターを動かすと、必ずローパスとハイパスが同時に動いてしまいます(この辺もCS-80譲りです)。この辺り、どうやら下のBRILLIANCEつまみで調整することになるようです。ちょっと独特のコントロールが多めですね。
モジュレーションは割とシンプルです。あまり凝ったことはできず、まさに昔ながらのアナログシンセサイザーといった趣。
3.音
CS-80と同じように、総じてふくよかで表現力豊かなキャラクターを継承しています。アナログの質感そのものというよりもアナログの雰囲気を楽しむ、といった趣の古き良きヴァーチャルアナログといえますね。この手のフリーシンセの有名どころであるFull Bucket Music製のプラグインと比較すると結構繊細な印象で、明確な個性があるので使いどころによっては輝きそう。サウンドキャラクターのおとなしさを活かしてレイヤーするのも面白そうです。
しかし内蔵エフェクターのリバーブとコーラスが地味にいい味出してますね。SynthEdit製フリーVSTの内蔵エフェクターとか正直あまり期待していなかっただけに、嬉しい誤算でした。無論こだわるなら外部エフェクターが必要になってきますが。
4.使い勝手など
操作性・視認性はフリーシンセとしては平均的です。
特別操作しにくいコントロールがあるわけではありません。ただ、見た目からなんとなく想像がつくように、このシンセの摘みの操作はややシビアです。特にADSR。一応Ctrl押しながらで微調整が可能なのは手心あるかな。あと……エフェクターの配置がバラバラなのは……作者の意図がよくわかりません。実機再現というわけでもないしなあ。とはいえ、操作性悪いシンセはもっと悪いので、KS7000程度なら不満なしか。
SynthEdit製の宿命として、軽さや安定性はやや劣ります。このKS7000はSynthEdit製の割には軽快に動作しますが、私の環境ではたまに音が出なくなる不具合があります。この辺『ご愛敬』で済むかどうかは微妙。
5.わたしの評価
おすすめ度:★★★★★★☆☆☆☆(6/10)
一言、「人による」といった感じでしょうかね。万人に勧めるものではないと思いますし、実際万人が使っているわけでもありません。
かといって、このKS7000独特の出音を他のメジャーなシンセサイザーでカヴァーできるかというと微妙なわけで、その辺に価値を見出す人が使うのでしょう。あとCS-80好きな人とか。
追記:2020/04/14 いろいろ鑑みた結果、おすすめ度を7から6に引き下げました。SurgeとKS7000の間に2段階の差しかないのも歪な気がしたので。
KS7000編、以上!
フリーシンセとはいえネタを探せば出てくるもんで。
追記:2020/06/10 おすすめ度の尺度にかんして、以下のようなニュアンスで考えています。
10: プラグイン集めに興味のない人にも面と向かって推奨できるレベル
9: フリーシンセを導入する際にまず候補にできるレベル
8: フリーシンセのバリエーションを増やす際にまず候補にできるレベル
7: 持ってると時々使ってみたくなるレベル
6: 持ってるといつか役に立ちそうなレベル
5: どちらかというとネタ要員として
4: 使おうと思えば使えるが……
3: ほとんどコレクター向き
2: やめとけ
1: 沼
現実問題、一部のジョークソフトを除いてほとんどのフリーシンセがおすすめ度4以上に属するとは思います。
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