KORG Collection 6を買いました。

買ってしまったんだから仕方がない。入っているすべての音源について一言ずつ書いていまして、製品数があまりにも多いので記事を3分割して書いてきましたが、今回でいよいよ最終回になります。

第1回はこちら(最近登場したプラグイン7点について書いています)


第2回はこちら(少し前に登場したプラグイン6点について書いています)


今回書くのは、長年KORGの定番プラグインとして君臨してきた以下の8製品です。
  • TRITON(ワークステーション)
  • ARP ODYSSEY (アナログシンセサイザー)
  • MS-20 V2(アナログシンセサイザー)
  • Polysix V2(アナログシンセサイザー)
  • Mono/Poly V2(アナログシンセサイザー)
  • M1 V2 (ワークステーション)
  • WAVESTATION V2(デジタルシンセサイザー)
  • MDE-X(マルチエフェクター)

CPU負荷について(再掲)

前回・前々回の記事でも上げた画像ですが、各製品のCPU負荷の目安は以下のような感じです。
シンセ系は音色を大体そろえています。
今回取り上げる製品の中では、ARP ODYSSEYがやや重めの負荷になっています。それ以外は低価格帯ノートPC程度でもおそらく動作するでしょう。
korgPluginCpuUsage

以下、各製品について一言感想を書きます。

各製品の感想文

TRITON -MUSIC WORKSTATION

1999年発売のワークステーションの名機を再現。

当時別売りだったエキスパンション音色もすべて入っています(ちなみにエキスパンションカードは今でもネットオークションで結構な値が付いてます。)。版権を持つKORGにしか出せない贅沢なソフトウェアといえるでしょう。

この時代のワークステーションの思想を模倣した音源っていくつか触りましたけど(SampleTankなど)、やっぱり本家のTRITONはセンスが良いと思いますね。マクロコントロールの使いやすさとか、プリセットの数とか(多すぎない、あまりにも似通ったプリセットとかがない)。

Prophecyにも同じことが言えるのですが、リボンコントローラなどにも結構、音色変化のギミックが割り当てられています。おかげでPCMシンセとは思えないほど高い表現力があるのですが、反面、それを打ち込んだりリアルタイムで演奏したりする難易度は高そうです。

音色のキャラクターとしては、M1やTRINITYと比べるとやや大人しめに感じます。わかりやすいレトロ感ではないが、現代のリアル感ともまた違う絶妙なバランスで、使い方次第では単に安っぽくなってしまうので一番センスが問われるところかもしれません。あとは往時のダンスミュージック的な音色も入っています。

DACの音質をエミュレートする機能もあり、(音色名が書いてある左下にある「Digital」と書いてある部分をクリック)ハードウェア風の太さをプラスすることができます。また「Classic」にすると低音寄りの音になります。

ARP ODYSSEY -DUOPHONIC SYNTHESIZER

ARPが1972年に発売したアナログシンセサイザーを再現。Minimoogとも対比される、モノフォニック時代を代表する名機といわれています。個人的には、ジャズにはMoogよりARPのほうが合う気がします。

ARP ODYSSEYは、信号の流れ順に並んでいる多くのアナログシンセと比べると変則的なパネルレイアウトをしています。特に「S&H Mixer」は、S&Hのソース信号になるだけではなく、オシレーターやフィルターをオーディオレートで変調するためのモジュレータも兼ねてたりで、かなり独特だと思います。ただ、変則的であっても煩雑ではないので、一度慣れてしまえば素早くオペレーションできるとは思います。

サウンド面では、KORG Collection初期のプラグイン(MS-20など)と比べてよりアナログ回路の挙動に忠実だと言われていますが、私は実機を触ったこともないのでいまいち違いが判りません。フィルターを全開にしたときの緊張感のあるサウンドはARP ODYSSEYに特有のキャラクターかなと思います。


機能面では、リイシュー版ODYSSEYと比べても、ポリになった以外は大胆な変更はありません。ただ、地味に追加されたアルペジエイターが、モーションシーケンサーも兼ねていて、それを絡めると結構凝ったシーケンスが作れるようになります。

個人的に気になるのが、GUIとかプリセットの並びとかがいまいち整理されていないこと。たとえば、アルペジエーターとかエフェクターとかって結構いじると思うのですが、デフォルトだと隠れてるパネル上にあるので操作が面倒なんですよね。また、プリセットブラウザはminiKORGと同じように、ジャンルごとにタグ付けできるようにしてほしかったです。同じKORG製のプラグインでもこの辺の操作系統が統一されていない。

またCPU負荷は高めです。登場した2017年当時では、ソフト音源の中ではかなり重い部類でした。

MS-20 -SEMI-MODULAR SYNTHESIZER

実機は1978年に発売された、アナログ時代のKORGを代表するシンセサイザーです。

このプラグインは元々KORG Legacy Collectionとして2004年に発売されたものを元に、UIやプリセットをリニューアルして2020年に再発売されたものです。名機?迷機?と名高いあのDS-10も、おそらくはこのLegacy CollectionのMS-20のエンジン流用じゃないかと思います。

古いからと言って決して音が悪いわけではなく、まぁ確かに実機ほどのワイルドさは不足している気はしますが、操作に対して鋭敏に音の表情を変えにいくあたりは、ソフトとして丁寧に作られていることが伝わってきます。

最近はArturiaから高精度なMS-20のエミュレーションが「KORGとの協力で」開発・販売されました。はっきり言ってKORG公式版よりも全然良い音です(開発年代が20年違うので当然といえば当然)。しかしながらKORG版にも結構よいプリセット(J-POPやVGMに通じる素直な音が多いです)が揃っていたりするので、エミュレーションの精度云々以上に「日本的な音楽」に重きを置くトラックメーカーであれば、あえてKORG版を使う動機も出てくるのかも、と感じました。CPU負荷も軽いですし。

Polysix -POLYPHONIC SYNTHESIZER

1981年発売のアナログシンセサイザーを再現。

オシレーター、LFO、エンベロープがそれぞれ1個ずつ、という、現代の基準では非常にシンプルな構成のシンセサイザーです。が、地味にフィルターが自己発振するので、これを第二のオシレーター代わりにすることで意外とクワイア系の音も作れるのが面白いところ(実機ではフィルターのキートラッキングが調律されてないので、同じことはできないそうです)。

また、Polysixを象徴する「アンサンブル」エフェクトがやっぱり特徴的で、簡単操作で非常に広がりのあるパッド音色が作れるようになっています。こういう簡単なシンセほど、奥が深い部分を発見する楽しみがありそう。

これも、サウンドエンジン部は2004年に発売された古いプラグインのままと言われますが、単純な構造のためか、音質に古さはあまり感じないです。

Mono/Poly -4VCO SYNTHESIZER

1981年発売(Polysixと同期)のアナログシンセサイザーを再現。KORG Legacy Collectionへのプラグイン化は2007年とのことです。

見た目はPolysixに似ているのですが、圧倒的に高機能なシンセサイザーです。4オシレーター構造を活かしたユニゾンだったり、Hard SyncとCross Modサウンドが特徴といえるでしょうか。さらに、プラグイン化にあたって、「Virtual Patch」(他社でいうモジュレーションマトリックス)機能が追加されて、小回りの良さも手にしています。

サウンドはもっぱら薄味です。実機も薄味な音っぽいですが、プラグイン版はそれ以上に薄味という感じ。

音色が軽めで、なおかつ音色変化幅が広いのは、個人的には脇役シンセとして理想的だと思うのですが、他プラグインとの使い分けは悩ましい。アナログ系の音色で固めている楽曲において、脇役もアナログシミュじゃないと嫌だ、という場面では、CPU負荷の軽さもあるので採用する動機が出てくるかもしれません。


M1 -MUSIC WORKSTATION

1988年発売のワークステーションを再現。プラグイン化は2005年。いまだにその革新性は衰えた感じがありません。

確かに古い音ですけど、KONTAKTの任意のライブラリーで代用できるかといえば全くそんなことはない。むしろ、後発のTRINITYやTRITONよりも、音色には強烈な個性があるといえます。M1をサンプリングした音源もありますが、柔軟性の面ではエミュレーション音源のほうが格段に優れていることに疑いの余地はありません。

プラグインとしても軽くて使いやすいですし、「こういう系統の音は全く使わない!」という人でなければ、割とマストハブに近いのではないでしょうか。本当に良いプラグインです。

WAVESTATION -WAVE SEQUENCE SYNTHSIZER

1990年発売のデジタルシンセサイザーを再現。

プラグインとしてのデビューは2004年、KORG Legacy Collectionの初期メンバーとしてMS-20とPolysixとともに登場しましたが、当時のソフトウェアシンセとしては、なかなかの豪速球ではないでしょうか……。

ウェーブシーケンス合成が著名ですが、実際はベクター合成機能もあるし収録は係数も膨大だし、とにかくやれることが多い。おまけに4レイヤー構造なので、非常に重厚なアンサンブルも可能です。当然マルチエフェクターも内蔵。プラグイン版は例のごとく、実機で別売りだったエキスパンションカードも完全収録済。

ただ、内部構造がとても複雑にもかかわらず、GUIの見通し性がよくないので、一から音作りをする気には正直なれません。これでも実機と比べればマシかもしれませんが。

また、WAVESTATIONは実機互換性を優先したためか、プリセット音色は「バンク単位で外部ファイルに保存」という非常に古典的な方法で保持するしかありません。これも内心しんどい。シンセサイザーとしてのポテンシャルは非常に高いと思うのですが、利用者による音作りがあまり想定されていなかった時代の慣例を随所に引きずっているように見えます。

一方で、WAVESTATION直系の子孫ともいえるwavestateはとても洗練されたGUIを持っています。WAVESTATIONのプリセット音色より、ウェーブシーケンスやベクター合成自体のほうに向き合いたいならば、wavestate nativeの方を買ったほうが良いと思います。

MDE-X -MULTI DIGITAL EFFECTS

マルチエフェクターです。TRITONの内蔵エフェクターをもとに、多少アレンジを加えたものと思われます。DistortionとFeedback Reverbは完全新作エフェクターらしい?

今時フリーでも良いエフェクターは良いですから、あえてこれを使う場面は多くなさそう、というのが第一印象です。ただ、MDE-XにはPolysix風のアンサンブルが入っているのと、リバーブやエキサイターにもKORGらしい個性があります。最近のエフェクターだと綺麗すぎて似合わない場面もあるでしょうし、「持ちネタ」の一つとして持っておいても良いのでは、と思いました。

KORG Collectionを通しての総評

KORG Collectionは当初はシンセサイザーのバンドルでしたが、近年は鍵盤楽器もラインナップに加わりました。歴史の長い製品なのでモデリングの精度&CPU負荷はプラグインごとにまちまちですが、そのことが却って各製品の住み分けに繋がり、バンドル全体の商品力向上にも繋がっていると思います。

比較対象としてはArturiaのV CollectionやRoland Cloudが上がると思いますが、KORG CollectionはM1やTRITONの拡張波形を「ぶっこ抜き」で全収録していますので、これはArturiaには絶対無理で、Rolandも現状の売り方では難しいであろう、KORGならではの強みかと思います。また、実売価格が比較的安いこともポイントです。

留意点として、当たり前ですがラインナップがKORGのキーボードに偏っていますので、あまり音源が揃ってない段階で初手で買うのはやや注意かもしれません。初心者の方ならTRITONをマルチ音源代わりにしたら使いやすそうですが、もう出る音が完全に00'sになってしまうので、そういう趣味でなければどこかで脱皮は必要になると思います。

KORG Collectionの不思議な点として、バンドルに含まれる製品数が徐々に増えていっている割に、価格があまり変わっていないのです。この調子だと、KORG Collection 7が登場してもしれっと同じ価格で並ぶんじゃないかな……。とはいえ、買い控えても何も前に進みませんので、セールを待つか、それか「KORGの音源を使うぞ」と計画が立ったタイミングを狙って買えると良いかと思います。