2025年のBFセール時に買った2つのソフトのうちの1つです(もう1つはDSM V3)。
2023年のBFセールの時に気になったのですが結局買わず、以降微妙に後悔し続けてきたため、今回仕方なく買った次第です。使う機会があるといいな!

ソフトの概要

Chipsynth SFCはPlogue社から発売されている、任天堂スーパーファミコンの音源チップSPC700、いわゆる「SFC音源」のエミュレーション音源です。同じコンセプトのフリーソフトにはC700が存在しますが、さすがにChipsynthの方が色々と親切設計にはなってます。

本製品は、一言でいえば「レトロなサンプラー」です。それも、MPCやSP-1200以上にLofiなサンプラーです。Chiptuneの文脈的には、いや正確には、などと色々注釈が入るわけですが。

個人的にスーパーファミコンには思い入れも何もないのですが、単純にスーパーファミコンの音はSP-1200に匹敵するくらい良いと思っていて、それが購入を決めた理由です。
※上記の私の理解には語弊があって、スーパーファミコンの音がよい理由の大半は、結局SPC700自体の味よりも、当時のエンジニアがサンプル自体を綿密に編集していた事によるものだと思われます。

好きな点1 機能が意外と豊富

正確なエミュレーションを謳っている製品でありながら、痒い所に手が届くというか、親切な機能が満載です。

1. ワンノブで音を「圧縮」するDecimつまみ
2. サンプルの補完アルゴリズムの変更機能
3. ステップシーケンサー(LFOにもなる)がなんと15個も搭載
4. サンプル間FM機能の存在
5. サンプルのループでクロスフェードが可能(実機ではできないが…)

実機で出せない音はなるべく出ないようになっているものの(サンプルのFMは実機でできるのかは不明)、音源部分を除けば、現代的なセミモジュラーシンセサイザーとそん色ないレベルの作り込みが出来るようになっています

これは持論ですが、単にレトロな音色を使うとか、あるいは実機の音源仕様を厳格に遵守するとか、そこだけでChiptune(Fakebitでもいいですけど)の面白さは表現できないと思っています。VGM的な面白い音を出すからには創意工夫ができる環境がほしいわけで、さすがPlogueはその辺の塩梅がよく出来ているなあと思わされます。

またレイヤリングが容易な構造のため、その気になればアタック部とサステイン部をまったく別の波形から出すことも可能です。そういう点では意外と音作りの幅はあると思います。

また、サンプル補完アルゴリズム(Interp)を変更することで、SFCらしすぎない音にも出来ます。たておば、補完をLinearにすると、GBAっぽい音になります(なんとなく音色が似ている、程度のいい加減な判定です)。古いゲーム機のPCMっぽい音であればまあ大体出せるので、SFCにそこまで強い拘りが無い場合でも役に立ってくれることでしょう。

好きな点2 付属サンプルが地味に優秀

地味な点ですが、付属するサンプルがどれも結構良いです。Sforzando用の流用が主だと思われますが、EQやループポイントの設定などが絶妙で、どれを選んでも簡単にレトロゲーム風味の音が鳴ります。また、地味に用意が難しいレトロな効果音サンプルも収録。

SFCっぽいサンプルを一から自作するとか正直やってられないので、付属サンプルの質の高さは、そのまま製品の使い勝手に直結します。

当時実際にスーパーファミコンから流れていた音と比べると少しリッチ過ぎる気もしなくもないですが、まあ現代の音楽制作で単波形みたいな音を鳴らしても面白くないですし、この辺も現代のさじ加減かなと。

気になった点 サンプルの編集機能がもっとあれば……

短所と言えるほどのものではありませんが、良くも悪くもサンプルの質に出音が依存するため、サンプル自体にEQとかを掛けられる機能が欲しかったです。

DAWで使う以上ミックスダウン時にEQをかける事も当然可能ですが、SFCの音というのはサンプル自体に的確なEQをかける事が雰囲気を出す肝らしいので、後付けのEQではSFCの音とはいえないと思うのですね。しかし当然ながら、事前にEQで調整したサンプルを用意するなどやり始めると、かなりの手間になるわけです。

Plogueを擁護するならば、確かにサンプル自体を編集できる機能は、プラグイン市場全体を見ても極一部の高機能サンプラーのみ搭載する珍しい機能で(大抵のサンプラーについているEQはあくまでサンプラーを通した後の音にかかります)、編集後のサンプルの保存場所など考えると実装が難しいことは想像できます。

ただやはり、手持ちのサンプルをSFC風に鳴らそうとしたときに、「本物っぽい音質にしたいなら、DAWでいったんEQかけて書き出した後のサンプルを入れてくださいね。あとEQは都度試行錯誤してくださいね」と言われると、なんか「そこまでするくらいならKONTAKTでそのまま出した音にビットクラッシャーかけて誤魔化そうかな……」なんて気持ちになっちゃいます。

まとめ

生音を狭い帯域幅でサンプリングする感じの音色なので、性格的にはメロトロンに近いといえるのではないでしょうか。独特の低解像度な音はSP-1200のようなレトロサンプラーをもってしても再現が難しいです。近年のトレンドである「アナログホラー」的な表現にも、結構相性が良いと思われます。

たとえば、雑に手持ちのベル系のサンプルを突っ込んで、Decimのつまみをグイっと下げ、あとは変な音域で鳴らしてみましょう。普通のサンプラーじゃただの荒れた音になりますが、Chipsynth SFCで同じことをやるだけで、がぜん不穏な雰囲気が出ます。周波数バランスとか、わずかな歪みとか、数値上は小さな差なのですがね。

注意点としては、前述しましたが、本格的にSFCのゲームミュージック音源として使い込むには、結局音源の特性を理解して一個一個のサンプルを作りこんだ者が勝つ、という点。せめてドラッグ&ドロップとかに対応してたらまだ良かったのですが、操作性も含めて、本質はオールドスクールで硬派なサンプラーだという覚悟は必要になります。

とはいえ、プリセットは多くないですが少数精鋭で、それに対して適当な付属サンプルを差し替えるだけでも、それなりの音の幅と質は担保できます。