最近はDTM音源も増えてきました。

選択肢が増えるのは良いことですが、一つのシンセサイザーを「使いこなす」に至るまで習熟することは難しく、結局のところソフトシンセはスペックや出音の質自体よりも、「プリセットの優秀さ」のほうで選ばれているというのが実情でしょう。

しかし、2020年代以降に登場したフリーのシンセの中には、たとえプリセットが貧弱であっても、少しの習熟によって独自の世界観を出せるものが存在します。たとえニーズが無くてもリリースできてしまうのがフリーソフトの良いところ。

というわけで、この記事では、最近(主に2023年以降)に登場したフリーシンセの中で、独特な音作りの可能性を秘めた作品を紹介していきます。(言葉を選ばなければ、「VitalやSurgeとの差別化」を意識して選んでます)

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1. Quetzalcoatl (by Modular Samples)


 KORGのWAVESTATIONのように、サンプル波形を次々に変化させることに主眼を置いたシンセサイザー・サンプラーです。シンプルな見た目をしていますが、MSEGを8個同時に使用可能だし、ウェーブテーブル音源も内蔵しているなど、奥が深い一面もあります。
 この音源は何よりも操作のシンプルさが魅力です。これまでサンプラーで非常に煩雑な操作を繰り返さないと出せなかったシーケンスが、何倍も簡単に出来てしまいます。それがこのプラグインの凄さです。GlitchMachinesも似たコンセプトのサンプラーを出してた気がしますが、Quetzalcoatlの方が操作が楽だし、フィルターが強力だし、無料だしで良いことずくめです。
2024年現在も精力的に開発が行われてます。知名度はかなり低いですが、まさに傑作だと思います。



2. Zyklop (by Dawesome)
 ある程度知名度はあるかと思います。同メーカーのMythに対する簡易版的位置づけです。
 オシレーターが2個から1個になっているのですが、セミモジュラー構造は維持されており、十分強力なシンセサイザーです。

 サンプルを解析して波形に変換するタイプなのですが、解析のアルゴリズムが優秀なのか、結構自然なシンセ音になるし、音色加工の幅も広いです。用途は選ぶでしょうが、サンプルと電子音の混ぜ方としては、サンプラーやボコーダーなんかを使うよりよほど洗練された結果が得られそうな気はしています。

 ……気はしているのですが、少々CPUに重いのと、音作りに試行錯誤を要する設計でもあるので心理的ハードルの高さは感じます。



3. Terrain (by Aaron Anderson)
 3D地形上を円形にスキャンすることで音声波形を得るという、ほかにない音色合成システムを持つシンセサイザーです。音としてはFM・位相変調やウェーブフォルダに近いです。Pendulateにも近いです。
 Terrainは鍵盤で弾くのが楽しいシンセです。たとえばウェーブテーブルシンセは理論上は任意の倍音を出すことができるのですが、時間変化やベロシティへの反応の良さでいうと、Terrainのように、アルゴリズミックに波形を生成する方式のほうが優れていることが多いです。




4. Audible Planets (by Void-Star)
 円形を描く惑星軌道の動きを二次元に落とし込むことで波形を合成するシンセサイザーです。これもFM・位相変調に近いコンセプトです。冗談ではなく、とても宇宙的な音が出ます。いや本当に。
 音色の幅はかなり狭いのですが、変調時のダイナミックな表現力が他の音源では作りにくい感じで、素晴らしいです。


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最近はソフトシンセメーカーも、高性能だが難解なシンセをセールで安く売って、後からプリセット販売で儲けるモデルを確立しつつあるように見えます(むしろユーザーが自力で音を作る00年代が特殊だったともいえる)。この流れを批判するつもりはありません。しかし、それ以外の方法で音を出すことも出来るよ、というのが、今の私が語れる、数少ないことの一つかと思ってます。

ここに示したもの以外に良いフリーシンセは沢山出ています。気になった方はKVRあたりを探してみると楽しいですよ。