1. Airwindowsとは
Hi, I'm Chris from Airwindows. You can do this...
Airwindows
は、Chris氏が個人で運営するプラグインベンダー。国内知名度の低いベンダーですが、非常に個性的かつ高音質なエフェクターを作ることに定評があります。2010年代に有償販売していた時期もありましたが、現在は全製品を無料で公開しています(Patreonを介して寄付を受け付けています)。


Airwindowsは他のベンダーにはない、ユニークな設計思想を持っています。
  1. GUIなし。メーター類も一切なし(開発期間とバグの削減のためと言っていた記憶)
  2. オーバーサンプリング機能なし(プロジェクト全体のサンプルレートを96kHzにする方が良いという思想)
  3. 多くの製品が微妙でニッチな効果を持つ
  4. 個々のエフェクターに対する説明文が長く、難解
  5. バージョンアップの度に仕様と音をガラッと変える(その代わり旧バージョンも並行配布する)
 総じて、Airwindowsは、エフェクター効果の単純さを保ちながら、軽量さやバグの少なさ、そして何より音質を落とさないことを優先しています。

 プラグイン数はとにかく多く、質も正直玉石混交。また難解で前例のない処理を行うプラグインも多いので、「プラグインそのものが好き」な方でないと馴染めなさそうな面はあります。しかしAirwindowsの製品は、いくら挿してもDAWは重くならず、不安定にならず、"理解して使えば"副作用もありません。

 サチュレーションとかEQとかは、変に多機能な製品や重いアナログモデリングを使うくらいなら、Airwindowsで済ませたほうが楽だと私は感じます。アマチュアレベルでしか制作しない私の放言かもしれませんが、動作の軽さ・安定性・音質の3点ではプロユースに十分耐えると感じます。

 なお古い一部のプラグインはDAWサンプルレート48kHz時でないと意図した音にならないそうです。問題はどのプラグインが48kHz専用か、作者も含めて誰も整理していないことで……。ここのベンダーは結構ノリで製品を出すので取捨選択はユーザー側がやる前提です。そういうのも含めて「プラグインそのものが好き」な人向けかと。

2. Airwindows Consolidatedとは
 Airwindows Consolidatedは、そんなAirwindowsがこれまでリリースした数百ものエフェクターを、たった一つのプラグインにまとめたものです。Airwindowsを本格導入する前に、いろいろ試して効果を知るのに向いています。

では、具体的な中身を一つずつ見ていきましょう。
 ……と、言いたいところですが、あまりに収録エフェクター数が多いので、個人的に好きなものに絞ってご紹介します。Consolidatedのエフェクターリスト掲載順に記載します。

ClearCoat  #リバーブ系
 アンビエンスリバーブです。明るい出音が特徴です。
 リアルな音ではありませんが、気づかない程度の音量で混ぜることで、音が立体的になります。

PitchDelay  #ディレイ系
 テープディレイ風の音を再現しつつも、フィードバックのたびにピッチが変わるディレイです。
 私は使わないのですが、類似エフェクターの中で多分Airwindowsのが一番軽いと思うので紹介します。

TapeDelay2  #ディレイ系
 PitchDelayのピッチシフターの代わりにフラッターを搭載したもの。
 機能的には至極シンプルで、テンポシンクさえありませんが、リアルなテープ風の音がするので、テクノなんかでちょっと昔風の音を出したいときなんかは活躍すると思います。

DubSub2  #EQ系
 テープシミュの低域増強効果のみを取り出したようなものです。

Sinew  #EQ系
 テープシミュの高域丸め効果のみを再現するプラグインです。高音がうるさいとき、極力音のキャラクターを変えずに丸めることができます。

Smooth  #EQ系
 高域にのみ効くリミッターです。つまみを回し切るとかなり過剰に効き、低域のダイナミクスを保ったまま高域だけ潰した感を出せます。いつ使うのか分かりませんが、そういう音が出したいときにはどうぞ。

PurestConsoleChannel / PurestConsoleBuss  #歪み系
 アナログミキサーを通すことによる音変化を再現するもの。
 使用方法が特殊で、まずミックスバスに「Buss」がつく方をインサートし、そのバスに音を送信しているチャンネルすべてに「Channel」がつく方をインサートすれば完了です。ただし、「Channel」と「Buss」の間で音量を変えてはいけません。よって、フェーダーは0dbに保つ必要があります。DAWによっては使い物にならないかもしれませんが、Waveformならフェーダーを自由に増やせるので、使えます。
 使うとミックスに分離感が出ますが、分離しすぎるきらいもあるため、ジャンルによって合う・合わないの見極めが必要になります。

Mackity (おすすめ!)  #歪み系
 安価なアナログミキサー「Mackie 1202(初代)」の入力段で発生する歪みを再現するもの。
 昔のガバキックや、昔のブレイクビート特有の歪みをワンタッチで再現できます。できることはそれだけですが、代用が効きません。DAWでブレイクビートを扱う人には本当におすすめしたいです。無料だし。

DigitalBlack  #ダイナミクス系
 ワンノブのノイズゲートです。細かい調整は効きませんが、低音を扱う際にもノイズを出さない設計になっているそうです。

Pop2  #ダイナミクス系
 非常に派手な効きのコンプレッサーです。Pop3ではゲートが追加されています。

Dubly2  #歪み系
 テープ用のノイズ低減機として販売されていたDolby 361のシミュレーションです。
 エキサイターとして使う手法が有名ですが、用語が独特なので、少し操作は勉強する必要あり。

Tremolo  #エフェクター系
 単純なトレモロですが、アナログ機材のようなサチュレーションを持つらしいです。

Distance3  #EQ系
 はるか遠くでとても大きな音が鳴っているかのような演出を作れるエフェクターです。
 Distanceを0にして、TopdBを上げることで、大きな音で空気が震えるような音も得られます。
 なお、Distance3からTopdBつまみだけを抜き出したものは、個別でDiscontinuityというエフェクターになっています。

Silken #EQ系
 超高域をブーストする専門のEQです。
 リニアフェーズEQの副作用であるプリリンギングを意図的に起こすことで、ボーカルのトランジェントの硬さを抑える効果があるらしい。性質上ドラムには向かないと思います。個人的にはKORG M1の音に思い切りかけたときのヌケ感が好きです。

Stonefire  #EQ系
 「Air」「Fire」「Stone」という3つのバンドを持つEQです。
 原理的にはKalman Filterという、まったくオーディオ用ではないフィルターアルゴリズムを使用しており、通常のEQとまったく効き方が異なります。Airwindowsのプラグインの中でも難解な部類ですが、Airは超高域の「シャリシャリ感」だけを調整できるので、捉えようによっては便利かも。

Pockey2 (おすすめ!)  #歪み系
 ビットクラッシャーです。一般的なフリーのビットクラッシャーと違って、Pockey2はレトロサンプラーを模したアルゴリズムを使っているので、本当にサンプラーを使ったような音になります。これを使うと普通のビットクラッシャーには戻れなくなります。

CrunchCoat  #リバーブ系
 前述したClearCoatをベースに、サンプルレートを落とす機能など色々追加してレトロな風合いにしたものらしいです。生音には合わないでしょう。

Galactic3 #リバーブ系
 アンビエント系のジャンルで重宝しそうな超ロングリバーブです。Airwindowsの中でも比較的有名です。Galactic2はまた違う音です。

kCathedral5 #リバーブ系
 ホールリバーブです。「Position」を操作することで音の距離感を直感的に調整できます。
 臨場感があって割と好きな音なのですが、高い音にかけると独特の歪みがあるので、用途は選ぶと思います。

kPlate140 / kPlate240 #リバーブ系
 プレートリバーブです。TALのフリーのやつもミックスへの馴染みが良い優秀なプレートですが、よりさりげない効きのこちらを味変として持つのもありでしょう。

kPlateA~D  #リバーブ系
 プレートリバーブです。AからDまで、アルゴリズムの違う4つが用意されています。金属的な響きを強調する、使用が難しいリバーブという印象。使いようによるのでしょう。

Creature  #歪み系
 暗い音のディストーションです。厳密には歪みアルゴリズムではないらしく、全体的に音の重心を低音に寄せる効果があります。使いどころが少々難しいですが、面白い音が出るので紹介しておきます。

Srsly2  #ディレイ系
 80年代のステレオプロセッサ「Hughes AK-100」のシミュレーションらしいです。やや誇張されたステレオ空間が作れるみたいですが、これもまた使い方が難しいです。

ToVinyl4  #EQ系
 アナログレコードを通した際の周波数特性の変化を再現します。

Inflamer  #歪み系
 Oxford Inflatorを部分的に再現したものです。バンドスプリッターなどが無いので、完全な代替品にはなりません。

PurestDrive  #歪み系
 周波数特性やダイナミクスにほとんど影響させず、わずかに音を前に出す効果があります。独特の効果を得るためには、「Drive」コントロールは0でも1でもない値にする必要があります。私が使った回数で言ったらAirwindowsで一番多いかも。

ToTape7  #EQ・歪み系
 テープシミュです。実際には、Dubly2とDubSub2と組み合わせ、フラッターとサチュレーションを加えたようなものです。
 基本的には、Biasを0.5からわずかに上げ、派手な音にするならEncAmtを0.5からわずかに上げた状態がもっともベーシックな効果だそうです。
 より用法が簡単で音質が向上したと謳われるToTape8も存在するので、今使うならそっちか?

Cans #ユーティリティ #リバーブ系
 ヘッドホンで制作する際に、スピーカーから音を出したときの「部屋鳴り」を再現するためのプラグイン(DeeSpeakerの類似品)。
 要はルームリバーブなので、原音にちょっとだけ空気感を出すのにも使えそうです。

XYZ Filters (XLowpassなど)  #EQ・歪み系
 多分レトロなサンプラーに内蔵されていたデジタルフィルターの再現です・歪みの多いダーティーな音質が特徴。

以上です。まだ全体の半分も紹介しきれていませんが、キリがないのでやめます。

 なお、デフォルトの設定では、「おすすめ(Recommended」のエフェクターのみ表示されています。メニューからすべてのプラグインを表示する設定にもできますが、なにせ数が膨大なので、最初はRecommendedから触ることを推奨します。

 Airwindows Consolidatedは、ワンクリックですべてを解決することはありません。微妙な違いを耳で聴き分けて、じっくり音を作りこむためのプラグインです。しかし、音質に少しでも拘りがあって、新しいプラグインを触ることに抵抗がないのなら、ぜひ一度試しに使ってみてほしいです。