SampleTankはIK Multimedia社の誇る大型総合音源。
この度、SampleTankの最新版かつ全部入り版「SampleTank4 MAX V2」が安くなっていたので(8000円くらい)、ただ「安かった」という理由だけで買いました。
ようやく数百GBに及ぶダウンロード作業に一段落ついたので、ここで数時間触っただけのファーストインプレッションを書いてみようと思います。
SampleTank4自体、個人的には弱点が結構多いと思っていて、現状は「マイナスポイントが許容できて、安ければ買い」程度の評価ですかね。
<お詫びと訂正> 2024/08/24まで、Syntronik 2で、オシレータのピッチをオクターブでずらす方法について、誤った紹介をしていました。正しくは、モジュレーションソースに「None」を指定することで、エンベロープを消費せずピッチ変更が可能です。読者の皆様と、IK Multimedia関係者の方々にお詫び申し上げます。
概要
基本的にSampleTank 4 MAX V2は、マルチ音源とそのエキスパンションのセットです。2024年3月現在でIK Multimediaから発売されているSampleTank規格の音源はすべて入っています。また、
これらを含めると、SampleTank 4 MAX V2を一つ買うだけで、総計600GBに上る膨大なサンプルが手に入ります。
この度、SampleTankの最新版かつ全部入り版「SampleTank4 MAX V2」が安くなっていたので(8000円くらい)、ただ「安かった」という理由だけで買いました。
ようやく数百GBに及ぶダウンロード作業に一段落ついたので、ここで数時間触っただけのファーストインプレッションを書いてみようと思います。
SampleTank4自体、個人的には弱点が結構多いと思っていて、現状は「マイナスポイントが許容できて、安ければ買い」程度の評価ですかね。
<お詫びと訂正> 2024/08/24まで、Syntronik 2で、オシレータのピッチをオクターブでずらす方法について、誤った紹介をしていました。正しくは、モジュレーションソースに「None」を指定することで、エンベロープを消費せずピッチ変更が可能です。読者の皆様と、IK Multimedia関係者の方々にお詫び申し上げます。
概要
基本的にSampleTank 4 MAX V2は、マルチ音源とそのエキスパンションのセットです。2024年3月現在でIK Multimediaから発売されているSampleTank規格の音源はすべて入っています。また、
- オーケストラ音源のMiroslav Philharmonik 2(フル版)
- ビンテージシンセサイザー音源のSyntronik 2 MAX
- メロトロン音源のSampleTron 2
これらを含めると、SampleTank 4 MAX V2を一つ買うだけで、総計600GBに上る膨大なサンプルが手に入ります。
仕様上の注意点
この章では、SampleTank 4 Max V2の微妙な点を取り上げ、針小棒大にこき下ろしていきます。逆に言えば、これらが許容できるのなら、SampleTankは買いだと思います。
・ドラムがキットパーツごとに読み込めない
SampleTank4のドラムでは、パラアウトをするためには、まったく同じドラムキットを別レイヤーに読み込みなおすしかありません。
数MBのドラムキットなら許容範囲でしょうが、2.5GBものアコースティックドラムのキットでこの仕様はあまりに厳しいです。「仮音として使うには重すぎ、専用音源として使うには機能が貧弱すぎる」というSampleTank4の弱点を最も象徴する音源が、この2.5GBのアコースティックドラムです。
……なお、拡張音源として入ってるドラムは、ちゃんとキック・スネア・タム・ハイハットと分かれて収録されているので、パラアウトもばっちりです。全部これだったらなあ。

↑パラアウトに対応した音源の例
・ドラムがキットパーツごとに読み込めない
SampleTank4のドラムでは、パラアウトをするためには、まったく同じドラムキットを別レイヤーに読み込みなおすしかありません。
数MBのドラムキットなら許容範囲でしょうが、2.5GBものアコースティックドラムのキットでこの仕様はあまりに厳しいです。「仮音として使うには重すぎ、専用音源として使うには機能が貧弱すぎる」というSampleTank4の弱点を最も象徴する音源が、この2.5GBのアコースティックドラムです。
……なお、拡張音源として入ってるドラムは、ちゃんとキック・スネア・タム・ハイハットと分かれて収録されているので、パラアウトもばっちりです。全部これだったらなあ。

↑パラアウトに対応した音源の例
・Syntronikではオシレーターごとの音程変更にややこしい操作が必要(シンセの専用音源なのに…)
波形をオクターブや5度でずらして重ねるテクニックは、アナログシンセサイザーにとって、非常に一般的な音作り手法だと思います。にもかかわらず、Syntronik上では空のモジュレーションを割り当てるという煩雑な方法でしか、この操作ができません。
この手法に私はなかなか気づけず、まさかオシレーターのピッチずらし機能自体が無いものだと誤解して勝手に失望していた訳ですが、さすがに天下のIKですから機能自体は用意してくれました。まあ、Syntronik 2世代の音色に対して、だけですがね。
波形をオクターブや5度でずらして重ねるテクニックは、アナログシンセサイザーにとって、非常に一般的な音作り手法だと思います。にもかかわらず、Syntronik上では空のモジュレーションを割り当てるという煩雑な方法でしか、この操作ができません。
この手法に私はなかなか気づけず、まさかオシレーターのピッチずらし機能自体が無いものだと誤解して勝手に失望していた訳ですが、さすがに天下のIKですから機能自体は用意してくれました。まあ、Syntronik 2世代の音色に対して、だけですがね。
Syntronik 1世代の音色も結構な量収録されているのですが、そのほとんどが実質1OSCという制約のもと作られたプリセットであるので、利用シーンはかなり減ります。
そんなSyntronik 2ですが、素で収録されている波形の音質自体はすばらしいものです。なかなかエミュレーションでは出せない味が出てますので、諸々考慮して音質的メリットを取るのは全然アリだとは思います。

↑Syntronikでオシレーターピッチを変更する唯一の方法
・プリセット数の水増し?
この辺の捉え方は人によるのでしょうが、同一サンプルを使っていて、微妙にエフェクターが違うだけの別音色とかが結構な数あります。特にSampleTank4世代の音色は体感8割くらいがエフェクター違いです。
好意的に考えれば、「エフェクターも含めて、使える音作りをしている」という配慮とも取れますが、こういったエフェクター違い音色の中で、自分では思いつかないようなサウンドデザインがされている音色は少数派です。結局、自分好みのエフェクターで微調整をかけたほうが、早く目的の音にたどり着く可能性はないでしょうか? 拡張音源の「Hitmaker」シリーズに限っては、エフェクターの使い方が上手いと思いますが。
エフェクター違いで音色数を増やす手法は、多かれ少なかれ他社の総合音源でも行われてると思いますが、例えばコンプレッサーの圧縮量違いだけで3音色も作るのはやり過ぎだろうと……。誇大宣伝とかそれ以前の話として、音色の検索性が落ちるのがいただけないです。

↑Clavinetが最も顕著にプリセット数を水増ししています。全部元のサンプルは同じだと思うのですが…
・音色の検索性が悪い
SampleTankはバージョン4になってから、音色リストがフォルダベースから、タグベースにUI変更されました。しかしこれが選びにくい。
たとえば、アコーディオンを検索するのにも、Ethnicに入ってるかOrganに入ってるか初見じゃ分かりません。もっと言うと、「Electric Guitar」というタグで絞り込むと本物のギターはいっさい出てこず、マリンバをギター風に加工した音色がヒットするなど、タグ付け基準が意味不明です。
確かに、音色名を覚えていれば文字列検索することもできます。できますが、音色数は18000ある上に、たとえばピアノ音色ではベーゼンドルファーは「Imperial Grand」でベヒシュタインは「Brandenburg Piano」などと名付けられています。こういうノリがずっと続くので、現実的に検索なんてほぼ無理なわけです。仮に検索したところで、上述した大量の水増し音色がリストを埋め尽くします。操作性は劣悪と言わざるを得ません。
一応SampleTank4には、従来通りフォルダツリー形式で音色を分類表示する機能は付いていますが、私の環境ではこれをONにするたびに数十秒間フリーズするという大きな欠点があります(全音色SSDに入れているのに……)。ですので、究極的には、使いそうな音色を逐次お気に入り登録していくしかありません。苦行です。
サウンドについて
SampleTank 4には、SampleTank2や3時代の音もそのまま再録されてます。それも含めての音色数なわけですね。
収録されたSampleTankの世代ごとに、私はそれぞれキャラクターを感じます。
SampleTank4新録の音源は大体全部音質が良く、奏法もよくカバーしています。容量も数百MB~6GB程度と大きく、PCへの要求スペックも高いため、どちらかというと専用音源に近い立ち位置になります。SampleTank4は「量より質」ということらしく、ちょっとマイナーな楽器になると新録音源じゃなかったりします。
収録されたSampleTankの世代ごとに、私はそれぞれキャラクターを感じます。
SampleTank4新録の音源は大体全部音質が良く、奏法もよくカバーしています。容量も数百MB~6GB程度と大きく、PCへの要求スペックも高いため、どちらかというと専用音源に近い立ち位置になります。SampleTank4は「量より質」ということらしく、ちょっとマイナーな楽器になると新録音源じゃなかったりします。
SampleTank3世代は一転して、「質より量」です。たまにノイズが乗っていたり、距離感が遠かったりと、音源自体の質はバラバラですが、とにかく収録楽器の数が多いです。博物館レベルと言ってもよい。収録音源の中で、最もほかで代用しにくいのがSampleTank3世代の音色かもしれません。PCへの要求スペックは控えめです。
ただし、SampleTank3世代であっても、Miroslav Philharmonik 2収録音色のレベルは全体的に高く、同時に要求スペックは高めです。
SampleTank2は2000年代の製品であり、したがってどこか懐かしい音色が並びます。PCへの要求スペックが低く、リアリティを追求しない分仮音適性が高いなど、意外と使い勝手が良いのがこの世代です。弱点があるとすれば、音色の名前の付け方が、少しばかり『詩的』なところです。検索性はよくないです。
ただし、SampleTank3世代であっても、Miroslav Philharmonik 2収録音色のレベルは全体的に高く、同時に要求スペックは高めです。
SampleTank2は2000年代の製品であり、したがってどこか懐かしい音色が並びます。PCへの要求スペックが低く、リアリティを追求しない分仮音適性が高いなど、意外と使い勝手が良いのがこの世代です。弱点があるとすれば、音色の名前の付け方が、少しばかり『詩的』なところです。検索性はよくないです。
ローランドやコルグに独自のサウンドがあるように、IK Multimediaにも、通底する独自の「サウンド」があります。私が思うに、IKは音源が「小さく勝手に歌ってくれる」のが特徴で、音の方から「俺はこう使ってくれ!」という小さな声が聞こえることが多いと感じます。それはつまり、音源を手なずけにくいということでもありますが、逆に、使いこなしたときのポテンシャルは、他社製の音源と比べても高いんじゃないかと思います。
なお、「SampleTank 4 MAX V2」に含まれる多数の拡張音源については、以下の記事で個別に感想を書いてます。よろしければお読みください。
なお、「SampleTank 4 MAX V2」に含まれる多数の拡張音源については、以下の記事で個別に感想を書いてます。よろしければお読みください。
ソフトウェア自体について
ファイルサイズが単純にデカいのでロード時間は長めです。とくにシンセ音源はやたらサイズが大きい。ただし、ディスクストリーミングが効いているので、ファイルサイズの割にはかなり早いロードともいえます。この辺り、さすがにフリーのsforzandoより明らかに優秀ですね。Kontaktと違って、敢えて非圧縮で格納したのも効いてるかもしれません。SSDたくさん買いましょう。
なお、私の環境では、稀に音源ロードに失敗してフリーズする不具合があります。プラグイン版だけでなく、スタンドアロン版でも昔からあるのですが、一向に修正されません(2024年3月時点)。SampleTron2にも類似の不具合が見受けられます。ほかに致命的なバグには遭遇していないのですが、まぁ、全体的にIKの製品にはそういうところがあるようです。
音色のEDIT機能は、古典的なPCMシンセをなぞる様に、フィルターやエンベロープ、LFOなどが自由に設定できる仕様です。シンセ音色を扱わないならば、十分多機能だと感じるでしょう。
音色EDITの中で特徴的なのが、STRETCHと呼ばれるタイムストレッチエンジン。これは、サンプルサイズによっては膨大な事前処理時間を要求されますが、音色の時間をストレッチしたり、フォルマントを変えたりと、非常に面白い効果が得られます。まずは100MB以内の音色で試してみると、SampleTankの意外な一面が見られます。間違っても10GB以上あるC7 Grand Binauralとかでやらないように。
音色EDITの中で特徴的なのが、STRETCHと呼ばれるタイムストレッチエンジン。これは、サンプルサイズによっては膨大な事前処理時間を要求されますが、音色の時間をストレッチしたり、フォルマントを変えたりと、非常に面白い効果が得られます。まずは100MB以内の音色で試してみると、SampleTankの意外な一面が見られます。間違っても10GB以上あるC7 Grand Binauralとかでやらないように。
↑モジュレーションマトリックスが一番暗いです
ソフトの操作性については、割とアバウトなGUI設計をしてるので慣れが必要ですが、慣れてからは見た目より操作性の良いソフトになります。
ソフトの操作性については、割とアバウトなGUI設計をしてるので慣れが必要ですが、慣れてからは見た目より操作性の良いソフトになります。
総評
- 600GBの仮音源とみなすか、融通が利かない専用音源とみなすかは場合による
- 安いなりの理由はあるが、それ以上にコスパは良いと思われる
- あらゆる意味で、『マルチ音源』の限界に挑んだ音源か?
SampleTankの本質は昔ながらのマルチ音源に過ぎず、Kontaktと違い、「これさえあれば何でも出来る」ものではありません。
かたやKontaktは、サンプラーとしては破格に多機能なスクリプトを導入したことで、あらゆる楽器の奏法に対応した何でも屋音源と化しています(各実装がそれを活かしきれているかはともかく)。一方で、SampleTankの場合、どのインストゥルメントを読み込んでも、サンプル再生→フィルターという流れは変わらず、キースイッチが付いていること以外は、35年前にKORGのM1が作り上げた「ワークステーション」そのままの構造をした音源です。要するに、鍵盤楽器仕様にデフォルメされているのです。
結果として、SampleTankでは、音を多少加工することはKontaktより容易になりますが、音そのものを抜本的にデザインすることは不可能で、個々の楽器特性に沿ったモデリングもできないという機能構成になっています。したがって、MIDI鍵盤を触りながらのスケッチにはSampleTankが適していますが、一音を作りこむ派の人間は、SampleTank程度ではたぶん肩透かしを食らいます(STRETCHエンジンなどを駆使すれば作りこみも不可能ではありませんが、他社の大型マルチ音源ほどではありません)。そういうコンセプトの音源なのです。
総じて言えば、1万円程度にセールされているならコスパは良いと思います。特に、同梱されているSampleTron 2とMiroslav Philharmonik 2は今でもそれなりに人気のある専門音源なので、それらのバンドルと考えるとお得感が強いです。
また、DTMを始めたばかりで音源をあまり持っていない人にも割とおすすめです。これ一つあれば、少なくとも「使いたい音源が無い」という事態はなくなります。フリー音源を求めてspitfire LABSやUnreal Instrumentsやpianobookを上から下まで舐める必要もなくなります。その代わり3桁ギガバイトのダウンロードが必要になりますが。
かたやKontaktは、サンプラーとしては破格に多機能なスクリプトを導入したことで、あらゆる楽器の奏法に対応した何でも屋音源と化しています(各実装がそれを活かしきれているかはともかく)。一方で、SampleTankの場合、どのインストゥルメントを読み込んでも、サンプル再生→フィルターという流れは変わらず、キースイッチが付いていること以外は、35年前にKORGのM1が作り上げた「ワークステーション」そのままの構造をした音源です。要するに、鍵盤楽器仕様にデフォルメされているのです。
結果として、SampleTankでは、音を多少加工することはKontaktより容易になりますが、音そのものを抜本的にデザインすることは不可能で、個々の楽器特性に沿ったモデリングもできないという機能構成になっています。したがって、MIDI鍵盤を触りながらのスケッチにはSampleTankが適していますが、一音を作りこむ派の人間は、SampleTank程度ではたぶん肩透かしを食らいます(STRETCHエンジンなどを駆使すれば作りこみも不可能ではありませんが、他社の大型マルチ音源ほどではありません)。そういうコンセプトの音源なのです。
総じて言えば、1万円程度にセールされているならコスパは良いと思います。特に、同梱されているSampleTron 2とMiroslav Philharmonik 2は今でもそれなりに人気のある専門音源なので、それらのバンドルと考えるとお得感が強いです。
また、DTMを始めたばかりで音源をあまり持っていない人にも割とおすすめです。これ一つあれば、少なくとも「使いたい音源が無い」という事態はなくなります。フリー音源を求めてspitfire LABSやUnreal Instrumentsやpianobookを上から下まで舐める必要もなくなります。その代わり3桁ギガバイトのダウンロードが必要になりますが。

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