久々にハイコンテクストな楽曲を作ったので一記事書こうと思います。

以前Yobukoe ga suru 21-Neon noを発表した際にもこうした形で記事を書いてました。1年以上前の事ですが、つい最近のようにも感じます。



I&Bttは、「13平均律」かつ「13拍子」という前例のないテーマを持ちながら、極力古典的な音ゲー曲として成立させることをコンセプトにおいた実験作です。
13平均律とは
1オクターブを13音に均等分割するチューニングのことです。

現代の99%の音楽は、12平均律で作られて、12平均律で演奏されています。分かりやすい例として、ピアノの鍵盤は1オクターブに必ず12個のキーが並んでおり、99%以上のピアノはそのキー間の音程が均等になるように調律されているはずです。

しかしそもそも、音楽を作るのに1オクターブを必ず12等分しなければならない、という訳ではありません。たとえば音と音の間隔を若干狭くして、1オクターブに13個の音を入れることもできるわけです。この画像のように。
12edoVs13edo
 すると、「オクターブ」以外の音程(完全5度、長3度etc.)はすべて無くなります。Am、C7のようなコードネームも意味をなさなくなります。12と13は互いに素だからです。

 しかしそれでも、冷静に聴いてみると協和音も不協和音も見つけることができますし、メロディーなんて所詮音の高低ですから、書こうと思えば書けます。

 こうした微分音まわりの理論を私は十分理解できていませんが、「使うパレットが変わっただけで、音楽の本質は変わっていない」というのが私の見解です。


工夫した点
 「13平均律」は、聴き手には「ピッチがおかしい」「コードが不協和」だと感じられるリスクが大きいです。アブノーマルながらもわかりやすく説得力ある和声として、通常モードジャズで用いられる「堆積和音の平行移動」という手法でコード進行を組みました。12平均律ほど安定した響きの和音が存在しない代わりに、テンションコードに近いコードは割とあるので、進行感のあるコード構成にはできたと思います。

 13平均律には様々な面白い特性があります。中でも興味を惹かれたのが、12平均律では非常に安定した音程である完全4度、5度が13平均律には存在しないどころか、その付近にはもっとも濁っていて不安定な音程があるということです。
 聴き慣れた5度和音に似ているのに非常に不安定な「長5度」「短5度」はフレーズの終わり際に配置し、強い前進感が感じられるようにしました。あまり長く保持するのも汚いので、中盤以降の13/4地帯では各小節のラスト1拍のみ聴こえるようにしています。

 13平均律の処理方法についてはそれなりに工夫した点でもありますし、同時に、比較的好意的に受け止めていただけた部分かと認識しています。


反省点
 音ゲー曲としての本楽曲の完成度は「50点」というのが現時点での自己評価です。正直、ANOTHER譜面に手が届かず、なおかつゲーム性重視の層からはかなり厳しい評価を受けることも覚悟していました。

 最大の反省は、「13拍子」がもたらす影響への軽視です。
 I&Bttは開幕が4/4であることも相まってか、前半の13/16地帯を聴きながら13拍を数えるのは実際には至難の業です。すると結局、「ただの理解不能リズム地帯」になってしまう。NORMAL譜面がほとんど目押し譜面になってしまったのも、元は作曲段階での不備が原因だと思います。他プレイヤーさんのBOF:NTの初見プレイ配信を拝見していても、中盤の13/4地帯に入ってようやく、変拍子曲であることが意識されているように見えました。

 また、I&Bttは全体的に無理なスケジュール感で作業していたこともあり、ピアノのバッキングしかり、アシッドの32分しかり、カットアップされたノイズスイープしかり、全体的に、情報量を安易に増やす手段に頼りすぎていました。結果として、本楽曲の根幹にある13平均律らしいフレーズや、13拍子特有のリズム感が薄れ、BMSに起こしたときには相当ノーツを詰め込まないと、本楽曲特有の演奏感が確保できなくなっていたと考えています。

 具体例として、特にHYPER譜面で顕著ですが、単調な符点8分のバッキング押しがノーツ数のそれなりのウェイトを占めていますが、あれは、私に言わせれば、I&Bttという楽曲を代表する譜面とは言えません。


 誤解しないでほしいのですが、私は、BMS楽曲は演奏感に配慮して作曲されるべき、だとはまったく思っていません。演奏感ガン無視の曲を、何とかして音ゲーで遊ばせる、楽しませる、というフロンティア精神が、BMS特有の大きな魅力だとも思いますし。

 ただ、I&Bttに限って言えば、この曲は明確に「音ゲーテクノ」を企図して書いたものです。音楽としてはまあまあ気に入っている曲なのですが、音ゲー曲として考えると、改善余地を残す仕上がりになったというのが率直な思いです。


全体を通して
 I&Bttを通して、「音ゲー曲」を作る難しさを改めて感じさせられました。
 ただ、「何が良くなかったか」が明確化したというのは収穫だと思っていて、今後の作曲活動にも活かせる教訓が多かったと思います。やはり実験作は作るべきです。

 13平均律の扱いについて、上では分かったような口を叩いていますが、実際には「降ってきた」部分も大きいです。高音アルペジオやアシッドのフレーズ、気持ち悪い声ネタなど、RykSebの手癖が十分堪能できる仕上がりになっているのではという自負もあります。

 さて、BOF:NTは微分音を採用したBMSがなんと2作も。空前の大豊作でした。空前であっても、「空前絶後」にはなってほしくありません。願わくば、BOF:NTをきっかけに、微分音楽曲BMSにも小さな火が付いてくれると面白いと思うのです。

 私の見解では、微分音は単なる不協和音ツールではないし、かといって高度な音楽理論の産物である必要もないと思っています。現に、日本の伝統的な歌は、12平均律では表せない複雑な音程で歌われていますし、あるいはウグイスのホーホケキョだって12平均律では表せません。ただそこに在る音を、どのような音程で分割し、クオンタイズするかという、ただそれだけの話ではないでしょうか。

 現代はDAWというものが普及したおかげで、ひと手間さえかければ誰でも任意の調律で曲を作ることができます。SerumもVコレもDivaも調律できますよ。皆さんさすがに一つは持ってるでしょう。正直ハードルは低くないのですが、周囲で見るのと自分で触るのだと結構面白さが違う分野なので、DAW持ってる方は一度だけでも触ってみてはいかがでしょうか。