普段あんまり自分の楽曲解説記事は書かないんですが、解説したくないと言えば噓になります。

 MUMEI ACADEMYにおいては自楽曲をブログで解説されている方が見られ、それを読むと割と面白かったりするもので、自称個性派作家の端くれとしてはこれを機に便乗してもいいのかなあと思って記事にしました。長いかもしれないです。
 なんかBMS界隈には尖った面を見せてる私ですが、中の人はお人よしの超丸い人間なのであんま恐れないでください。頼みます。


↑音源 私はこの曲のことを21-Neon(ツーワンネオン)と呼んでいます

MUMEI ACADEMY 2022(MA_2022)はBMSという同人リズムゲームの品評イベントになります。私はこの21-Neonという曲を作り、譜面と併せてこのイベントに提出しました。
結果から言うと「Not Air評価が50%を超え、ボーナス得点を受け取った作品の中で最下位」です。それがこの曲の性格を端的に表していると思います。


着想・制作に至る経緯

 私は、基本的にDAWを適当に触って出てきた音を発展させて作曲するので、最初から「コンセプト」や「ストーリー」を決めて音楽にすることは滅多にありません。というか音以外の概念を音に落とし込むのは大の苦手です。
 ただ、この曲の場合は例外的にプロトタイプ構想があります。それが地元横浜駅を歩いていた時に思いついた、「大都市の暴力的な生命性」と「甲高い不協和音の連続」の連関でした。21-Neonを最も特徴づけるであろう中盤の悲鳴のような8分皿地帯は、この段階から決まっていたことになります。MUMEI ACADEMYにおいて、この曲が「耳障りだ」という意見を頂くことがありましたが、したがってこれは最初から意図された反応です。まあ今思えばミキシング時に明らかにハイを出しすぎてたので、問題があるとしたらそれです。

ジャンル名"Electronic / City /Art"の"City"について

 これは端的に言って、自分の中で心が通うサウンドが90'sのものだから90'sっぽくしたというのと、あとは、着想段階で考えていた「大都市の暴力的な生命性」から持ってきた概念というのとです。
 まあ、City Pop的かと言われれば全然そんなことないと思うのですが、やっぱり自分の音楽の根底に近代クラシック、ジャズ、ゲーム音楽がある以上、それを発展させていくと自然と近いところに辿りつくのだと思います。当初はもっとノイジーで攻撃的な和声にするつもりでしたが、なんだかんだブレイクの美し気なメロディーが浮かんできたりもしたので、結局シャレオツ仕上げ欲に抗えませんでした。結局一音のインパクトに拘るよりも、メロディーを凝る方が楽しいんですよ私は。

ジャンル名"Electronic / City /Art"の"Art"について

 アートコアと現代アートのダブルミーニングです。
 元々アートコアというジャンルは嫌いではなく、特に私にとっては「縛りが少なく、やりたいことができそう」なジャンルというイメージがありました。アートコアって電子音楽の中で最もメロディアスな部類なので。ただ、どうしてもBMSでは氾濫しがちなジャンルです。差別化は必須だと思いました。普通の曲を作って勝てる実力はないし、何よりも「自分が作らなければできない曲」でないと制作中モチベがなくなって厳しくなるので。
 ともあれ、今回はBPMの速さもあるので、リズムパターンの単純化を意識しながら組みました。ブレイクビートはあえて一切入れず、Neuro Funk的な要素もアレンジしつつ混ぜてます。大量にハイハットを鳴らすのは癖みたいなもんです。

 で、「現代アート」の部分なんですがこれは語ると長い。文化論的に一言で言えばポストモダニズムへの加担なんでしょうけど。
 聞いた話では、前衛作曲家として知られるリゲティの作品の中には、12平均律のシンフォニー中に突如として全く調律の狂った音を侵入させるという手法をとった曲があるらしいです。その「侵入」は何だろうか、と私の中で考えてみたのですが、12平均律という体系に対するアンチであり、それは反音楽であり、「呼び声」ではないかという結論に至りました。リゲティ自身がどんな高尚な考えを持ってこんな事をしたのかは知りませんが、もう前衛音楽なんて誰も聞かない現代ですし、もはや好き勝手な文脈で使っても構わないんじゃないかと。まあそういうことです。実際にはポストモダニズムは言われているほど機械的なモノではない気がしますね。そういう泥臭い脱近代の仕方を模索したという意味で、21-Neonは芸術ですし、同時にただの卑近なゲームミュージックでもあります。

制作手法について

 使ったソフトなどはBMSに同梱されているreadmeに大体書いてます。多分DTMへの投資額は私はかなり安い方だと思います。別に、書きたい曲が書けて、出したい音が出せれば使った金額とか関係ないと思ってます。……ただDTM機材を必要以上にケチる行為はほかの方にはお勧めしません。あらゆる点で遠回りです。
 サンプル素材は実はほとんど持っていないため、数少ない素材を適当にレイヤーして音を作っています。というかサンプルをレイヤーせずにBMS化する行為って素材の利用規約的にあんまよろしくない気がするので。シンセ音源は半分くらいSurge、3割くらいSynthMasterです。両者微分音も出るので重宝します。あの皿の音もSurgeのプリセットを多少加工して作ってます。あと個人的にCollectiveって音源がプチ一押しです(参考記事 ただし古いのでこの方法でCollectiveはもう手に入らないと思う)。
 基本的にはMid2BMSのBlue Modeだけで95%の音切りを済ませる前提でやっています。キー音にするトラック数は16に収め、オートメーションもまったく使いません。ドラムトラックはすべてチャンネルno.10に配置するとかいう、ガチの90'sスタイルです。これをやるとすべての打楽器パートが1つのピアノロールに収まるため、リズムが組みやすくなって楽です。……この方法もほかの方にはお勧めしません。表現の幅が狭まります。

 ひとつお勧めする手法があるとすれば、Mid2BMSを使う前にMIDIデータをDominoあたりで編集することです(たまに開けないMIDIもあるので、ExSMFなどで変換します)。なぜなら大半のDAWでやるよりも大分効率的にMIDIが扱えるので。ベロシティやGateをそろえたり(一括変換機能で/10したあと*10すると10刻みに変換できます)、ゴミ音符を発見したり、ミス防止や微調整にとにかく役立ちます。あと音切り用のWAVを作る際、残響の長いトラックにはノイズゲートを適宜挿してあらかじめ調整しておくと、Mid2BMS側で音切りに失敗しにくくなり、結果的に手間が減ります。

 ……なぜ他人に勧められない方法ばかりを使うのかという点ですが、これは選択肢をあえて絞ることで、クリエイティビティを迷わせないようにするためです。これは嘘で、単にめんどくさいからです。

譜面について

 これも相変わらず賛否あると思うんですが、私の中では過去最高の出来です。ただどうしても「わざとらしい配置」から抜け出すことができないでいる認識もあります。譜面作りの鉄則として、「一に曲、二に曲、三四がなくて五にプレイヤー、自分を出すのは最後」というのは結構あると思ってるんですが(今考えた)、正直私は人に指摘できる立場ではないです。
 ちなみにHELIUM譜面が詐称気味なのは意図したものです。良い詐称、というのがあるとしたら、適正者がプレイして、たとえクリアに失敗したとしても「またやろう」「次はクリアしよう」と思ってもらえる詐称が良い詐称だと思ってます。私がそういう譜面を作れてるかは別として、私個人としては無理やり難易度表記に収めようとして面白さが削がれた譜面よりも、演奏感やゲーム性など何らかのこだわりがあって生まれた詐称譜面の方を評価するようにしてますし、私が目指すところもそっちです。4分皿+4鍵LNも、来ると分かっていれば☆9適正者にも取れると思っていて、どっちかというとそれが取れた時の快感を味わってほしい。
 あ、同色配置は個人的に好きじゃなくてあんまり置いてないんですけど、ただ最近のBMSの潮流を見るとそろそろそうも言えなくなってきたかなあと。

BGAについて

 当初は動画で制作していましたが、色々と収拾がつかなくなったので泣く泣く簡易BGIとしました。動画も何らかの形で表に出したいんですが……精々Twitter公開くらいでしょうかね。動画時代の遺産を活かしてAviUtlでの制作です。背景は東京三大タワーの一角「タワーホール船堀」から撮影した夜景を合成しています。

おわりに

 自分の作った曲を聴いてもらって、ゲームとしてプレイしてもらって、しかも感想・アドバイスまでもらえる機会ってかなり希少です。しかもBMSって「どんな変な曲が来てもとりあえずインプレする」文化、「どこの馬の骨とも知らぬ人が作ったBMSであってもとりあえずインプレする」文化がある。これは大変な価値だと日々感じています。
 ポッと出の一人のオタクがどんな我流の曲を出しても、どんなぎこちない映像を出しても、どんな奇天烈な譜面を付けてもいい。出した時点でそれは立派な音ゲーの曲になるという、この安心感は、面倒で辛くて一文の得にもならない作曲という趣味を続ける上で、個人的にはかなり支えになりました。
 私のつたないBMSに触れてくれた方々には感謝してもしきれません。私自身も、時間や気力を捻出しつつですが、インプレなどを通して少しでもBMS文化の維持に貢献できれば嬉しいのです。