タイトルの通りです。

 今回の無名戦、私が「全インプレ」を成し遂げた初のBMSイベントということで、ようやく総評的な記事が書けるということです。いや全インプレってすげえ気力使いますね。凄いですよ皆様。これ俺にBOF全インプレは無理だな……
 さて、RykSebのインプレといえばめちゃくちゃ押しつけがましいことで私の中で有名なのですが、これでもなるべく客観的に評価するよう注意してるんです。なんならここに採点基準を公表しちゃいます。
総合芸術点: (12点を基準として20点満点)×3
譜面芸術点: (4点を基準として8点満点)×2
音楽技術点: 12点を基準として20点満点
BGA技術点: 4点を基準として20点満点
BMS技術点: (12点を基準として16点満点)×0.67
以上の5項目を合計したものを「素点」と称する
Aクラス: 素点を11点満点に圧縮し、1.33を足し、四捨五入
Bクラス: 素点を12点満点に圧縮し、0.33を足し、四捨五入
Cクラス: 素点を12.1点満点に圧縮し、四捨五入
 ちなみにこの方式で私が"Yobukoe ga suru 21-Neon no"を採点すると、8点、あるいは9点に届くかどうかくらいになります。ああっすみません8点以下を付けられた方怒らないでください、こ、これには深いわけが。
 実際、総合芸術点は10点~18点くらいの間に収まってると思います。BGA技術点は、動画BGAがついているだけで無条件に6点、最大で10点ほどプラスされるので、9点付いた場合総合芸術点3点分くらいのプラスになり結構大きいです。

ともあれ、実際に何点を付けたかとは関係なく、単に気になったBMS(≒気に入ったBMS)を紹介していこうと思います。表では言えないような自分勝手な激渋コメントが続きますので、生産性のあるアドバイスは期待しないでください。

戦 - IKUSA - / motz
インプレにも書きましたが、冒頭の『大河ドラマ』感がえげつなくてひっくり返りました。一度私もこういうジャンルに手を出してみたいんですが、これ実際には雰囲気出すのかなり難しいんですよね。素直にすごいと思います。
終始難解気味な雰囲気だったのが本物っぽくもあり、音ゲーらしいキャッチーさに欠ける印象にもつながりといった感じが正直なところ。このあたりの加減は難しいんだろうなあ。

夢厭 con eleganza / 大前司(mov: GAQLLA)
映像が良かった……BMSのBGAとして、理想にものすごく近いと思います 楽曲や譜面との合い方が半端ではなかったし、プレイ上のノイズになることもない。私は映像分野に全然詳しくないんですが、これそのまま教科書にして勉強しようかなって思うレベルです。
楽曲面ではオスティナートの効果的な使い方が印象的でした。……が、まあ一人の作曲趣味者として本音を言わせてもらうと、電子音楽を混ぜた交響楽って作曲が相当難しいというか、縛りが多いくせに「なんでもあり」という印象があって、だからこそ作曲者の技量が露骨に表れるなぁ……と感じたのも事実。いや、これめちゃくちゃ作曲上手いと思うんですが、ジャンルの難しさのせいで「表現力の天井」が見えちゃう気がするんですよ。マジでこの方くらいの腕前にならないと手を出しちゃいけねえジャンルだな、と肝に銘じましたね。

ゆめのなかで / おひるねだいすきびっくりはてな
「分かる」ところと「よく分からない」ところが混在していて、でも「分かる」ところはすごく良い、という感じ。「正直ハードコアに寄せなくてよかったんじゃ」……と思うときもあれば、「ハードコアに寄せないとできない良い表現」に出会うこともありました。不思議な作風ですが、それだけ作者の方が新しいことに挑戦されているんだなあと。

rough saturator / 4G
薄味目なんですけど、なぜかアレンジの感じが本家っぽい気がします。DJ SIMONとかAYAとかそういう時代の本家。古い本家っぽい作品は無条件で好きになります。

EXTEND / しるい
このBMSについては細々と語るものでもない気がします。普通に良い。BGA可愛い。

夏流麺  / えするーと / Georges Bizet
大体どの大会にも1つくらいあると言われるクラシックアレンジですね。クラシックアレンジ、下手に原曲のイメージから離れようとすると大変なことになりがちなので、これくらい原曲が残ってるほうが私は好みです。譜面もいわゆる嫌らしい系っぽい? クラシックアレンジは譜面が厄介になりやすい法則でもあんのか? という気がしますが、私はそういうのが好きです。

深く暗い海の底へ / freesia
これは初見で鳥肌が立ちました。凄かった。ラストの映像、音、メロディーライン、譜面、すべて素晴らしいです。個々の要素は単純すぎるくらい単純なんですが、あの展開の中でそれらが融合したときの爆発力が素晴らしい。あと一昔前の科学館っぽいムービーも好き。
「最後の一音」ってBMSの印象においてすごい大切だと思っていて、その点でこのBMSの手法は非常に勉強になると思います。

Dizzydoll / Antem
やりすぎなくらい入った声ネタが、なんどもプレイするうちに不思議と曲に馴染んでいくというスルメ曲。終盤のトランペットとの掛け合いが最高に気持ちいい。
和声的に「ジャズか?」となることが正直あったこともありNot Airは付けられなかったんですが、なんか好きな曲です。
……A-1部門はそういう「うまく説明できないけど、なんか好き」枠が多く、この辺が無名戦出場者に対する経験の差が表れるところなのかぁ、この辺が年の功なのかなぁ、と考えさせられます。

Great Attractor / Akasha  / Sman
調べたら古参作家の方でした。今はAnotherでまったく別の曲、なんて手法を取る人も少なくなった気がしますね。先人の知恵をリアルタイムで味わえるのもこういう大会の良いところだと思います。

Lake Arlrauva, Relative Yet Far / イベライ/Emelia
プロのゲームコンポーザーの方ですか……? この方昨年のMAから追ってますけど、正直いつ優勝してもおかしくないレベルの、令和を代表する実力派作者だと思います。それにBMPBGAをここまで綺麗に作る人なんて今時そういません。

202inf / LThirty6
いや~渋い。こういう曲一回くらい作ってみたいですね。多動の俺には無理か。

Unending Stride / Gimo
ビギナーの作ということで賛否あるようですが(主に譜面で)、曲として相当レベル高い気がするんですよねこれ。音ゲー公募を目標にされている方のようなんですが、こういった部分の個性は活かしていってほしい気が、老婆心ながらも、します。チップチューンにも興味あったりしないかな……

Ball / Muchavoid
BGAがシンプルながら良いんですこれ。やっぱり手描きBGAは神。

Needy Samples Overdose / CYLTIE.
一言で言ってカリスマですよこれは。やってることはシンプルなのに、ここまで「表現」として落とし込んでいるというのはカリスマです。

StarLightning!! / atily
直球に良い曲なんですこれ。直球に。無難な曲調なんて言うのが恥ずかしくなるくらい直球で、そして良い曲です。3-4回聴いたらもう覚えます。忘れたくなくなります。

白と青の狭間 / 定空間 feat.東北ずん子(CeVIO AI) Illust:hitoary
この方もカリスマ的センスの持ち主だと思います。毎回良曲を出してくるイメージ。

Bright scenery / GONTA
202infとかd2とかやった後だったので「今回のAクラスめっちゃ渋いな!」と勝手に思っていたときの曲。実際今回のAクラスは渋めの曲多い気がしますね。thrown outもそうだしDamageもそうだしYour Bassもそうだし。

<header> / 潮音きつね(mov:MANAKA)
間違いなく出物です。一流です。BMSたるものこうあるべきです。知らんけど。あとスクラッチの処理が丁寧。

Addition / ArkaanDM
2分間、6音だけで構成されたリフが終始鳴り続けるミニマルで浮遊感あるテクノ。かなりスルメな部類の曲で、8点でなく7点をつけてしまったことを正直後悔しています。これは俺の見る目がなかった。本当はみんなこういう曲をBMSに出すべきなんですよ。
「第一印象の良い曲」「勝てる曲」がもてはやされるBMSという世界で、ここまでの事ができるコンポーザーってどれだけいるだろうかと思います。競争制イベント自体は私も大好きなんですけど、昔からちょっと「優勝」の価値をデカく置きすぎじゃねえかなと思います。

Trush Can!!!!! / oratoruk(mov:チキンピカタ)
定番から結構外れた所を走っていながらも、ポップでスッと受け入れられる塩梅というか、そんな風に感じました。BMS曲で非音ゲーマーにも受け入れられそうな曲って実は希少っぽいので。あとジャケ絵の感じ好きです。

ZTYX / ザラエル
商業音ゲーサウンドとは違うと思うのですが、逆に同人ゲーム音楽としての良さがありNot Air判定に至った作です。結局こういう哀愁系多声展開が好きなので。ハーフタイム地帯の重い和音のオスティナートもシンフォニー味がありまた良かった。

d2 / Y.
誰かが言ってましたが選曲画面での圧が強いハンネと曲名。ずるい。
インプレを見た感じ、ムービーが何を映したものか知らない人が多いっぽいのは少し意外でしたね。あれ所謂モジュラーシンセです。VCV Rackあたりで検索すると何が言いたいのか判明すると思います。アイデアとしてシンプルに面白いし、ライブ感というか、いかにもハード音源をリアルタイムで弄ってる感が出て良いと思います。
そう、モジュラーシンセという分野は、リアルタイム感を未だに保っている電子音楽分野として貴重なわけです。そうでない電子音楽はみんなPC上のDAWで打ち込んで「演奏」はほぼ機械任せ、あるいは修正し放題。これがもう21世紀の電子音楽であって、音ゲーの音楽であり続けた。
このd2も、制作手法的にはハード音源からの録音をDAWで打ち込んだんでしょうけど、ライブっぽい曲調とムービーが組み合わさると異様な生々しさが浮かび上がってきます。そこが本当に良くて、斬新なポイントだと思う。無名戦Aクラス準優勝にふさわしい秀作だと思います。

Body and Soul / Doggie
本格派ハードコアコンポーザーDoggie氏による作。また聴けてうれしい限りです。イベントで名前を見かけると嬉しい人。

Extra Domain / KEWASA(mov:God_Hunt)
これもしかしてチップチューン音源にSFX8使ってんじゃねえかな……?
聴いた感じ音ゲーっぽさがないのに、BMSとして遊ぶとめちゃくちゃ音ゲー映えするという不思議な曲です。不穏な電子音の使い方がうまい あとStage2感がすばらしい

Unquenchable Fire / ANKAKE
かなりの古参でありながら毎回味と新しさを兼ね備えたBMSを出してくるANKAKE氏による作。「ホァッ!!」みたいな声ネタがズルい。

colored AND detuned / えびです(mov:霜月しむ)
テクノポップの匠えびです氏による作。今回はアッサリ目の作風ですが、ハッキリ言って只者の作る曲ではないと思います。

Yobukoe ga suru 21-Neon no / RykSeb
拙作だけどついでに紹介しちゃう。タイトル、似たような意味の候補を21種類くらい考えてたんですが、結局わけのわからん倒置を使うなどしました。"21-Neon no yobukoe ga suru"のほうがキャッチーだとは思ったんだけど、それじゃあタイトルに人気を取ってもらってるみたいで癪に障るんで。
今回もキー音は一部除き16トラック、SMFに収めてます。音切りが楽になるのと、MIDI使いとしてのプライドです。
音楽的な部分、「前衛」ではなく「ポスト前衛」を裏テーマにしてはいましたが、ここで語っても蛇足なので放置。インプレでBitplaneさんの作風に言及されていた方がいらっしゃいましたが、あの方と共通点があるとしたらその辺だと思います。

Moment / Kazki Misora(mov:Double Plus)
いや~途中FUNKOTっぽくなったのが意外な面白さでした。FUNKOTっぽいサウンド、もしかして静かに流行っている?

Imitation of the Sky / Mowl
毎回貴重なアヴァンギャルド枠。私の人生経験からすると、「オタクの音楽」と「音楽のオタク」というのは根本から混じりあわないと思っていて、BMSは70%くらいが前者の文化で、後者に属する文化は1%に満たない体感があります。で、残り30%くらいはポップやフュージョンとかの「地上の音楽」層。ちなみに俺がBMSを作るときはこれらの三文化を無理やり混ぜるようにしています。なぜなら俺はこのすべてに個人的思い入れがあるし、本来混ざらないものを混ぜることで新たな価値を生みたいので。
いわゆる「オタクの音楽」系作品として、試み自体はすごく共感の持てるもので、曲のラフさも含めて味があって良かったと思います。悪いラフさも正直ありましたけど(意図のつかめない単調さなど、陶酔に欠ける反復など)。世界観にしろ譜面にしろ00'sBMSっぽい要素が多々あって個人的に楽しめたんですが、忌憚なく言わせてもらうと、ちょっと00'sの雰囲気に頼りすぎな気がしなくもない、です。

POTATOMANIA / CHORO*
多分結構長らくインターネットで作曲をされてきた方の作だと思うんですが、良い意味で手慣れた感じが味わいって感じでした。

Good-Bye Summer Days / ウラボロシ
これすげえ良い曲なんです。メロディーがちゃんと掛け合ってるのがいい。まだプレイしていない方がいたとしたらおすすめです。絶対楽しいので。
だけど、あえてなんか言わせてもらうとすれば、やっぱ全体がせわしないというか、本来BPM110とかで流すリズムを無理やりテンポアップしている感じがしてしまう。いや、良い曲だからこそ気になってしまうというか、好みの範疇なんだろうけど、正直モヤモヤするというか……。どうすりゃいいんだろう。

屈折 (feat. 夏色花梨) / Setca.
このボーカルすごい良いですね。歌詞とメロディーもすごい良いんですが、声自体リアルで、でもリアル過ぎることもなく、ちゃんと歌ってるように聴こえる。Synthesizer Vの歌い方ってVOCALOIDとかと比べると結構暑苦しい歌い方をすると思うんですが、その暑苦しさをきれいに表現として落とし込んでいるというか。昔のJ-POPっぽい歌い方で、でもちょっと機械らしい一本調子なところもあって、歌声合成の新たな地平を見た感じがします。