どうやら、とある設定を変えるとWindowsが使用するCPUコアの数を減らすことができるようです。減らすとどうなるか、PCの性能が下がります。しかも消費電力が下がるわけではないらしい。特殊な場合を除いて、実用上のメリットはほぼ存在しないといえます。

 しかしとにかく、Windows上で疑似的にロースペックな環境を作ることはできるわけです。私の場合、ちょうど持ち出し用サブノートPCが欲しいところで、狙ってる機種のCPUで実際どういったことができるのか体感するためにやりました。むろん、周波数やCPUメーカー、世代やTDP規格による差異は発生するものの、「コア数が少ないCPUだと何が起こるのか」を割と正確に把握することはできました。

実験に使ったPCの構成
CPU: Core i7 8750H (6コア12スレッド, 2.2GHz ブースト時4.1GHz)
RAM: 16GB
SSD
GPU: GTX 1050 Mobile

このCPUを、2コア4スレッド, 2.2GHz ブースト無しとして扱わせました。コア数を減らす方法、ブーストを切る方法はここには記載しませんが、調べると簡単に見つかります。
なお、私は普段から省エネ・静音化のためCPUのブーストは基本切ってますので、実際に行ったのは使用するコア数を減らす操作だけです。

以後、体感およびタスクマネージャーでのCPU使用率監視によるレポート
起動時
 レスポンスは大差ないが、デスクトップが表示されるまでの時間は長め。ただしブート条件を弄ったことによる処理が走っていた可能性がある。

ベンチマーク
 簡易的にCPU-Zでしか測ってないが、マルチスレッドスコアがちょうど三分の一にになっている。

ブラウジング
 至極快適。CPU使用率が時折100%を指し、その一瞬だけ操作を受け付けなくなるくらい。それさえ起きなければ、違いは体感困難レベル。動画など重いページでも快適に動作。この辺りの体感速度は、シングルスレッド速度に依拠するところが多いんだと思われる。

ゲーム
 Assetto CorsaとBve Trainsim、beatorajaで試行。CPUを使用する場面ではもたつくが、そうでない場面はGPUに処理が投げられるので、意外にもプレイアブル(タイトルや画質設定によります)。特にBveに関してはもともとあまりマルチスレッド処理が得意ではないので、コア数を減らしてもフレームレートの変動はほぼなし。クラシックな2Dゲーム類も似たような結果になると思われる。

DAW操作
 プラグイン単体はもともとシングルスレッド動作のため、重いシンセが動かなくなることはない。大きく変わるのは、それが何台まで同時に動かせるか。大量のプラグインを使うプロジェクトへの影響は顕著であり、当然のことながら、2コアでは6コアの三分の一程度のトラック数しか同時に再生できない。
印象的だったのは、6コア時と2コア時で処理が重いときの挙動が異なる点。6コア時にCPUが限界に達するとまずプレイバックが途切れ途切れになるが、2コア時はそれより先にWindows自体の動作が覚束なくなる。これは全性能をDAWにつぎ込めているということで本来悪い挙動ではないのだが、使用感的には明らかにマイナス。6コア時はどこかのコアが全力のときも、残りのコアには遊びがあったということだろう。そっちのほうが操作的にはいい。 これはタスクマネージャー上でプロセスの優先度を「高い」にしているせいかもしれない。コア数が少ないCPUにおいては、プロセスの優先度の設定はより慎重に行ったほうがいいかもしれない。

GIMP
 様々なフィルターをかけるとCPU使用率は高まるが、レスポンスに大きく影響するほどではなかった。DAWと違って多少待たされても気になりにくいのもあると思う。デフォルト収録ブラシでの描画は快適だが、本格的なペイントソフトの重量級ブラシだと音を上げることもあるかもしれない。

Discord
 ボイスチャットのエンコード・デコード処理は決して重い処理ではないものの、つけっぱなしのまま他のことをする間、時折負荷の圧力を感じることはある。画面共有配信もなんとかこなせはするものの、ゲーム画面の共有では、それまでプレイアブルだったゲームでもギリギリになったりするので何とも言えない。


総評・考察
 ライトなタスクを効率的にこなすという面では、CPUのコア数によるインパクトはそれほど感じられなかったというのが率直な感想です。手持ちのPCがたとえ三分の一のコア数であっても、一時的ならば我慢できるとさえ感じます。少なくともクロック周波数が三分の一になるよりは。
 一方、ゲーム配信やDTMのような場面では、途端動作が頼りなくなることもありました。PCでの実作業において、マルチコアの意味は「速度向上」というより、「マルチタスクによる速度低下の防止」が大きいのではないかなと考えさせられます。
 一方、動画エンコードのような「待ち」の作業は、当然コア数に比例して速くなりますし、最近見かけるようになったAI技術アプリケーションもマルチスレッド動作するものが多く、これらの動作速度においては、CPUベンチマークスコアが大きな意味を持つはずです。

 ともすれば一つの数字で語られがちなCPU性能ですが、今回の事例を見ても、PCの用途によって、搭載CPUの評価軸は変えるべきであることは明らかといえるでしょう。
 すなわち、多少コストがかかっても多コアCPUを選ぶべき場合というのは、
  • ビデオ会議中にそれなりに重いソフトを扱う
  • リアルタイム性が求められる重作業(音楽制作、動画編集など)を行う
  • 本格的なゲームをプレイする(その様子を配信する) ただゲーミングにおいてはGPUの方が重要
  • AI分野のアプリケーションを扱う
  • CPU使用率が100%に張り付く作業(レンダリングなど)を多用する
あたりではないかと私は解釈します。コアが多いほうが性能的な汎用性は高まりますが、これらに該当しない目的のために導入するPCにおいて、マルチコア性能を高める意味はやや薄いと思われます。ビジネスPCにAMDが選ばれにくい理由といいましょうか……。いわゆる「軽作業」的用途に絞るならば、6コアとか8コアとかあっても意味無いんじゃないの……? というのが私の見解になります。ある程度早い4コアが一番無難なのでは。



2022-06-17追記: ちなみにこの行為をメインマシンで行ったところ、購入以来2年以上も続いていたCPUからのコイル鳴き症状が明らかに改善しました。コア数を6に戻しても、コイル鳴きは戻ってきません。なんで?



……なんで?

ちなみに過去にもコイル鳴きが一段階改善した出来事があって、きっかけはあまりにもうるさいのでブログに愚痴記事を書き、そのうえで見せしめとして数週間獄門に晒したことです。そういえばその時も6月でした。コイル鳴きには、梅雨と心理的圧力が効くんだと思います。