大手プラグインベンダーPlugin Allianceは年4回のMEGA SALE時に最大の値引きを行います。その際メールマガジン購読者向けに$20のクーポンが発行されるのですが、MEGA SALE時の価格が$20を切るプラグインは無償で入手できることになります。少なくともここ数年はその状況が続いています。以下、このプラグイン群のことを、MEGA SALEで20ドル以下なのでMS-20と呼び、私の持っている限り彼らの解説をしてやろうという記事です。
 まあ、正直巧妙な客寄せです。MS-20たちはどれも割としっかり出来ていますが、基本的にはあまり高度な機能は持っていません。私もセールのたびに無償プラグインを拾い集めているうちにPlugin Allianceが好きになり、普通に時々有償で買うようになってしまいました。そういう策略だと思ってください。それでも事実、MS-20は一般的なフリープラグインとは出来が全然違いますし入手する意義は大きいと思います。

ということで、私が持っているMS-20は次の通り
  • bx_blackdist2 -ディストーション
  • bx_bluechorus2 -コーラス
  • bx_metal2 -ディストーション
  • bx_opto Pedal -コンプレッサー
  • Dent 2 + Indent 2 -ディストーション
  • Fault -フリケンシーシフター
  • Instant Delay -ディレイ
  • Sandman -ディレイ
  • Sandman Pro -ディレイ
  • G8 -ノイズゲート
  • SPL Mo-Verb Plus -コンプレッサー
  • bx_bassdude -アンプシミュ
我ながらずいぶんタダでもらってきたもんですね……。

ほかに私はLindell Channel Xを所持している($10でした)ため、その機能の一部を抜き出した版である6X-500、7X-500、PEX-500のことも大体わかります。この3つもかなり優秀ですよ。

ということで、以下はこれらのMS-20について、DTM初心者当然の私が一言コメントをするコーナーです。ギター系については私はギターがほぼ弾けないので電子音楽に使う前提で書きます。あのペダル群の価値が分かる人ではないので……。
ちなみに個人的一押しは6X-500、7X-500です。



6X-500
 EQ付きのプリアンプです。5年ほど前に日本で流行したらしいです。どんな音でもリッチな雰囲気に仕立て上げる魔法のサチュレーションという触れ込みでしたね。今でもその魅力は衰えていないと思います。「お前らがアナログ感アナログ感って騒いでるのって要するにこういう事だろ?」とでも言いたげな効きです。
 なぜ無償で入手できるのかよくわかりませんが、撒き餌のつもりなのでしょうか。MS-20対象外になってしまわないうちに入手しておくことをおすすめします。
貰いたい度: ★★★★★


7X-500
 1176風のコンプレッサーです。登場当時は各所から高評価を得たようですが、今では無償で手に入れることさえ可能です。
 圧縮時にえげつない倍音を付与することで音が非常に厚くなるのが特徴。オンオフ可能なアナログ回路再現機能も強いキャラクターを持っています。ほかの1176エミュを持っていたとしても手に入れる価値はあると思います。非常におすすめです。
貰いたい度: ★★★★★


PEX-500
 Pultec風のEQです。相変わらずキャラクターは濃いものの、比較的自然にまとまるので使いやすいです。あまりシビアに音質チェックしたことはありませんが、どう操作しても20khz以上は盛れないことを除けは良い感じの音だと思っています。これも無料で手に入れていい質ではありません。ぜひ。
貰いたい度: ★★★★☆


bx_blackdist2
 ProCo RAT2というギター用のディストーションペダルの再現です。ちょっと高級なペダルらしい。ドスっとした低音が特徴の歪みで、TB-303に代表されるアシッド系ベースと組み合わせると『アノ音』が出ます。オリジナルのRATは某サイトではTB-303に最も合うディストーションという評価を受けていますし、作曲でギターを扱わない人でも持っていて損はないでしょう。アシッドが好きな人はむしろ積極的にもらったほうがいいと思います。
 エレキギターの小さな出力音量に合わせて設計されているので、シンセを突っ込む場合はゲインはかなり控えめで十分です。
 強い歪みが特徴のプラグインですが、デジタル特有の不快な折り返しノイズ(エイリアシング)は出にくいよう工夫されているようで自然なサウンドです。CPU負荷も控えめで使いやすいでしょう。人によって使う・使わないが分かれると思いますが、私個人的にはおすすめです。
 最近Nembrini Audioから類似品がフリー配布され始めたようなので、こだわりがなければそちらを使ってもいいと思います。
貰いたい度: ★★★☆☆ (TB-303が好きなら★★★★★)


bx_bluechorus2
 Bossのコーラスペダルの再現です。暖かくやわらかなコーラスサウンドです。同じBrainworxから出ているシンセサイザーbx_oberhausenの内蔵エフェクターとしても採用されています。もらったばかりなのであまり研究していません。まぁフリーにも良いコーラスは結構ありますからね……。
貰いたい度: ★★★☆☆


bx_metal2
 BossのMetal Zone MT-2というディストーションペダルの再現です。どうやらEQの使い方がキモらしい。適当な音を突っ込むとなんでもメタルになるらしい。適当なパーカッションを入れるとBeatmaniaのSynbolicに出てくる効果音っぽい音になります。
貰いたい度: ★★★☆☆ (メタルが好きならもっと高いと思います)


bx_opto Pedal
 光学式コンプレッサー再現のbx_optoの機能限定版です。機能限定版とはいえ名物Speedつまみは健在なので割と応用が効きそうです。なんだかんだ、光学式エミュは光学式エミュでしか出せない独特の圧縮感があるため、入手しておきたいプラグインだと思います。特に本来の用途通り、生音系の減衰音の残響を延ばす際には威力を発揮します。
貰いたい度: ★★★★☆ (ほかに光学式コンプを持っていなければ★★★★★)


Dent 2
 多機能LFO付きでかなり奥が深いディストーション・ビットクラッシャー・フィルタープラグインです。ディストーション自体のアルゴリズムは一般的なのですが、多機能さでカバーするタイプ。Wavesetという音をブチブチに途切れさせる特殊な機能も搭載しており、ここでしか作れない音が作れます。一部のギターエフェクターで使われている整流回路も搭載しています。
 単に色付け系マルチエフェクターとして使うのもよいですし、LFOの使い方次第では音の性格を大きく変えることもできます。若干重いです。
 普通のディストーションでは物足りなくて、かといって大量のエフェクターをかけるほどの気力もなくて、かつアナログ感を必要としないシチュエーションでは活躍します。少しおすすめ。
貰いたい度: ★★★★☆


Indent 2
 Dent 2の機能限定版で、Dent 2を買う(もらう)ともれなくついてきます。Dent 2の変な機能は全部省いて、一番よく使う、それでいて一番平凡な機能だけを残した製品です。とはいえモジュレーターは健在なので割と使用価値はあるのではないかと。機能を省いたおかげでDent 2よりだいぶ負荷が軽く、あえてDentではなくIndentを使う価値はそこにあります。
貰いたい度: ★★★☆☆


Fault
 ピッチシフターつきフリケンシーシフターです。マニアックですね。お約束のモジュレーター機能のおかげでピッチシフター部分だけでも結構楽しいのですが、肝心のフリケンシーシフター部分とディレイ・フィードバック・マトリックスはなかなか使いこなせていません。これ、いつ使うの?
貰いたい度: ★★★☆☆ (使いこなせる人ならもっと高いと思います)


Instant Delay / Sandman
 これに関してはかつて個別記事を書いたのでそちらにどうぞ。小さくも実用的なディレイプラグインです。CPU負荷も小さく、個人的に好きなMS-20です

貰いたい度: ★★★☆☆ (あまりディレイプラグインを持っていないならば★★★★★)


Sandman Pro
 Sandmanの上位版ですが、ディレイにしては若干CPU負荷が高いのがネックです。一般的な用途ではInstant DelayやSandmanで十分なことも多く、Sandman Proは比較的突飛なサウンドデザインを担当することが多い印象です。でもこのGlitch Shifterモードが結構楽しいんだ……。万人向けではありませんが、お遊び用としてはおすすめ。
貰いたい度: ★★★★☆


G8
 ゲート、と発音したものをゲートでチョップするとジー・エイトになる、という小洒落たネーミングのゲートです。GUIの視認性が良く、実用的です。Cycleモードでトレモロとして使え、サイドチェインモードでダッカーor逆ダッカーとして使えます。MIDIで動かせ、またMIDIを吐かせることもできるので何か特殊な用途にも使えそうです。
 ゲートにしては若干CPU負荷が高いのがネック。なんだかんだComputer Music誌の付録についてくる機能限定版のほうが軽いので、そっちをよく使っています(G8に限っては機能限定版のほうが入手にお金がかかるという奇妙な状況です)。
貰いたい度: ★★★☆☆ (G8特有の機能が必要かどうかです)


SPL Mo-Verb Plus
 ややこしい名前ですが、トランジェントシェイパーのサスティンを長くする機能だけを抜き出したものです。代用が効かないようなものではありませんが、それを鑑みても本品の効き方は結構心地よく、自然な印象を与えます。結構アタックも強調されるため、ワンノブ系コンプレッサーとして捉えることもできます。Dry/Wetが付いているのもいいですね。フリーにはなかなか見られない洗練されたor商業チックな音です。
貰いたい度: ★★★★☆ (公式に置いてあるデモのサウンドが気に入ったら)


bx_bassdude
 今ではNembrini Audioを立ち上げ活躍しているIgor Nembrini氏も制作にかかわった、Fender Bassmanというアンプのシミュレーター。正直私には何も評価できませんが、昔合宿先に置いてあったギターアンプにスマホを繋いで適当なドラムループを流したあのときの思い出はちょっと感じます。結構収録されてるキャブIRのバリエーションが多めです。
貰いたい度: ★★★★☆ (使うなら)

……そしてこれらのMS-20が気に入ったら次は上位製品にも手を出してみましょう……

私が個人的にPlugin Allianceの製品が好きな理由は3点あって、「動作が安定」「ライセンス認証方式が良心的」、そして「どれが何をする道具なのか明確な設計」だからです。DTMソフトの評価ってまず「コスパ」、次に「個性・芸術性」で片づけられがちですけれど、Plugin Allianceは別にコスパだけのメーカーではなく、ツールとして手元に置いておきたくなるよう細かいところまでこだわっていると感じますね。まあ自分の場合は7割くらいセール商法に釣られてるだけです。

2023-06-01: bx_bassdudeを追加