お久しぶりです。なんでDTM機材のブログなんか書いてるんだろう? 就活のESのネタのため? とか思うとやるせなくなって、このブログも休み休み書くスタンスに移行しつつあります。

 さて待ちに待ったKVR Developer Challengeの季節がやってまいりました。この界隈追い始めたのが2019年ごろなので、リアタイするのは地味に初かもしれない。毎度おなじみFull Bucket Musicさんはシンセとエフェクターの二本立てで参戦。今回取り上げるのはシンセ"WhispAir"のほうです。



WhispAir (Full Bucket Music)
https://www.fullbucket.de/music/vst.html



 さて。ついに名門Full Bucket Musicがウェーブテーブルシンセサイザーを出しましたね。見た目は比較的そっけないですが、触ってみると意外と懐が広いです。


概要
  • 3オシレーター+ノイズ
  • 外部ウェーブテーブル読み込み可能
  • オシレーター間のAM、FM、Sync可能
  • 1フィルター(ローパスまたはハイパス)
  • 4エンヴェロープ
  • 2LFO
  • ビブラート・コーラス付き

地味な長所
  • 1ページGUI(すべてが一目で見れるので一覧性が高い)
  • ウェーブテーブルを補完する・しないを選べる(あえて補完しないことでエッジの効いた音が出せる)
  • OSC2とOSC3の間で相互にFMがかけられる(激しくて珍しい音になる)
  • 比較的自由なモジュレーション構造(ただしソースは原則同時に一つまで)
  • LFOの最高速がけっこう速い(最近速いLFO流行ってますよね)
  • Korg Mono/Polyみたいにオシレーターを交代で発音させる機能"X-MODE"がある(作者の方のKorg愛を感じますね)
  • マイクロチューニング対応(sclとtunに両対応)

地味に惜しいところ
  • 相変わらずプリセットの管理方法はソフトシンセ黎明期そのまま(正直、かなり不便。こういう制限は残すべきものではないのでは?)
  • カスタムウェーブテーブルは3つまでしか読み込めない(これは案外どうにかなる)


 ウェーブテーブルシンセとしてみたときに、Surge/Vitalではなく敢えてこれを使う理由は多くは思いつきませんが、とはいえ2オシレーター間の相互FMや"X-MODE"など独特の機能があるのは一つのポイントです。また、Full Bucket Musicのシンセはフィルターの加減で粗くダークな音が出しやすい傾向にあるので(Surgeのゴツゴツ感とはまた違う、マットなザラザラ感)、そういったキャラクターが欲しい時には使うかも。SFX系のプリセットは総じていい感じで、『地下』っぽい音になります。丁寧にエフェクターをかけてあげれば化けそう。

 あとはワークフロー次第かなあという感じ。別に「選択肢が少ない分音作りに集中できる」という意見があることは理解しますが、単一の多機能シンセを使うことでプラグイン選びという最大の選択をスキップする利点のほうが大きいと思っているので……。



GR-8 (Phuturetone)
https://www.phuturetone.com/


 大体言いたいことを上のツイートで言ってしまってます。
 PhuturetoneさんはKVR Developer Challengeでは新顔な気がしますが、どうやら往年のSynthEdit時代の傑作のひとつであるPhuturaの作者だとかなんとか。

概要
  • 今風の音がするヴァーチャルアナログ
  • 2オシレーター、1ローパスフィルター+ハイパス
  • 1LFO、2エンヴェロープ
  • エフェクター6種付き

地味な長所
  • 今風の高品位な音(存在感は薄目だが粒立ちの良い音、少しだけ色気もある)
  • 非常に完成度の高いGUI(2010年代後半に発売された8万円くらいのハードシンセって感じ)
  • 最低限の機能だが、どのつまみを回しても素直に音が変わるので音作りの幅は結構広い(シンセ学習用に最適?)
  • なんだかんだFM(X-Mod)がついているので結構粘れる
  • アナライザー付き(見た目はともあれ、使うか?)
  • プリセットブラウザもちゃんとある(実際、無いのとは大違い)
  • プリセットの出来はフリーにしては良い(使えないプリセットが入ってない)

地味に惜しいところ
  • 少なくとも、多機能なシンセではない(元々そういうコンセプトではないにしても)
  • ユニゾンのボイス数が選べない(名前的に8ボイスユニゾンに思えますが、どうなんでしょう?)
  • CPU負荷はやや高い(こういう音が出るシンセとしてはこんなもん。近年のverUPで改善傾向にあります)
  • エフェクターの質は、個人的には普通(裏を返せばそれ以外はかなり良い)


 SynthEditやReaktorを得意とするデベロッパーな分、「GUIが綺麗なだけで中身はCSoundまんまでしょ?」などと意地悪な見方で試しましたが、オシレーターは高域まではっきりと発音するなどフリーにしてはかなり高品位な音です。ToneZの派手さ、Vitalの薄さ、Odin2の細さ、Lithの緩さとはいずれも一線を画すため、音目当てで導入してもいいくらいに感じました。とはいえ私の第一印象ではSurgeの"Modern"オシレーターを少しタイトにした感じにも近く、本当にこれじゃないと出せない音があるようには見えません。
 しかしGR-8のすごいところは「本当に使える音と、本当に使いやすいインターフェース」が両立しているところにあると思います。フリーでは数少ない、誰がどう使っても良い音が出せる系シンセですね。
 プラグインシンセが氾濫する今だからこそ、多くの人に愛されてほしい一機です。